粗相して人類滅亡
「ビッチだと思ったでしょ!!! 残念、処女でしたぁ!!!!!」
行動は軽率だが、身持ちだけは固い自信がある。
「うっ」
調子に乗って呑みすぎた。気持ち悪い。
くるぞ。くる。これ来るわ。来ちゃう!!!!
きーてーよその火を飛び越えてー
「やばいよやばいよ……」
半ば出川哲朗になりながら、高架の階段を駆け下りる。
――だが
「ぎゃっ」
その第一歩でコケた。
歩道橋を尻からストンストンと転がり落ち、鞄からは紙吹雪のように書類が舞う。
そして着信。
流れるドリフの盆回り。
「オボロロロロロロロ」
ガッシ! ボカッ!
私は吐いた。
スイーツ(笑)
ゲ□と書類をぶちまけながら、私は階段を尻で滑り落ちていく。
4ページ目から何やってんだよ私!!
バカバカ印象最悪だよぉ。
テッテッテ テッテレテッテ テッテレテッテ テッテッテー
盆回りをBGMに、一段一段、スローモーションで景色が変わっていく。
いたい。尻がいたい。腰も背中も痛い。私という存在が痛い。
誰か助けてぇーー
痛いよぉーー
長かった階段落ちが終わり、地べたに横たわる頃には、全部がどうでもよくなっていた。
ああ、死ぬかも。
ジ・エンドオブ人生。
直訳で人生オワタ。
それにしてもゲ□が臭い。マルイワンで買った1万2千円のブラウスも汚物でグシャグシャだ。
マジで私の人生終わった。
全身が痛い。
意識が遠くなっていく。
なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ。
どうしてこんな恥ばかりなのだ。私の人生は。
私はかつて、一人の女の子だった。
お伽話の主人公を夢見る、普通の女の子のはずだった。
ある日突然王子様が現れて、私をお城に招き入れてくれる。
立派なお城で、南向きに窓があって、日当たりが良くて、風水的にも抜群で、城は城でも茨城ぃ! みたいな糞みたいな田舎じゃなくて千葉か埼玉にあって。
あの頃はそんな夢ばかり見ていた。
なのに、今はこんなガッカリ人生まっしぐら。24年間彼氏なし。試合経験ゼロ。万年ベンチ温め機。
結局、私には王子様なんて現れなかった。
むなしい。
むなしすぎる。
こんな所で終わるなんて。
女として生まれた意味がまるでわからない。
やっぱり恋愛なんて悪だ。
恋愛が悪い。全部悪い。
子供ができる仕組みが悪い。
神様、レシートの裏に似顔絵描いてあげるから今すぐ人間を無性生殖に作り替えて。はいダッシュ、3分な!
私を幸せにしてくれない恋愛なんて、悪くない訳がない。
「あーあ、死ぬまでに一回位は……セックスしたかったなぁ」
そしてまた吐いた。
スイーツ(笑)
―*―
で、今に至る。
あれ?
おかしいな。崖と崖の間に橋がない。
瀬戸大橋がないよ! アクアラインもないよ! 天橋立だってないよ!! 交通の便最悪だよ! 通勤も家族サービスも短歌詠むこともできねーよ!!
やばいやばいやばい、ってことはやっぱり――――
そういうことなの?
「いぎゃあああああああああああああああああああ」
気づいたら、私は叫んでいた。
力の限り。
全身の全細胞が同じく咆哮をあげている。田中将大なんて目じゃないよ。神聖なマウンドを汚すんじゃねぇって助っ人外国人から批判浴びちゃうよ。
えらいこっちゃえらいこっちゃ!!!
「ないないないない!!!!!」
ガァンッ、ガァンッ、ガァンッ、ガァンッ!
髪をくしゃくしゃに掻き毟りながら、壁に向かって何度も頭を打つ。
これはクリリンの分!!! 私のクリリンちゃんの分!!!!
したのか!!!!
ヤッたのか!!!!!
彼のボールが私のミットにズドンしちゃったのか!!!!!!
洞窟に向かって花火をムカ着火ファイヤーしちゃったのか!!!
えええい、まわりくどい表現はめんどっちい!!!!!
あちき、イケメンと合体したのかああああああああああああ!!!!!!!!!!!
「ぬああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
なんていうか……
なんていうか……!!!!!!!
風早くーーーん、君に届けっ!!
違う!!
君に届いたんだ。届いちゃったんだよバカ野郎!!!
そうじゃなくてさ!!!
そうじゃないんだよ!!!!!
風早くん、バスケがしたいです!!!!
コレ違う!!
何で爽子が血だらけになりながら不良と喧嘩しなきゃいけねーんだよ!
そんな漫画、君どころかあいつにもこいつにも届かねーよ!!
住所不明で家に帰ってきちゃうよ!!!!!!
もうアレだ。
なんというか―――