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私がモテないのはお前に言われんでもわかっとる!  作者: 矢御あやせ
第3夜 俺はあきなが好きだ
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空気の読めない女、読めてしまった女

「つまり、あんたらはアラタを私の男だと思った訳?」

げーっと。渋いお茶を一気飲みしたような顔で知子さんが言う。

「そりゃ思うよ。知子さんの弟だよ。絶対童貞こじらせたヤツだと思ったよ。こんな田舎のバンドマンだなんて想像だにしなかったよ」

私は椅子に背を預ける。脱力で、ずるずると身体が降りていく。

アラタは相変わらずニヤニヤ笑いで私たちの反応を楽しんでいた。

愉快そうでよろしいですこと。


「恋人なんてもっと無いわよ。正社員じゃない男なんて絶対対象外!」

知子さんはきっぱりと言ってアラタの背中を叩いた。

私は、この店内に潜む明らかに正社員じゃない男を見る。

安田はこの件にすっかり興味を無くしているようで、熟女の客と楽しそうに談笑をしていた。

「でも、どっちもキツネ顔ですよね。目元が似てます」

ミハルは前のめりになって言う。豊満な胸が今にもテーブルに付きそうだが、ドキドキというよりヒヤヒヤしてしまうのはなぜだろうか。

「ご明答。たまに言われるわ。でもあんま似てないわよ。ウチは三兄妹それぞれ別の道歩んでるの」

知子さんは右手を上げて優雅に振り払う。

そういえば、私は南波家の家族構成を知らない。

長野のご実家が酒造を営んでいるって事ぐらいしか聞いていない。

「長女がこれなのに次女は巨乳で既婚だしな」

「新大は黙ってなさい」

知子さんがアラタをキッと睨む。

あ、きっと知子さんは妹がコンプレックスなんだ。

この話はあんまりしない方のが身のためかもしれない。


「えー、知子さんの妹さんっておいくつなんですかー?」


ってオイ、ミハル!!!

見えてる地雷をどうしてわざわざ踏むんだお前は!!

「21」

アラタが言った。知子さんが言わない辺りからお察しだよ。

「早かったのよねー」

知子さんはニコニコ笑っている。笑っているけどなんか怖い。尋常じゃない程尖ったオーラがにじみ出ている。

ねえやめよ、やめようよミハル。この話は絶対だめだって。

今なら引き返せるからやめておこう?


「……すしざんまい」

ナイス恋頃!!!!!!!

相変わらず意味はわからないけど話を逸らすには十分だ!

「行きたいねー。帰り寄ろっかー」

これは我ながらナイスだ。話の矛先が完全に変わった。

今のタイムリー2ベースで恋頃が三塁に行った。

あとは知子さんが打てばホームインだ。

この際犠打で構わない。「えー、ここで食べましょうよ」的な不平を漏らせば、すかさずメニューを差し出せばいい。

そうすれば話題もすり替わる。

鹿児島のじーちゃんばーちゃん。俺、やったよーーーーー!


「それで、結婚何年目なんですかー?」

おいこらふざけんなミハル!

これで私と恋頃の苦労が水の泡じゃねーか!

何ねじ込んでんだよ。

何ゲッツーしてんだよ!!!

「3年目だよな。デキ婚って奴。高校の先輩とずーっと付き合ってたんだとさ。子供はもう2人居るんだよなー」

「なーっ」てアラタは知子さんの方を向いて笑う。

やめなさい! アンタは知子さんを煽るのをやめなさいッ!!

いいかアラタ。お前が思ってるよりもな、知子さんは悲惨な人生を送っているんだぞ。

こと男に関しては本当に砂漠のような道を歩いてるんだからな。

「ええ、かわいいわよ。あ、写真見る?」

知子さん……もういいよ、ゴールしていいんだよ。

写真があるのにどうして今まで見せなかったの。

わかったから。もうわかったから。

「子供好きじゃないからいいよ、別に」

私はとりあえず気を遣った。まあ無駄だと思うけど。

テーブルに肘をついてミハルを見る。

少女のようにキラキラと目を輝かせていた。

あぁ、悲劇だ。悲劇が始まろうとしている

「見たいです!」

ですよねー。

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