私とイケメンの熱い夜
「すいませんでしたあああああああああああああ!!!!」
私は四つん這いになり、全力で額を床にこすりつけた。
こんなイケメン様に私のようなクソ女の相手をさせてしまったなんて。
最悪だ。
彼にとって人生の最大の汚点になりうる出来事だ。
イケメンは今、心の内で絶望に打ちひしがれているのかもしれない。
しかし、ぶっちゃければ
――嬉しい。
ニヤニヤが止まらない。
「すいませんでしたあああーひゃっひゃああああ!!!!」
記憶が無いとはいえ、念願の。
そう、夢まで見た初行為が達成できた訳じゃないか。
しかも相手は イ ケ メ ン。
つまり、無くした記憶のかけらを妄想で補うと、こんなことになる訳だろ?
ベッドの端に背を預け。
ほどよく酔った私が風早を視線で誘う。熱の籠った艶やかな、しかし恥じらいを持ったアーモンド形の瞳は、風早の理性の糸を切るには十分すぎる。
生地の良いレースに囲われた、二つの大きな膨らみを詰めたブラウス。
意匠の凝ったボタンを、1つ1つ外していき、徐々にあらわにしていく、熟れかけの若い肌。
それをなぞるように口づけする、形の良い薄い唇。
「ひゃっ」
下腹部を撫でられた時、私の体は跳ね上がった。撫でられた場所が熱い。溶けてしまいそう。
じわじわと快感が私の豊満な胸を焦がす。やだ、こんなの、怖いよ。もっと気持ちよくなったらきっとおかしくなっちゃう!
風早は構わず私の耳に口づけを落とす。そしてフッと息を吹きかけ、熱いものがねっとりと絡みつく。
耳なんて卑怯だ。そんな所に舌なんて、いけないよ……。だめだよ、風早……。
「、ぁん!」
自分から出た信じられない程色っぽい声に、恥ずかしくてたまらなくなり、慌てて耳を手で覆う。肩を縮め、私は彼から、じわじわと浸食をする快感の波から逃れようとする。だが、風早は私の顎を掴み、無理やり唇を落とした。
「ん、ふぅ」
ねっとりと舌を絡め、私の歯列をなぞる。キスって、こんな気持ちいいんだ……。そんなの、知らなかった……。
快感で思考に靄がかかっていく。ぼうっと、私は唇から涎を垂らした。それを、風早が唇で掬い取る。
このままずっとこの唇を独占したい。風早と交換した唾液で臓器を満たしたい。
なんてやり取りが有ったかもしれない。
覚えてないけど……有った!!!!!!!
かも!!!
しれない!!!!
……もしかしたら。
「いやっ、いやっはああああああああ! すいませえええん。しゃーせぇん」
笑福亭釣瓶みたいな笑顔で、私はとにかく激しく照れた。肉食獣のセックス並みに激しく照れた。
これは自慢のメモリーになるにちがいない。
頭の中でスネオが自慢する時のBGMが流れる。
ごめんねー。処女諸君。このイケメンのソレは私専用なんだぁ。
「サーセン、ぐふふふ」
実際腹の内でそんな事を思っているのも、申し訳なさを加速させる。
「やっぱマジすいませんっしたああああああああ!!!」
やっぱって何だよ。すいません一択だろ。
私は額を床にすり合わせる。顔、というか主に額が熱い。摩擦で。
このままスリ続けたら火がついて火事が起きるんじゃね?
「どうしたの?」
あ、イケメンがうろたえてる。