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イカれた小鳥と壊れた世界  作者: 左高例
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3話『トロール・ハンター』

 人間の体の60%程度は水で出来ている。

 一方でクラゲは99%が水分であるらしい。

 すなわち人間とクラゲは三割か四割しか違わない生き物なのではないだろうか。

 三割程度ならば個性と言い換えてもいいかもしれない。すなわちクラゲは個性ある人間なのである。

 そう言った哲学者ヘムストールはその一生を幽閉されてカウンセリングを受けたという。恐らくは脳がクラゲに侵略されていたのだろう。

 少なくともクラゲよりは自分の体に近しいと、新たな異世界人であるアイスから話しかけられても小鳥は納得しようとした。呼吸をしているなら殺せる。そう信じて。

 

「初めまして、私の名前はアイス・シュアルツ。サイモンくんの友人の魔法使いだ。職業は魔法学院で教師をしている」


 目の前で挨拶する涼し気な笑みを浮かべている女性。外見からはわからぬが実は彼女の骨がタングステン製であるかも知れない。それはともかく。

 ちなみに、互いを遮っていた格子は炎の壁が消えたら再び天井に上がっていった。典型的なエフェクト終了後に解除される罠だったらしい。形式美というべきか様式美というべきか、このダンジョンでは珍しいものではない。

 にこやかに手を伸ばしたアイスに握手を返す小鳥。ゴルゴでもないので利き手を預ける。握りつぶされたならそういう運命だったのだろうと覚悟を決めつつ訴訟の容易は出来ている。


「初めましてと返します。わたしは鳥飼小鳥。血中のクレアチン濃度は0.6です。イカレさんとはえーと……」


 予め、小鳥は異世界から召喚された事をあまり他の人に話すなとイカレさんに言われていた。

 異世界召喚術は魔王が使っていた術なので、もしそんな術に成功したと周りに思われたら面倒だからだとか。基本的に自分のことしか考えていないイカレさんである。

 それに小鳥も異世界から来たことを証明しろとか説明しろとか言われたり頭が変とか中二病とか思われたくもないので適当に誤魔化す方針であった。

 とにかく、自分の服装──パジャマを鑑みて簡単に関係を捏造。


「──パジャマパーティーをする程度の仲でして」

「おいコラ」

「な、本当か!? サイモンくんが女の子とパジャマパーティーを!?」

「アイスも信じてるんじゃねェよ!」


 本気で驚いている様子のアイスに容赦なくヤクザキックをするイカレさん。女性を蹴ることに躊躇いは無い。

 アイスは顔から地面に突っ込みつつも何事もなかったかのように立ち上がり、メガネの位置をただして尋ねた。


「ところでイカレというのはサイモンくんのことか小鳥くん」

「おやおや? 聞きたいですか? イカレサンダーボルテージの由来を。あれ? 合ってたっけ? それよりイカレさん、アイスさんのことは名前で呼ぶのにわたしには『手前』としか呼んでくれないなんてそんなひどい」

「手前だって俺の名前呼ばねェじゃねェか!」

「わかりました。間をとってイカレさんのことは『イカさん』でどうですか。可愛いでしょう」

「どこの間を取ったんだよムカつくこいつムカつく……」


 イカレさん──目付きの悪いチンピラ風虹色男性がスク水でイカ男でゲソと言っている姿を小鳥は幻視して。

 

(……あるかな? 需要。無理か)


 いらいらして睨んでいるイカレさんにどうしたものかと困った顔で笑いを零すアイス。そして非情な音は空間を割くように響いた。

 イカレさんの胃のあたりから。彼の食生活はここ3日悲惨を極めている。カップ麺一つでは足らずに、再び胃が要求デモを起こしたのだろう。


「ダメだ、もう倒れそう。早く何か食べないと……飢え死にしてしまう!」

「なに勝手なナレーション付けてるんだ手前」

「おやサイモンくん、空腹か?」


 アイスはどこか嬉しげに手を合わせて首を傾げる。

 露骨に顔を歪めるイカレさん。


「……腹減ってるから早く地上に上がってだなァ」

「安心してくれサイモンくん、君がお腹を空かせてないかと思ってちゃんと食べ物は持ってきている」


 そう言ってアイスは背負っていたリュックサックの中から弁当箱を取り出した。

 

「ダンジョンでお弁当て。武器商人ですか。普通こう、硬くて臭そうな干し肉とか鳥の餌を固めたような携帯食料とかソイレントグリーンイズピーポーとか」


 小鳥の意見はともかく、イカレさんは押し付けられた弁当箱を嫌そうに拒否した。


「お前のメシ不味いから食いたくねェんだが」

「まあまあ、そう言わずに。これは自信作なんだよサイモンくん。栄養満点滋養強壮──な材料を使っている」

「あァクソ……普段なら絶対食わねェのに、空腹の極限で……」


 弁当箱の中身、なにかでろでろした物体をスプーンで掬って差し出されているイカレさん。

 状況的にはあーんされているか、捕虜への拷問を受けているようにも見える。イチャラブか捕虜の取り扱いに関する条約違反かは判断しにくい。

 やがて抵抗むなしく囚われのイカレさんは毒物を口に放り込まれてしまった。

 顔を真っ青にして爆弾を蹴り飛ばし自爆したあと苦虫を噛み締めたような火事場めいた顔になるイカレさん。


「うげェ……人生を後悔するほど不味ィ……」

「ううむ、やはり失敗か。料理の道は厳しいな?」

「せめてレシピからアレンジするのを辞めろクソカスが」


 涙を流しながらちまちまとスプーンをひったくって自分で無理やり胃に流し込むイカレさん。

 アイスは涼し気な顔で小鳥にも進めてきた。


「コトリくん、君もどうだ?」

「いいえわたしは遠慮しておきます」


 夜寝る前にここへやって来たので正直そこまで空腹でもなかったので断った。決してイカレさんが心底まずそうにしているからではないと証言している。

 しばらくイカレさんの栄養補給タイムで休憩をしていた。鳥取三大危険スポットのうち鳥取砂漠だって脱出できないまま食料が尽きて死んでしまう人だって多いので、飢餓伝説にあるイカレさんには必要な時間である。

 栄養の次に必要なのは親交である。ともあれアイスと対話を試みる小鳥。


「それにしてもアイスさんは魔法使いですか。魔法とは面妖な」

「面妖と言われても困るのだが……」

「ああ、すみません。わたし田舎暮らしが長かったものですからあんまり詳しくなくて」


 心のなかで故郷の鳥取を田舎呼ばわりしたことを謝りつつ小鳥は話を聞き出そうとした。


(鳥取は田舎じゃないです。商店街はシャッターが降りている店舗の方が多いだけです。開いているパチンコ屋は通りを見回せば確実に二三軒は見つかります)


 ともあれアイスは納得したように頷く。


「なるほど、この国は帝都と幾つかの都市以外では魔法学校も無いからな。魔法がメジャーな神聖女王国ならばともかく、あまり目にする機会が無いこともあるだろう」

「じゃあそういう設定で」

「設定?」

「いえ、ともあれ。アイスさんはアレですか。氷属性?」


 名前と使った術からして。あるいは命名フリーエネルギー判断法的に小鳥は判断する。的中率は2分の1と中々高い。なにせ当たるか当たらないかの二択しか無いのだから確率が半々なのは必然だ。

 彼女は首肯しながら、


「そうだとも。実家は商売をしていて、高い学費を払って魔法学校に通わせた甲斐があったと教師の傍ら氷作りもやらされているよ」

「魔法学校に魔法教師ですか。ふむ、実はわたしはこう見えて魔法チート能力者の原石」

「そうなのか?」

「いえ全然知りませんが。そんな特典があってもいいんじゃないかな、と」


 今日から魔のつく超能力者にでもならなくては少女はカニにも勝てないだろう。

 アイスは思案顔で言う。


「ふむ……魔法の系統は専門の道具で調べなくてはわからないからな。これも何かの縁だ。コトリくんがやりたいならば今度調べる程度は、職場から道具を持ち出してできるが」

「こういう時に限って便利な縁を持つ人と初期に知り合う運命。それに知りませんよ、イオナズンが発動しても」

「いおなずん?」

「ナズンは言い過ぎですか。それはそうと、魔法の才能とか強さの基準とかってあるんですか?」

「もちろんだとも。階位レベルという言葉で十段階に分けられている。一番見習いの簡単な呪文一つ使える程度がレベル1で、最大の大魔術師がレベル10といった風に」

「ほほう。ちなみにアイスさんは?」


 この世界も数字の単位が一進法だということに安心しつつ好奇心から尋ねる。

 応える声は別の場所から聞こえた。今まで料理を胃に投下することに専念していた、爆縮ウコンを飲み干したような顔のイカレさんが答えたのである。


「そこの料理オンチはその年でレベル9の超天才サマだよクソが」

「おやイカレさん。口でクソ垂れる前にご馳走様を言わなくてはなりませんよ」

「ご馳走ォサマァ」


 皮肉たっぷりに顔を強ばらせてアイスを睨みつけるイカレさん。相当まずかったのだろう。目にはうっすら涙が浮かんでいる。

 するとアイスは照れたように俯きながら、


「ご馳走なんて参るぞサイモンくん。今日の晩ご飯も期待してくれ」

「二度と厨房に立つんじゃねェぞボケ」

「手料理を振舞ったり批評したり。お二人は恋人なのですか?」

「全身全霊で違ェ死ね」

「……」


 脳髄に釘を打ち込まれたようなショックを受けたアイス。通路の端にしゃがみ込んでいじけだした。


「せんせー男子が女子をいじめましたー」

「……先生は今ちょっと辛いからそっとしておいてくれ……」


 アイスの荷物からおそらく勝手に奪い取った水筒で口を潤しているか浄化しているイカレさんが忌々しげに言う。


「アイスは同じ下宿に住んでるから勝手に共有の台所でバイオウェポンを作成してんだよ」

「ほほう、厄介さんですか」

「そォだ。料理の不味い女って今まで何をして生きてきたんだろォな。生きてる価値あんの?」

「ふむ。まあわたしは石鹸を材料にしても何故か美味いものが作れるキッチンの魔法少女と評判だったので分かりかねますが」

「材料にすんなよ──っと」


 ふと、イカレさんが小鳥をじっと睨む目線を送りながら考える。


(そういや地上に出たらこいつどうすっか)


 秘技・モノローグ読みの術で小鳥はその心の言葉に応えた。

 

「やはりイカレさんが責任を取るべきだと思いますが」

「うおッ!? 考えを読むんじゃねェよクソガキ!」

「認知してください」

「意味のわからねェ迫り方するんじゃねェ!」

「何か不穏な単語を聞き取ったところでアイス・シュアルツ復活! 責任とか認知とか何事か──!?」

「お前も復活してるんじゃねェ! 死んでろ! できれば二三年!」


 やいのやいのと騒いでいる。

 とにかく、改めて三人で地上を目指すことにした。ただ見上げることしかできなかった空を求めて。


 RPGなどで序盤に一時期加入する仲間に限って装備を外せなかったりするが、それとは関係なく三人は隊列を組んだ。


 前衛:魔法使いアイス。装備:魔法のバット・ブランドスーツ・おしゃれメガネ

 後衛:召喚士イカレさん。装備:布のローブ

 ゲスト:鳥取県民小鳥。装備:油すまし模様のパジャマ


 となる。装備らしい装備はアイスしか持ってないが、ともあれ。

 前衛を魔法使いにするという状況だが、曰くアイスは強いから大丈夫らしい。無論イカレさんが前衛でも問題なく殲滅していけるのだが、面倒なようだ。 

 レベル9の魔法使いとなると帝国でも両手の指で数えられる程しかいない高等能力者であり、それでいて23歳にしてレベル9に到達しているアイスはバケモノ並──イカレさんの証言では──なのだとか。

 

「……関係ないけど序盤で高レベルメンバーが仲間になると回避不可能イベントで死んだりしますよね」

「何か不穏なことを言っているのだコトリくん」

「これはまさか……いえ……今はまだはっきりとは言えませんね」

「だァから何だっつーのそのインテリぶった頭の悪そうなキャラのセリフは!」


 腹立たしげに、イカレさん。

 それはともあれ、三名の即席冒険者はアイスを先頭にして洞窟を歩く。彼女が通ってきた帰り道を戻っているのである。

 灯りは夜光鳥からアイスの魔法の灯りへ。魔力を変換して発光させる光属性の術式だが、世間では魔術文字と云う術式を使う灯火が誰にでも使えて長持ちするので普及している。

 イカレさんはもう魔物とのエンカウントも気にせずダラダラと歩いている。二人のときはまだ緊張感があったというのに。


「ん? おォ魔物だ。アイス、出番だぞ」

「任せてくれサイモンくん」


 だらーんとした面倒くさそうな口調でイカレさんが指示を出した。

 そして魔法の灯りの光量が上がり、広がった視界に映るのは。


「あれは……フレッシュゴーレムだな」

「うわ。フランケンシュタインの怪物みたい」


 そこには3mほどの巨体を持った人間型の生物がいた。体のあちこちが歪に膨れ上がり、変色している。死体と生体が斑模様を作っていてグロテクスな外見である。

 筋肉質に膨れ上がった手にはでっかいナタを持っていた。振り回せば岩でも割れそうだ。

 

(フランケンシュタイン=人造人間の怪物みたいなイメージだけどあれって製作者の名前で本体に名前は無いんだよね。かいぶつ君とだけしか)


 相変わらずのほほんと小鳥は見ながら考えている。

 彼女を尻目に、アイスが杖を持って前に出た・


「それでは片付けてくるよ」


 彼女はそう言って魔法を詠唱……しませんでした。

 魔法の杖ことバットを肩に担いでフレッシュゴーレムへ駆け寄る。

 ご、が、と叫びを上げてフレッシュゴーレムはナタを振りかぶり──


「イカレさん、イカレさん、大丈夫なんですか」

「大丈ォ夫だろ」


 適当に彼は相槌を打つ。欠伸混じりに見ていて手伝おうとする気配はなかった。

 遠くから空気が割れる音が聞こえる。かき乱された大気が白く見えるほどの速度でゴーレムはナタを振り下ろした。

 轟音。ナタはアイスさんを真っ二つにしつつ地面に突き刺さり、アイスの冒険はここで終わってしまった……。


「残念。選択肢を選び直そう」

「いや、死んでねェから」

「おや」


 よくよくみるとあっさりとゴーレムの一撃を横に避けている。

 相手の隙にバットを振りかぶり今こそ魔法を……

 期待して小鳥が見守っていたら普通に杖をフルスイングした。ゴーレムの足に彼女の魔法のバットが直撃。

 殴られたに足は粉々に吹っ飛んだ。バランスを崩したゴーレムが倒れ──

 続けてその頭へバットを叩きつけた。やはり粉々になる頭部。そして魔力が薄れて実体を無くすゴーレム。

 魔法使いはゴーレムを撲殺した。


「ちょろいものだ」

「いや、魔法は?」

「なに、あの程度の相手ならば魔法を使うまでもない。これでも鍛えているからな」

「……」


 フフンと笑いながらくるくるとバットを回すアイス。鍛えていたで済むのだろうか。しかし鍛えていなかったよりは説得力のある言葉だ。

 イカレさんはきょとんとしている小鳥の様子を見て言った。


「ほら一人で大丈夫だっただろォ? そこの女はオールラウンドに戦えるチート魔法使いサマなんだからドラゴンだろォが一人で倒せるんだしよォ」

「さては胸に秘密が。加速装置とかエネルギー回路とか付いているのでは? むう……やわい」

「探ってもなにも出はしないよコトリくん」


 アイスの胸をまさぐりつつ、仕込みは無い天然巨乳であることを確認した。

 

「アホしてねェでとっとと進むぞ」


 うんざりした声音でイカレさんが言う。

 男女比的に劣勢なイカレさんの少数派意見ではあるが、民主主義的には無視することもできずに小鳥は仕方なくやめて再び道を往くことにした。



 その後も地上を目指してチート魔法使いと召喚士と鳥取県民のパーティは進んだ。

 出てくる魔物は片っ端からアイスが仕留める。もうなんかイカレさん面倒くさいのか任せっきりであったという。

 バットで殴ったり、氷塊を生み出して殺人ピッチャー返しをしたり、地面から巨大な氷柱を発生させて串刺しにしたりジェントリーウィープスったり。

 もう彼女ひとりだけでいいんじゃないかなって勢いであった。あくまでアイスがゴリラパワーと底無しの魔力を持っているというだけで、普通の魔法使いは結構魔力切れしたりするらしいが。

 この世界では魔力が無くなると徹夜のように精神衰弱し、底をつくと気絶までするのだという。まったくそんな気配はアイスからは無かったが。

 イージーモードというかトライアルモードというかチュートリアルというか、そんな気分を小鳥は味わっていた。


(自動的に経験値とか入ってきてレベル上がらないかな、わたし)


 と、都合の良い事を考えるが、氷漬けになる魔物を見ているだけでどんな経験になるのかは疑問だ。


「アイスさんぐらいの実力者ならばこのダンジョンを制覇できるのでは?」


 気になってイカレさんに訪ねる小鳥。

 しかし彼は首を振って答える。


「無理無理。つーかこのダンジョン果てが基本的にねェから。地形だってしょっちゅう変わるしランダムで出現する魔物と宝も絶えねェし。そんなんだから何十年も冒険者なんて稼業が続くんだよ」

「ほう。まさに不思議なダンジョンですね」

 

 そんなことを言いながら、安全とはいえやはりイカレさんを盾にして小鳥は歩いていました。

 なお彼女は罠も警戒しているのでさりげなくイカレさんの歩く方向とかを引っ張って変えたりしている。罠の1つや2つ見抜けなければ鳥取では生きていけない。

 

「ダンジョンの外はどうなってるんでしたっけ」

「普通に帝都だが」

「有害な紫外線とか放射線とか光化学スモッグとかジオハイドロゲンオキシジェントとか降り注いでないですよね」

「……いや、手前の体にどう作用するかまでは保証しねェが。吸血鬼でもなけりゃ平気だろォよ」





(──! すでにわたしの体が真祖の吸血鬼になっていることに気がついている……!?)






 もちろんそんなものになっていない。モノローグでフカしても誰も突っ込んでくれない孤独を小鳥は嘆く。未だに人類は互いの思考を読み取れるほど進化していない。鳴き声でコミュニケーションを取るなど動物だ。

 ともあれ心配のし過ぎだろうかと彼女も思う。異世界くんだりまで来て、大気や紫外線や食品の心配をどれだけすれば気が済むのかという話である。この際細かいことは気にしないようにしようかと諦めに似た気持ちに為る。たとえ眼に見えない影響で十年後にガン化したり不妊症になったりしても。


 そうして三人はひたすら出口へと進みまくった。戻りまくったというべきかもしれないが。

 


「さあ諸君、もうすぐ出口だ」

 


 前を歩き雑魚散らしをしていたアイスの声だ。確かに新鮮な風が前の通路から流れてきている。

 ようやく外に出られる場面になってふと気づいた問題は、


「異世界の街を歩くにしてもわたしは未だにパジャマ姿だということなのだけれども」


 ようやくこうして、小鳥の異世界プロローグは終了することとなった。

 元の世界への帰還方法とか、先ほど細かいことは気にしないと決めたばかりなので問題の先送りをしつつも……。






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