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私がモテないのはお前に言われんでもわかっとる!  作者: 矢御あやせ
第3夜 俺はあきなが好きだ
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開廷・ズルい女裁判

「あ、あの……知子さんって……そんなキャラでしたっけ?」

「は? そんなキャラでしょ。雨に濡れた子犬はほっとけないのよ」


処女がそれを言うか?

っていうか同棲してるならもう処女じゃないのか。中古なのか。

どうしよう。コラムは改題しなきゃだめじゃん。

『処女たちの24時(中古品・傷あり)』にしなきゃじゃん。

おっかしいなぁ。

他はともかく知子さんは死ぬまでネタとして搾り取れるって見越してたんだけどなぁ。


「見そこないました!!」


ミハルがキレた。


「え? 慈善事業よ」


知子さん、それはアソコがガバガバになった人が言うセリフだよ。

アンタ、少なくとも数ヶ月前まで処女だっただろ。海行った辺りではまだアラタと同棲してないだろ。

まさか……私が歩道橋でゲロ吐いて樹さんに拾われたた時から既に裏切っていた!?

っていうか出会った頃から嘘ついていた!?

そそ、そんな訳ないだろ……?

知子さんみたいな大バカ正直が小学校のマラソン大会で「一緒に走ろうね」って言ったくせに華麗に裏切って背中を見せてどんどん遠ざかっていく訳がないだろう!!!!


私あれやるやつ嫌い!

超嫌い!!

知子さんは違うよね?

そんな人じゃないよね?

私の知ってる知子さんは、シャ乱Qの「ズルい女」みたいな奴に裏切られて悔し涙で濡れたグラウンド叩いてる知子さんだよ?

処女にbye-byeありがとうさようならしてないよね?

ねえ知子さん!!


「お、……おか……おか………おかえ……り……」


恋頃は明らかに動揺している。

一口も食べてない角煮をおかわりしようとしていた。

っていうかおかわりだよね?

いいんだよね?


「……なな……中……村……た……剛……也」


ああ、おかわりだ。間違いない、おかわりだ。

っていうか恋頃ちゃん西武の選手とかよく知ってるね!!!

タイムリーを知らない癖におかわり君は知ってるんだ!!!


とりあえず落ち着け。

素数を数えろ。

ヤったか聞くんだ。

すごいな知子さん、どうやったんだ?

これでいい。

きっと、いたずらっぽく答えてくれるはずだ。


「あらあら……アラタくん? えっと、アラタさん? あの女の人とは仲良し?」

ミハルがおっとり年上キャラみたいな口調で言った。

っていうかミハル、露骨に知子さんと距離取りすぎだってば。

アンタ、さてはマラソン大会の後に裏切った子と口聞かないタイプだろ!!


「知子と? え、フツーにいいけど」


アラタは嫌に目につく金髪の先をいじりながら言う。


「やめなさいよアラタ」

「いいじゃん、知子」


名前で呼び合ってるよ。

ラブラブだよ。

ヤるヤらないとか聞く間もないわ。

絶対ヤッてるわ。

こいつら……10回セックスした後にエンヤ聞いてるわ。

昔木更津キャッツアイで塚本高史が言ったセリフだけど、子供の頃は宮藤官九郎の妄想と偏見だと思ってた。

でも、知子さんはエンヤ聞いてそう。

肌寄せ合って癒されてそう。


私とミハルは絶望の淵に落とされた。

あの恋頃すらも、衝撃は隠せていないようだ。

カップル以外の参加者の目から暗い影が落ち、楽しい飲み会がお葬式のようになる。

いや、違う。葬式なんかじゃない!

私はドン、と机を叩いて立ち上がる。

すぐ近くのテーブルに立っていた安田がこっちを向いて迷惑そうな顔をした。


「どうしてここに男連れてきたの!! 回答次第では火焙りだよ!!!」

これは魔女裁判だ!!

「いっそ今殺ります」

落ち着けミハル。

「……薄汚いUFO派め」

恋頃さんも落ち着いて。

それは多分ミハルの悪口だよ。


「まぁ、家族だし。あんたらのこと話したら会いたがったのよ。コイツが」

と言って、迷惑そうに知子さんはアラタの額を小突く。

家族!?

っていうかなんて親密なコミュニケイション!

「見せたいだけじゃん」

「まあ……それも少しはあるわね」

認めた!?

知子さんが認めただと……!?

この絶壁ツンデレアラサー女をデレさせるってどんだけだよこの男!!!

知子さんの隣に腰掛ける、ふてぶてしさ全開の小さな男が急に偉く見えてきた。


「自慢ですか!! 他人がコミケに落ちるとそんなにご飯がおいしいんですか!!」

ミハル、責めて私たちにわかる例え話にして。

「……CoCo壱行きたい」

恋頃は多分逃げたいと思ってる。

恋人と断定した段階で居づらさ全開なんだよきっと。

でも絶対逃がさないかんな!!!!

私は自分の身を犠牲にしたっていい。絶対にてめぇの足かせになってやる!!!

手枷はミハルに任せた。

この女はおそらく私以上に憎悪を膨らませているに違いない。


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