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私がモテないのはお前に言われんでもわかっとる!  作者: 矢御あやせ
第1夜 イケメンとセックスしちゃったかも!
14/44

処女たちの24時

「丘崎さん。僕は君に惹かれて。ココに来てしまった」


「はいぃ?」



杉下右京出てきちゃったよ。


いくら人生の相棒ができたからって私浮かれすぎじゃね?


(竹天)とか言ってた頃が懐かしいわ。


スマンな、ミハルはじめ処女ーずたちよ。


私は先に行かせて貰うぜ。


その前にもう1回、ダメ押しでオナシャス!!!!!



「丘崎さん。僕は君の文章に惹かれて。ココに来てしまった」


「ありがとうございます」


そうか、この人は私の文章に惹かれて……


って



「はいぃ?」



再び杉下右京。

Season2。


今なんつった?


いや、難聴とかじゃなくてマジで。


「今、何と?」


「何度も言わせないで欲しいな。……この日記」



彼の手にあるのは私の日記。



飛んだあああああああ!!!!!!!!!!!!!


恋の特別快速急行が空を飛んだあああああああ!!!!!!!!!!!!!!


つーか日記グシャグシャじゃね?


明らかに水濡れじゃね?



「ゴメン、訳あって開かせてもらったよ」



訳ってアレ?

この日記帳がグシャグシャなのも……アレ?


もしかしてゴメンするの私の方じゃね?

グシャグシャになるべきなのは私じゃね?


「なかなか面白いものを書くね。日付は飛び飛びだけど。キミの書く文字はとてもイキイキしてる」


「はぁ」


「夢中で読んでしまった。キミは。キミの文章は僕を放そうとしないんだ。おかげでその日は寝不足だったよ」


クスリ、とイケメンは笑う。


「特にキミの友達の話が良かった。いい子たちばかりじゃないか。君の事をよく理解していて。ぜひ一度会ってみたい」



アレ?


もしかしてこれ


褒められてるの私じゃなくね?



つーか「キミは。キミの文章は僕を放そうとしないんだ。おかげでその日は寝不足だったよ」ってなんだよ。


誰かこの時の登場人物の状況を300文字以内で述べてくれよ!!!!


傍線Aで出題してくれよ!!


つつつ、つまりその



「私、アナタと、セックス、してない?」


「? キミの世話なら僕の彼女が」



彼女いたあああああああああ!!!!!!!


いきなり新キャラきたああああああ!!!



「面倒見がいい子だからね。キミを発見したのもあの子だった」



マジかよ、アベックに介抱されたのかよ!!!


とんだ人魚姫じゃないか!!


海は海でもゲ□の海からやってきたんだけどな!!!!!



「はぁ、ありがとうございます」


「僕はキミの荷物の担当」


「申し訳ございません」



私は構えた。


いにしえより伝わりし伝統芸能、土下座の構えだ。



「そういった訳で。キミにお願いしたい事があるんだ」


「はぁ?」



彼は私の耳元に顔を近づけ、耳を食むように優しく、こう呟いた。



「処女なんだね、キミ」


顔にみるみる血が登っていくのを感じる。


あ、この人イケメンだけどデリカシー無いわ。



そしてイケメン、ドロー。


愉悦でも諭吉でも一葉でも漱石でもない。



オトナのアイテム、名刺。



「僕を、君と友達の物語の読者にさせてくれないか?」






『野村 樹』



それがこのイケメンの名前だった。








「と、いう経緯がありまして来月から月刊西東京にてエッセイを書くことになりました」


「それがあきなちゃんの処女喪失の経緯?」


「うんっ。処女作喪失ですよっと。あ、アッチは処女のままだよ。テヘッ」


「大体イケメンって何よ。盛ってるんじゃないの? やっぱぼんなんでしょ、ぼん」


「ぼんじゃねーっつってんだろ!!! つーか梵じゃねーよ!!! ほら、こないだ言ったみたいな万人ウケするかんじのさ」


「スネイプ先生ですか?」


ミハル、どの層を万人集めたらそうなるんだよ。ハーマイオニーと比べたらあんなのチリだよチリ。


「似てる芸能人教えなさいよ。判定するから」


「だから向井くんだって!!」


「絶対嘘よ!!!!!!」


「むかいり? むかいり?」



恋頃、よーく覚えとけ。あの理はおさむって読むんだぜ。


「ちなみに仕事は樹さんを通すのぉ~ウフフフフ。あ、また樹さんからメール。いやーん、あきな困っちゃう」


「……」



何?


皆怖いよ?


どうしたの?



「ぬぁにが処女喪失よ、このばか女!! あんたの思い込みの激しさにはうんざりなのよ!!!」


南波知子(29)、大手出版社……の派遣社員。



「その月刊西東京って……タウン誌でしょ? チンケなやつ」


坂入ミハル(25)、NPO事務員。



「ペスカトーレ……おかわり」


山崎恋頃(20)、食べているのはバーニャカウダ。




ようこそ、女達の楽園へ。



魔都・新宿の21時。

人通りも少なくなった西口の居酒屋。

月に4回、私たちは会合を開く。



齢は20代。

生業はバラバラ。

男子絶対禁制のアマゾネス。



私たちの仲間になるための条件はただ1つ。





それは――



私は原稿を忍ばせたファイルをそっと撫で、人生の新たなステージに胸をときめかせた。


今まで残念ばっかりだったけど、これからはきっと違うんだ。



コラムのタイトルは既に決めている。


それはね――



『処女たちの24時』



(第一夜・完)

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