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すっぴん大好き(ただし可愛い子に限る)

―*―



ミハルは語り終えるなり、私の事をさも憎らしげに睨みつけた。


いつもの時間、いつもの店、いつものメンバー、いつもの女子会。

今日も私達はモテない自慢を肴に宴を開く。

開くのはいいんだけどさぁ――


「っていうか私悪くなくない!?」


今の聞いた? 

どう考えても悪いの私じゃなくてミハルじゃない!?

25歳にもなって化粧をしないミハルの方なんじゃない!?


どう思う?

まさか皆、すっぴんこそ正義とか思ってないよね?

思ってる?

だったら立ち去れ!!

そんなヤツは漏れ無くここから立ち去って二度と帰ってくんな!!!



「あきなが悪いわね。どうせ無理やり価値観押し付けたんでしょ?」


と、知子さぁん……!


「そりゃないよ、魔女裁判だよ! ねえ、恋頃ちゃん」


私は今にも噛み付いてきそうなミハルをどーどーしながら、恋頃にすがるような視線を送る。


「……ほぼ……すっぴん……私も……」

「なあ知子さん、こいつに石投げようぜ」

「ええ、いいアイディアね」


私と知子さんの怒りの矛先がドリフトを経て恋頃に向く。

恋頃様は例えすっぴんでも世間が認めてくれるからいい。


「恋頃ちゃんはかわええもんなー。なー、恋頃ちゃん」


にゅっと、安田がこちらに顔を出す。両手には数えるのもおぞましい程たくさんの空ジョッキを持っていた。

「お前はお呼びじゃない」と言ってやろうとしたら、あの人が先に反応した。


「仕事に戻んなさい。店長に言いつけるわよ」


知子さんだ。

野良犬でも追い払うようにシッシと手を払う。

安田はこの間の件もあり、さも不機嫌そうに顔をしかめる。

が、すぐに気持ち悪い程の笑顔に戻り


「ほな、恋頃ちゃん、またなー」


と言って背中を向けたのだった。

当然、恋頃ちゃんは終始無反応でリリアンをしていた。


ってリリアン!!?!?

懐かしくない!?

え、これどこから出てきたの!?

どこで買ったの!?


「ほら、恋頃ちゃんだってすっぴんじゃない!」


ミハルが背筋を伸ばして言う。

すげぇ図々しいな、こいつ。

秋葉原を歩けば10人中8人が振り返るであろう美女の顔と、自分の顔が同等だと思ってるなんて正気の沙汰じゃねぇぞ。


一般に男どもの語る「すっぴんがいい」は、すっぴんが「可愛い子が」いいという意味が隠れていると言っても過言ではない。

化粧で作れるかわいさなんかじゃなくて、本物のかわいさをくれ、と。

そう言う奴らは、化粧を一生懸命施して変身した女の努力を全否定している事に気付いているのだろうか。

それとも、世の中のかわいく生まれることができなかった女の子に存在価値がないと言いたいのか。


そう言ってるヤツに限ってアイドル好きとか、理想が高い割に自分を磨かない男なんだろうと私は踏んでいる。

結論から言えば、「言わせとけ」というヤツだ。

私達の顔はお前のためにあるんじゃない。

私ならば、このお姫様のように華やかな洋服に合わせるためにある。


しかし、その「偏った意見」を自分に都合よく受け止めて、「男の人ってすっぴんが好きだから」と、化粧をしない女もいるんだから、始末におえない。

そう、今のミハルのように。


「ミハルやい、恋頃ちゃんは私達と違う生き物だってよーく覚えとけ」


私はそう言って焼酎をあおる。


「でもね、ミハル。恋頃ちゃんだって少しはお化粧してるのよ」


さすがに前回のツインテール事件から危機感を感じたのか、知子さんがミハルに弱めにアプローチをかけた。


「だって……お化粧したって……あまり変わらないし……」


ミハルはしゅんと肩をすぼめる。


「じゃあ、お洋服を変えてみるなんてどうかしら?」


知子さんの言葉にミハルはパッと顔を輝かせた。


「それくらい自分で気づけよ……」

「こら、あきな!」


思わず毒づいた私に知子さんの怒声が飛ぶ。


「ミハル、変わりたいって思う気持ちはとっても大事よ。何か困った事があったら私に聞いて」


知子さんの世話焼きスイッチがオンになった瞬間だった。


「は、はい……」


ミハルが目線を反らして頷いた。あ、多分こいつ知子さんの事はアテにしてないな。





秋。9月の中旬、外に出ればすぐ、肌に汗がにじむ。普通に言えば暑い。


秋といえばスポーツやら芸術やらが取り沙汰されるが、私からすれば恋愛の季節だと思っている。

アラタからの連絡はない。

アイツが今どうしてるかは、知子さんには聞かなかった。


でも、おそらく私はアラタの気持ちには答えられない。


というか逆に、あれは告白だったのだろうか。

好きとか言われてもまだ1回しか会っていないし、やっぱり冗談なんじゃないかと思う。

もし違うなら、興味のないフリをした時点でかなり恥ずかしい。


だって、あのアラタだ。うん、そうだ。アラタならありえる。

……1度会って1度電話しただけなのだが、やっぱりありえる。

ありえ……なくはない。


つーか一度告白されただけで何アラタの全部を知ったつもりになってんだよ。バカじゃねーの?

ほとほとこんなお調子者の自分が嫌になる。


ちなみに、喪女達には「アラタの件」は話していない。

口が軽い私だが、ちゃんと秘密にしている。

だって、話したらミハルが嫉妬で爆発したり、知子さんがいきなり小姑気取りを始めたり、恋頃ちゃんが欲しくもないペヤングをくれたりしそうだし。


私は自問自答を続けても答えなんて出ないと判断し、ある人にお知恵を拝借しに行っていた。


シャンデリアの輝くオシャレなバー。

いつものバカ女どもと宴を開いておまけに下品な関西人までついてくる例の居酒屋とはまるっきり雰囲気が違う。


「そうか……あきなちゃんは真面目なんだね」



長く骨ばった指がウィスキーグラスを揺らす。

氷がガラスに当たって、涼しい音を奏でた。


そう、恋の伝道師・パーフェクト・オブ・ザイケメンこと野村 いつき氏である。

最近すっかりパッと出の安田に出番を奪われ気味の空気イケメン・野村 樹氏である。

喪女達のバレンタインを描いた番外編を投稿したので、そちらもどうぞよろしくお願いしまーす。

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