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裄瀬家シリーズ。

Bluemoonをアナタと。

作者: 十叶 夕海

えと、作者比で甘いと思いたいです。

    





 

 愛知県名古屋市某所。

 十二月頭。

 

 繁華街としては、新宿二丁目に匹敵するその街の大通りではなく、少し外れたその場所。

 クリスマスを象るイルミネーションや喧騒から離れた地上の大通りから、店一つ分だけ奥まった小通りにあるその喫茶店。

 夜としても昼としても、その繁華街にふさわしく古めかしくも瀟洒な喫茶店はあった。

 シンプルなアンティークで纏められた英国風の店内。

 店主は、店のイメージどおりのナイスミドルな中年男であるのだが。

 オーナ―は、似つかわしくない毒々しい赤紫色の髪の男である。

 それも、また名物ではあるのだが。



 

 カウンターとテーブル席があり、そして珍しいことに、数室ではあるが個室を備えていた。

 防音もそこそこ利いている部屋であり、その一室に、男女がアフタヌーンティセットなどを挟んで座っている。


 サンドイッチは、キュウリとハムのもの、スモークサーモンとアボガドペーストのもの、ブルーベリージャムとクリームチーズの三種。

 スコーンは、プレーンとドライフルーツミックス、ビターチョコ、クルミ、ベーコン&チーズのうちから三種。(ちなみに、+二百円で追加で一つ選べる。)

 ペイストリーは、一口サイズのジャムパイとピスタチオの甘いムース。

 他に、クロテッドクリームと数種類のジャム。

 ハム&チーズのパニーニサンド、ローストビーフのパニ-ニサンド、ちなみに好きな二種類を選べる中々にお得なセット。

 そして、ポッドでサーブされたダージリンとアッサム&ヴヴァのカップが並ぶ。

 咥えて、珍しいことに瓶のコーラも山盛りアイスペールと一緒に並んだ。


 控えめに言って、かなり美味しそうではあった。

 冷製系統は多い。

 もちろん、自家製のものは少ないが、スコーンの類は週に数回、食パンの類は毎朝、近くのパン屋から仕入れている。

 そして、スコーンやパニ-ニサンドのパンは直前に温めているのだ。

 その香ばしい匂いとジャムの甘い香りが共に食欲を誘う香りが漂わせていた。

 

 男の方は、染めた暗めなオレンジ色っぽいパーマ頭に、縁の太い眼鏡、全体的に小洒落た服装の青年だ。

 短く揃えた顎鬚もある上に、体格もそこそこ良いのだが、どこかフェミニンな雰囲気と言うか、柔らかい雰囲気。

 職業的には、サラリーマンではなく、スタイリストや美容師などをやっているような空気をしていた。

 瞳は、カラコンでなければ、ハーフかクォーターかなのだろう、海のような濃い青をしている。


 女のほうは、ブラウンアッシュにこそ染めてはいるが、天然パーマをミディアムヘアにした男より何歳か年下の女性にしては大柄な女性。

 野暮ったいと言うか、服装に頓着してなさそうなところとぽっちゃりなせいもあるのだろう、メンズの服装で揃えている。

 一応、本人曰く、「着れる服と服装の好みはまた別物」らしく、好みとしてはロリィタに分類されるそんな服装を好む。

 前に、青年がサイズの大きなブランドのロリィタ一式を送ったら、次に会った時、背中にハイキックをかましてきたけれども。

 完全にオフの服装な為分かりにくいが、一応、会社員をしている。

 学歴殺しな職ではあったけど。


 今日は、女性が名古屋に遊びに来たのであった。

 前々からそれを話していた目の前の男性に、捕獲されたと言う状況だ。

 ちなみに、年齢的にはアラサーな二人で、男性のほうが年上である。

 メールやなんかで、この喫茶店のアフタヌーンティーセットやパニーニサンドが美味そうとは話していた。 それでも、午後茶セットで3000円とか、パニーニサンドで1200円とか、ちょっと財布にきつすぎる。

 特に女性のほうは、安月給なほうなのと腐もつく女オタクなものだから、食べたいと言う欲求はあっても、来る機会などない。

 一応、男性の奢りということで来たのである。


「……で、何のお話?

 また・・、フラれたの、売れっ子スタイリストのYUKI?」


「そぅ~なのよぅ、聞いてチョウダイ、ピーちゃん!!」


「誰が、仔豚ピッグちゃんだ。」


「んもう、咲良ちゃんはぽっちゃりだけど、可愛いのに?

 ともかく、トシキくんっていうんだけど……」


 年数回、名古屋に出張ってくる女性――沢水咲良さわみず・さくらと、YUKIこと、佐々木由貴ささき・よしたかは、幼馴染である。

 正確に言えば、由貴は転勤族だった父親のせいもあり、長く居た友人と言うのはそう少ない。

 特に、小学生の間は咲良の故郷である日本海に面した小さな町に一年少々いたのが最長だった。

 流石に、中学生のなると父親の実家に同居し始めたのだが、それでも今でも飲むような友人は片手で足りるし、それが異性となると由貴には、咲良ぐらいしかいない。

 一夜の相手だのそういう艶っぽい相手ならまだいるしいた。


 ただ、「友人」から進めたいと由貴自身が思っているが、変わるのが怖くて進めないのが、彼女でもある。


 そう、「特別」になりたいし、そうしたいのは、沢水咲良だけなのだ。


 隣のうちのおしゃまだった女の子。

 若干ぽっちゃりだろうと、口調がそっけなかろうと、そう言う思うのは彼女だけなのだ、由貴にとっては。

 かつ、五歳も離れていても怖いモノは怖い。

 由貴も体が弱く、小学校に入るのが二年ほど遅れていても、それでも、怖いモノは怖いのだ。


「……まぁ、それはヒドイフり方だな。  ゲイだろうと、それはヒドイな、フり方というものがあるだろうに。

 ……うん、ディス姉ぇなら、潰せるかな、うん。」


「ちょちょちょっと、咲良ちゃん、具体的には何を。」


「うん、そのAD、一生ADですり潰そうかなって。

 ディス姉ぇぐらいの新米でも、弾丸タマのないドラマ化したいテレビ局いっぱいあるのならね。

 それ以外の情報タマも各種揃えております。」


「んもぅ、相変わらずねぇ、咲良ちゃんの身内贔屓は。」


 反面、咲良は、元々は東京生まれなのだが、両親の離婚と自身の身体の関係で北陸に転校して育ったと言う経緯がある、少々複雑な家庭ではある。


 両親とも、再婚はしていて、母親の方にはまだ中学生の異父妹もいる。


 兄は母親についていったが、異父妹ともども仲は良好である。



 見た目が、ぽっちゃり系な上に骨太女子ではあるが、見た目以上に体が弱い。

 幼いころは、耳鼻咽喉が弱い上に喘息持ちだった関係で、小学校の間はモチロン、中学生の間もろくに体育は受けていない。

 流石に高校のときは、レポートによる代替をしてもらったようではあるのだけれど。

 そして、インドアであったことと、女ではあるが内孫で手元にいる孫と言うことで、パソコンや本を買い与えられた結果、その隠匿性から知る人ぞ知るクラッカーでもある。


 一応の、二つ名《クリムゾン隠者ハーミット》の名前で呼ばれことはあるが、正体まで行き着いているのは、片手で足りるほど。

 模倣犯が少なく、一般人にもそこそこ名前の知られる《クリムゾン隠者ハーミット》。

 実像を知るのは数少ない。

 大半は、少々裏を知っている面子が、割と前から使っている紅いシルエットの隠者を指してそう言うだけだ。

 証拠らしい証拠をそれ以外残さないが故の仇名であった。

 その関係と兄が、所謂、暴走族に入り、それが「ディス姉ぇ」との繋がりになっている。

 かつ、由貴が聞いた限り、うっかりと言うかぽろっと彼女とその「ディス姉ぇ」との間に、貸し借りができてしまい、それを早く解消したい、と言うか、恐ろしいんだよぅ!と言っていたから、それもあるのだろう。

 



 控えめに言って、「一生、ADですり潰す」と言う単語が出てくる辺り、少々怖いとは思うが身内には甘い女性なのだ。

 敵対すれば、それこそ怖いけれど。

 実戦には死ぬほど向かないけれど。

 何せ、日常生活に辛うじて支障がないレベルの運動音痴。

 心肺機能的に運動が向かないと言うのを差し引いても、高校までの十二年間の体育の成績は、「あひる」だったのだから

 


「でも、珍しいな、仕事場の範囲で見繕わなかったろ?」


「アタシには珍しく一目ぼれ?かしら、ねぇ。

 それに、二丁目のレイシャママのところで、相手付となしで見かけたのよ?」


「……へ?あのレイシャママ? 

 日は限定されるけど、完全フリー(自主規制)とかM男緊縛ショーとかやってるような?

 普段でも、ハッテン場みたいな店なはずだよ、一応、あこの焼きうどんはうまいから由貴につれてって貰ったけど。」


「ちょっと、声が大きいわよ、ピー子。」


「ピー子ちゃうわ。」


由貴を手酷く振ったトシキというまだ、若いAD。

 所謂、コネ入社で、来年か再来年には番組のコーナーを任せてもらえるとかそう言う世渡りの上手いタイプではあった。 また、大物タレントと枕営業したとか、そう言う噂もあるものだから中々にメンドイ。

 その上、割と人には言えない趣味のお兄さんお姉さんおにねえさんに人気のレイシャママの店に出入りしている関係もある。

 芸能人に興味の無い人でも、名前は聞いたことのあるタレントも何人か来店しているほど。

 まぁ、水商売に携わるものとして、レイシャママは顧客を売らないが客がそうとは限らない、と言うことだろう。


 その上で言うならば、YUKIの名前で仕事をしているこの青年。

 基本的なテレビメイクはモチロンのこと、屋外でのメイク、通常のメイクもこなせる上に、所謂、特殊メイクもこなせるイケメンメイクさんである。

 師匠でもある叔母が、業界でもマルチな人だった為であるが、その人脈以外のタレントなんかからも声が掛かる。

 一度など、女優さんの演技もあるのだろうけど、「アレ、本気で死んでるんじゃないの」とか電話が入ったぐらいだ。

 そして、芸能界のメイクさんなり衣装さんは、所謂その道の人が多い。

 由貴の場合、半分は、「会話のテンポ」を大事にする面で女言葉になり、その縁で二丁目を知ったようなクチだった。

 女家系な上に、異性家族はほぼ単身赴任と言う家庭ならではだろう。


 まぁ、とりあえず、ではないのだろうけども、テーブル上の食べ物に手をつけて行く二人。


 サンドイッチ一つ取っても、パンの味がしっかりしている為か、具が少なめであるのに、しっかりと満足させる味に仕上がっている。

 常々、「サンドイッチは具が主役だと思う、パンは手を汚さないだけに必要なものだと思う。」と言う、咲良であったが、無言でぷるぷるしている辺り美味しかったのだろう。

 しばらく無言で、食べ物を消費する。

 声には出さないが、「うま~」と咲良が感極まっているのは愛らしい、と由貴は思う。

 その後に話す内容も、益体のない物であった。。

 

 さて、由貴は咲良のことが好きである。

 では、逆にすること……つまりは、咲良は由貴の事をどう思っているのか?に関するならば。

 至ってシンプルに言うならば、好きなほうではある。

 少なくとも、「家族のついでだから」と言い置きはするもののの高校からの十年間、大学の間もアパートから手作りチョコを送っているぐらいには。

 お菓子作りの腕が壊滅しているが、分量どおりにつくり、多少の見た目は悪くても、それなりのものを。

 ちょっと変わった物を作るとダークマーターモドキが出来たりするのだけれど。

 それでも、それ以外に折りにつけて何かと贈り物をしているのだ、咲良は。

 ……かつ、高速バス降り場に待ち伏せされていようと、イヤならば逃げてもよかったのだし?


 つまりは、この二人、モノ見事にすれちがっているのである。

 所謂、両片思い。

 咲良に関しては、「そう言う対象に見れない」と言うふられ方をされているせいもあり、惰性で贈り物などをしている面もあるけれど。

 やはり、由貴と同じく、このぬるま湯に浸かっていようとそういう関係を変えたくないのだろう。

 

 だけれど、由貴はそろそろいい年だ。

 褌締めて変えようか、とあえて踏み込む由貴。


「で、ピー子ちゃんは好きな人いないの?」


「いないわけじゃないけどね。」


「へぇ、誰よ?お兄さんに聞かせて見なさいな。」

 

「いやいい。話が終わりなら、帰る。

 知り合いの甥姪コンビにペンギンのぬいぐるみ欲しいし、水族館行く。」


 咲良の心の叫び・『言えるかボケ』が聞こえそうなほどの塩対応。


 少なくとも、恋はしたくはないが、それでも『好きな人』を聞かれて思い浮かべるのは、目の前の由貴なのだ。

 それをあっぴろけに、「好きなのはアナタ」と言ってしまえればいいのだが、そうも行かない。

 電脳世界のでは、最強議論に名の挙がる《クリムゾン隠者ハーミット》。

 通信を介しての舌戦に常勝無敗する饒舌でもあるのだが、「好きなのはアナタ」の一言が言えない。

 言ってしまえれば、いっそ楽なのに。


 ちょっとのお金を置いて、咲良は店を後にしようとする。


 彼女と入れ替わりぐらいに、滅多にいない名物店主の毒々しい赤紫の髪の男が、「おまけよぅ」とケーキを追加で持ってきた。

 彼が間一髪で避け、咲良は出て行くのであった。

 部屋と由貴を一瞥し、状況を察した彼は、一言。


「言っちゃいなさいな、取られちゃうわよぅ。

 むしろ、ユキがホの字じゃなかったら、お付き合い申し込んでるわ。

 お金は今度でいいわ、ほら、行っちゃうわよ。」


「え、ええ。ありがと、久遠。」


「いいわよ、また、クリムちゃん連れてきて。」


 最後の最後で、咲良の《クリムゾン隠者ハーミット》としての知り合いだと暴露されたが、それはともかくとして、由貴は彼女の後追う。

 










   






 「咲良ちゃん、好きよ、お付き合いしましょう!!」


 色々と何言おうか考えていたようだが、ド直球の言葉しか出てこなかったようだ。

 手を取られ、しっかり眼を合わされての言葉。

 咲良としては眼を丸くするよりない。


「は、い?」


「だから、そう言う意味でお付き合いしましょう?」


「えーうー、恋人とかの意味で?」


「そう、こう言うアタシだけど、」


「…………」


「その、結婚を前提にお付き合いお願いします。」


 顔を真っ赤にして、茹蛸か林檎の紅玉もかくやというほどになる咲良。

 声を次げない彼女に、由貴が最後の爆弾を落とした。

 と、同時に二人のケータイが鳴る。

 咄嗟に、我にかえる二人は電話を取った。


『二人とも問題です、そこは、どこでしょう?

 イチャラブするなら、夜か室内でしなさいな。』


 二つの電話から聞こえる同じ女性の声は楽しそうにそう問いかける。

 二人は知る由もなかったが、街頭防犯カメラなどを利用して、二人を見ていたのだ。

 もちろん、違法侵入&操作ではあるけれど、バレるようなヘマをする彼女ではない。

 

「あらまぁ、ごめんなさいね。

アタシとしたことが、ありがと、あざみちゃん。」


「……ディス姉ぇ、忠告はありがとう。

 だけど、面白がってるでしょ?」


『お互いの好きな人が側に居て、お姉さん、やきもきしちゃったの。

 好きな人がね、側に居るのって、それだけで奇跡なのよ、由貴、咲良。』

 

 茶化すように笑うが、何処か悲しさが混じる女性…由貴が言うには、あざみ…の声。

 二人が、顔を見合わせると、トドメの 一言。


『店のオーナーには、話し通して、さっきの席片付けされてないから、よく話し合いなさい。

 水族館なら、明後日、私そっちでサイン会で、今日中に名古屋につくから、明日付き合うわ。

 帰るの、明後日でしょう、咲良。』


 その後、二人は、知り合いの店じゃなければ営業妨害だろうと、言われるぐらいにこんこんと話し合った。

 ついでに言うなら、翌日合流した、女性の運転で軽く天国を仲良く見たりしたのだが、それは、また、別の話である。

 流石は、咲良の兄が、三代目の姉御と呼んだ女性であった。








  




 そして、約二年後、咲良と由貴は結婚式を無事に挙げた。


 モチロン、陰の立役者の女性と喫茶店オーナーも、恋人と一緒に参加したのであった。



 

最後は、思い切りすっ飛ばしましたけど、由貴って遊び人です。

オネエでバイで、バリタチです、

なので、下手しなくても、私がラブエッチ書くとほぼ確実に、ムーンライトじゃなく、ノクタへこんにちは。になりそうです、ええ。

と言うか、愛と執着は似ているようで近いだけだと思うのです。

かつ、二十×年分の想いはメルトダウンなのです。

必然、ヤンデレか、『18禁的自主規制』で自分から逃げれないようにするかなぁ、由貴なら。



後、電話の女性の関係もあって、作中は2013ねんぐらいです。

その一年後ぐらいに、電話の女性のダーリンは戻ってくるのです。



また、タイトルのブルームーンは、カクテルで。

意味は、「奇跡」の方で。


では、ありがとうございました。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 描写が詳しくて、色々な言葉を使っているのがよかったです。 視点がころころ変わっていくのが新鮮でした。ややこしいということもなく、空行と書き方だけでどちらの視点なのか理解できました。 [気…
2016/03/02 02:35 退会済み
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