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しろくろにっき  作者: 猫艾電介
9/25

つどう色と戦いの始まり

解説回です。

この回だけ書き方を大きく変えています。

「集まったのはいいけど、ひいふう……私加えて6人」

「紫亜さんの言った通りデス。知ってる人全員集めちゃいましたネー」

「紫亜さんは頼れる人だからーね」


 ここは筆咲校区にある布津之神社(ふつのじんじゃ)。紫亜の実家であり、筆咲校区に済む人なら誰でも立ち寄る場所だ。


 休みの朝早く、翠とサン。そして城奈は紫亜の先導のもと、この神社に連れられたのだ。


「あっ! すーちゃん!」

「ひさし――ぎゅぅ、分かった、分かったから離して」

「だって久々だったもん。でもね、色々と大変だったんだよ、それで、それで……」

「まぁまぁ、話は中にしましょう。ようこそ布津之神社へ」


 紫の巫女服を纏った紫亜が改めて一礼する。見上げれば、巨大な鳥居が空を突くように立っていて、奥には立派な本殿も構えていた。


 紫亜に招かれるまま集会所を抜け、紫亜の家に招かれる一同。緑茶と茶菓子、広い和室は、初めて来た場所とあってどこか落ち着かない。


「それで今回は」

「今回はねー翠ちゃん、一度おさらいしないとダメかなーと思ったのよ」

「おさらい?」

「早い話がこれまでのおさらいね」

「メタデース」


 紫亜 「いっそのこと会話の前にこういうのをつけてみる?」

 サン 「グッドアイデアです!」

 翠  「いやいやいや、ちょっと待って。どこからこんな名札を」

 きらり「今回だけは細かいこといいっこなしだよすーちゃん。あれ、まーちゃん?」

 真畔 「……あぁ、いや。この流れにどう乗っかればいいのかわからなくて」

 紫亜 「真畔ちゃんは孤高の戦士だからねぇ」

 真畔 「中二病は黙って!」



 城奈 「それじゃぁ最初の質問はこれから行こうか―な」

 翠  「待って、勝手に始めないで」



◆その1 "色"ってなに?


 城奈 「おざなりになってたからねー」

 翠  「とりあえず、イロクイに対抗できる色ってぐらいは、何となく分かる」

 紫亜 「"色"はね、この地域に伝わる生命力の表れと言われてるの」

 きらり「生命力?」

 紫亜 「人は生きる上で心臓を動かすけど、それ以外の要素――気力とか精神力。そういったものを"色"と表現してるの。だから誰にでも持っているものよ」


 真畔 「ちょっと待って、そしたら私達が戦わなくてもいいんじゃ」

 紫亜 「戦い方や、戦えるほどに色を放出できるのならそれもいいけどね。今のところ、色を使って戦うことができるのは私達だけなの」

 サン 「サンの父さんも色を使って戦うスタイルを身につけようとしました。でも、ダメでした」

 翠  「それほど難しいってことね」


 きらり「はえー、じゃぁ私達ってヒーローなんだ!」

 紫亜 「イロクイと、色鬼に対してだけだけどね。色っで人に危害を加えることは、めったに起きないわ」

 城奈 「それを踏まえてーこんなお便りが」

 翠  「お便り持ってないけど」

 城奈 「てへ」



◆その2 『イロクイ』や『色鬼』って?


 翠  「中途半端に聞いたけど、色鬼がもういるんだっけ?」

 真畔 「それについては私も知りたいわ。紫亜、どういうことなの?」

 紫亜 「まぁまぁ、先にイロクイと色鬼について伝承を踏まえ――」


 2人 「手短に」


 紫亜 「うー……早い話、イロクイも色鬼も"色"が怪物になったものと考えるとわかりやすいわね」

 きらり「妖怪っぽい感じ?」

 サン 「ゴースト、と言うよりスピリット、命の力デスね。"色"も元は生き物の生命から作られてるのデス」

 紫亜 「この生命力、つまり"色"が漏れだし、一定量貯まるとイロクイになるの」


 翠  「じゃぁ、色鬼は」

 紫亜 「これはちょっと長い話になるわね。遡ること――」

 城奈 「色鬼はーね、意思を持った"色"とも言われてるけど、詳しくわからないのーよ。意思を持った"色"だとイロクイだーし……」

 きらり「んー、んー、色ってエネルギーだから、意思を持ったエネルギー生命体?」

 城奈 「それ! それでもういいのね! 城奈もあまり調べてないけど、イロクイより頭が良くて暴れん坊なのね! だから過去に色淵ヶ丘や筆咲周辺で大暴れして、そのおかげで色使いが生まれて……」

 翠  「今に至ると。そう考えると元凶というか、ラスボスっぽい雰囲気がする」

 きらり「ラスボス! 私たち勇者ってことかな!? ちょっとドキドキしてくるよ」


 紫亜 「けど、油断はできないわ。色鬼はイロクイよりも頭は回るし、遥かに強い。色使い1人の力で勝てる相手じゃないわ」

 真畔 「事実、ここにいるはずだった色使いが2人いない。色鬼にやられた、と考えるしか……考えたくないが」

 翠  「まぐ……真畔の友達、なんだよね。やっぱり居なくなるときついと思う」

 真畔 「……(こくりと頷き)ありがとう、けど、藍が死んだとは思えないし、思いたくない」

 サン 「藍さんの色は、僕が持っていマス。もしかすると、これでかわりが出来るかもです」

 紫亜 「そこまでトントン拍子に行けばいいけど……とりあえず次は何を話そうか」

 城奈 「はいはーい、サンちゃんって何者か知りたいのーね」

 サン 「What's!?」



◆その3 サンについて


 真畔 「確かに紫亜、昨日この少年を『青葉教授の子』とか言ってたな」

 紫亜 「あ、聞いてた?」

 真畔 「少しはね」


 サン 「青葉教授は、僕の父さん『青葉国彦(あおば・くにひこ)』デスね。グランマが色淵ヶ丘の出で、グランパがイギリス人のクォーターが僕です」

 翠  「その特徴的なしゃべりも?」

 サン 「これはその……恥ずかしいデスけど、直しマスです。それで、父さんは色について調べてたのです。人の発する色とか、そういうのデスね」

 紫亜 「イギリスはそういうのが認められやすいから、私もずいぶん助けてもらったのよ」

 サン 「それで、転校したのはその……僕が"色"を使えるようになったからデス。もしかすると、なにかの役に立つかもってことデス」


 真畔 「確かに、色使いが増えてくれるのは心強いわ」

 翠  「この前とか、居なかったら私とかもまとめてイロクイにされてたよ」

 きらり「えーっ!? すーちゃんがイロクイになるのはちょっと怖いなぁ」

 紫亜 「ともあれ、これからが大変だからよろしくお願いするわね」

 サン 「ハイ、一生懸命がんばります!」



◆その4 城奈について


 翠  「城奈……というか四谷って、確か市議会議員の四谷さんだよね」

 城奈 「そだよー、四谷竹流(よつや・たける)は城奈のお父さんであり市議会議員。おじいちゃんも国会議員だーね」

 真畔 「令嬢がこうして普通に学校に通ってていいものか……私としてはすごく不安だけど」

 城奈 「成人するまではここに居ろっていうのが四谷のしきたりだけどーね。家庭教師とかついてもらってるから、不自由はしてないよ」

 きらり「ふえぇ、城奈ちゃんも大変なんだね。私だったら逃げちゃいそう」


 翠  「……でもって、色使いと」

 城奈 「ふっふっふー、実はそうなのーね。 でも見て見ぬふりしてごめんなさい、あまり色を出さないほうがいいと思ったのね」

 サン 「リクミヤさんには話てませんケド、シロナさんの色はパワフルなのデス。それに……」

 翠  「私とサンなら、乗りきれると」

 サン 「(こくこくこく)」

 翠  「……もう過ぎた話だけど、今度は助けてほしいな」

 城奈 「今度はちゃんと助けるのーね。城奈の赤い"色"は引きつけて払いのけるのね!」



◆その5 紫亜の家ってスゴイの?


 翠  「もう門構えを見てスゴくないってのが無いけど、私らが集まるってことは、"色"と関係あるんだよね?」

 きらり「うんうん! ここはね『色神さま』と土地神様を祀っている神社で、筆咲に住んでる人はお正月とか催し物の時とか立ち寄るんだよ。

     通ってきた集会場には近所のおじいちゃんおばあちゃんもお茶してたりするし――」

 翠  「つまり筆咲校区の拠り所、だね。色淵ヶ丘がそういう場所がないから何だかなじまないような」


 紫亜 「元々この校区は『布士野(ふしの)』と呼ばれる村の集まりだったの。この神社が建ったのが戦国時代の前、室町時代だから――」

 真畔 「およそ450年前」

 翠  「だね」

 紫亜 「正確にはその前からある集落ってところね。ちょっと資料を探してくるから、少し待っててね(立ち上がり、部屋の外へ)」



 真畔 「……今のうちに話を進めてもいい?」

 きらり「進めて!」

 翠   「長話が始まる前に、早く」

 城奈 「ええと、ようするにこの神社の名前『布津之(ふつの)』って何!?」

 真畔 「布津之は色鬼の伝承が終わった後についた名前よ。"色"を守り神とする神社の主に与えられる特殊な苗字になるわ」

 翠  「てことは……村の名前も変わってるね。調べたら戦国時代ぐらいに『布士野』から『色筆(いろふで)』に変わってる」

 真畔 「伝承が始まった時期とだいたい同じね。それにしてもスマホって使いやすい?」

 翠  「便利だよ」

 きらり「だねー」


 紫亜 「おまたせー、用意してたけど持ってくるの忘れちゃったのよ(どん、どすっと積み重なる古書)」

 真畔 「(青ざめ)……紫亜、本題に入ろうか。今回私達を集めた"色禍"について教えて」

 紫亜 「ちぇー、まぁ真畔ちゃんがそういうのなら、ね」




◆その6 |"色禍"《しきか》について、白化について


 紫亜 「色鬼が目覚めて大暴れする。この過程で大規模な災害が起き、色鬼に味方する。これが|"色禍"《しきか》と呼ばれるものよ。

     この日本では大火や洪水、噴火や台風が起こっているけど、過去の大規模な物の中には色禍と思わしきものも混じってるの」

 サン 「日本はスピリチュアルな土地ですから、何かあるかもしれないデス。でも、ハッキリとはまだわからないのデスよ」


 翠  「その色禍を引き起こす色鬼が、今病院に居る?」

 紫亜 「えぇ、真畔ちゃんの前で話すのは辛いけど、多分藍ちゃんは『白化(はくか)』されて、色鬼に乗っ取られてると考えないといけない」

 翠  「白化?」

 きらり「真っ白になっちゃうの?」


 真畔 「……きらりの言うとおりよ。イロクイは自分の色で相手を塗りつぶすけど、色鬼は自分の色で塗りつぶすだけではなく、色を食らう術を持っている」

 紫亜 「昔話で真っ白になった人がいるでしょ? あれが白化。生命力をすべて取られて、色を失ってしまった人の抜け殻になったものよ。

     そして、白化した人間は長くは生きてられない。色を注ぎ込まないと、周辺の色と混じって『同化』してしまうの」

 きらり「同化するとどうなるの?」

 紫亜 「実際に見たことはないけど、伝承には土の色と混ざって土塊になったり、石の色と混ざって石の塊になった話がいくつか載ってるわ。少なくとも、この状態から戻った話は書かれていない」


 翠  「……死ぬってこと?」

 紫亜 「そうね、だからみんな集めて、こうやって話をしないとって思ったの。 藍ちゃんは、きっと色鬼の色を受けて、そのまま……」

 城奈 「まぁまぁ、えぇーと。色を受けても色で塗り返せば元に戻れるかもしれないのーね。だから気を落とさないのね」


 サン 「ラッキーなのは、色鬼が藍サンの体を使ってるってことデス。まだチャンスは、きっとです」

 翠  「どうやって色鬼を追い出すか、だよね。そうなると」

 真畔 「だね、同色であるサンの色で賄えるか。賭けだろうけど私はあきらめない」

 サン 「同じカラーですからね。頑張るマス」



 きらり「ところで、なんで藍さんの体とっちゃったのかな?」

 真畔 「分からない。多分色使いの生命力が目当てかもしれない」

 城奈 「色鬼って言っても"色"そのものだからーね。燃料切れ起こしたら消えてしまうとかかも?」

 きらり「だったら、追い出して使い切らしてしまおう! そしたら色鬼もやっつけられちゃかも!」



◆その7 そして、これからについて


 翠  「(ヘタしたら死ぬ……何だか実感が沸かない)」

 きらり「どうしたのすーちゃん、ボーッとしてるけど」

 翠  「ううん、なんでもない。ちょっと怖くなっただけ」

 きらり「そっか。でも、すーちゃんならみんなのこと、私みたいに守ってくれるって、信じてるから」

 翠  「ううん、そうなるように頑張る」



 真畔 「それで、どうするかよね」

 紫亜 「全員が分散すると取り囲まれておしまい。イロクイには強いけど色鬼相手は全員が好ましいわ。藍も一緒の時に取り返す」

 城奈 「てことは、チーム分けかーな?」

 紫亜 「そうね、こんなこともあろうかと最適なチームを……」




 その時だった、轟音とともに天井が抜け、何者かが降ってくる。着地とともに紫亜が積んでいた本が崩れ、畳が大きくたわみ、沈み込む。


「敵襲!?」

「早い、イロクイか!?」

「違うのね! これは……」


「……」

「何か変な感じ。ええと、サンちゃんでいい? 何かわかる?」

「ノー、だけど……」


 "色使い"。そうであることはここにいた6人全員が彼を見た瞬間に悟った。

 赤髪にラフな格好をした少年は、サンと同じぐらいだろうか。


「あ、あれって……六宮さん」

「うん、あれは……」


 そのサンは、ひどく怯えた様子で、乱入してきた少年と翠の顔を見合わす。


橙乱鬼(とうらんき)様の言付けだ。当代の色使い、指をくわえて下がっていろ」

「冗談じゃないわ! 色禍を引き起こせば多くの人が被害に遭う。そんなことはこの神社にかけてもさせない」


 少女らしからぬ声色で語る相手に激昂する紫亜。その口調からは、強襲に対する動揺の色が見られる。


「なら良し。諦めても諦めなくても、"コト"は進むのだからな」

 そんな怒りをも受け流し、少年が1度足を踏む。


 その瞬間、広げられた巻物に様々な色をした無数の渦――"イロクイ"の居場所が浮かび上がった。

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