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ミハルの奇妙な計画

 *



翌日。

アラタとあの電話をして一週間の記念日。


私は友達の誕生日プレゼントを選ぶために新宿ルミネに来ていた。

もちろん、その「友人」は知子さん達のことではない。

私には、ちゃんと不特定多数の友がいるのだ。


馴染みのテナントの店員さんと会話したりと優雅なショッピングを終え、私は足早に西武新宿駅へと急ぐ。

仕事にありつけない今は、とにかく金がないので目的の品を買うのが精一杯だった。

というか、定期も持っていないので田無・新宿間の交通費が痛い。

たったの260円が涙が出るほど痛い。


pepeのエスカレーターに乗られているそんな折、手に持っていたガラケーが震えた。

着信だ。


相手は誰だ、と画面を見る。

アラタの顔が脳裏をよぎる。


ミハルだった。


うわーーー恥ずかしいよこれ。超恥ずかしい!!!

頭の中の話だし、誰かが覗きこんでくる心配はない。


ファンタジー世界なら「心が読める」的なヤツが存在する。

でもここは現実。平成25年の日本。

そんな事を名乗り出るヤツは精神科に行く事をおすすめされてしまう世界だ。


思い浮かんだシルエットを必死にかき消し、別のスイッチに切り替えていく。

土曜の真っ昼間から一体何の用だ。

私は嫌な予感に苛まれ、恐る恐る通話ボタンを押した。


『ご、ごごご、ごご』


ミハルはゴの1字だけで全てを伝えようとしていた。

そんな事は不可能だ。

ゴで何かしら伝えられるのは不老不死の荒木先生が描く「ジョジョの奇妙な冒険」位だろう。


「ゴ? 何? 日本語でお願いします。っていうか時間無いし切っていい?」


と、言ったら受話器の向こうの相手が明らかに焦り出す。


『ご、ご、ゴーコンを、ね』

「え、何? 何だって?」


バイブレーション機能が付いてるんじゃないかって程噛みまくるミハルに対して、私はラノベの主人公みたいなセリフを言う。


『合コンだよ!!!!!』


割れたミハルの声が飛び出してきた。

う、うるせぇ……私は苦虫を1カップ踊り食いしたみたいに顔をしかめ、思わず受話器を離した。

っていうか苦虫って何本足なんだろう。

6本以上なら事務所NGで。


「はぁ。それが?」

『合コンするの。恋頃ちゃんに頼んでもらって』

「誰が」

『私が!』


ミハルが?

合コン?


今の頭の中をテトリスに例えるなら、ジグザクのヤツがずっと連続で降り注いでいるような状態だ。

どうやっても一列揃わない。

理解ができない。


要するに、ミハルは今までの自分を捨てるのに必死になっていた。


合コンするんだけどどうしようって誰かに聞いて欲しいんだろうか。

それならば私という人選は間違っている。

言える事はこれ位。


「やめといたら? そういう出会いってミハルじゃないよ」


やっぱりミハルは道端や空港でイケメンと出会うのがそれっぽい。


あわよくばヤろうと思っているヤツが集う会合なんて、ミハルが汚れてしまうのではないだろうか。


『でも。私、恋がしたい!!』


恋がしたい、かぁ。

今日のミハルはやけにテンションが高い。


「恋ってそんなにいいもんかねー」


反対に、どんどん冷めていく私。


「今日のミハル、なんかおかしいよ。普段なら出会わなくても構わないみたいなカンジじゃん」

『アラタ君と会ってみて分かったの。いい男は歩み寄って来ない。自分から探さないと!!』


ミハルの恋愛したい病はアラタから伝染されたらしい。

そのアラタっていうのは流行りの疫病か何かかな?


「やめときなって。合コンに来る輩に宝なんかいないよ」


対する私は恋愛めんどくさい病。アラタのせいで悪化した。


『あきなちゃんらしくない!! いつもはすぐセックスって言う癖に』


まったくミハルのヤツ、一体どこから電話してんだよ。

セックスって……バンド名でもない癖に軽々しく言うんじゃないよう。


普段はそんなの恥ずかしいよぉ……とか言って顔真っ赤にするのに。


「セックスはセックス。食事、睡眠、セックスなんだから大事に決まってるでしょう」


言ってる自分でも驚いてしまうような持論である。

その本人は処女なのだから目も当てられない程にイタい。

新宿区で、20代女性と目を合わせただけで痛みが起きる事案が発生してしまうかもしれない。


『あきなちゃんも来るんだよ? 合コン』

「え?」


爆弾が来た。

今、思いっきり爆弾がきた。

新宿区で、20代女性が突如痛みを訴える事案が発生してしまうかもしれない。

そうだよね、今痛がれば合コン行かないで済むもんね。


「は? やだよ。何で。メンバー居ないの?」


多少語尾が乱暴になっていく。


『私と恋頃ちゃん、あきなちゃん』


え、今コイツなんつった?

こ、なんとかとか言ったけど今なんつった?


「え? 何? もっかい言って?」


聞き間違いだよね?

違うよね?

恋頃とか言ってないよね?


『私と恋頃ちゃん、あきなちゃん』


その時、自分が来るか来ないかなんてどうでもよくなる程、ミハルが気の毒になった。


何その組み合わせ。

そのパーティはどうかと思うよそれ。

恋頃が浮いてるよ、ひのきの棒持った村人だけのパーティにロト装備で固めた勇者混じってるよ。

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