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異世界で唯一の男魔法使い  作者: 木林森
最終章 夏の夜の狂乱
55/58

 温かい。

 最初に感じたのはその感覚だった。

 次第に意識がはっきりしてくるにつれ、感覚が次々と蘇ってくる。

 あるのかないのか分からないほど軽くて柔らかくて温かい何かに包まれ、少し右脇腹のあたりでその感触が突っ張っている。

「う、あう、あ……」

 目を少し開けると、白いカーテンの隙間から、窓を通して柔らかい日差しが差し込んできているのがわかった。

 天井は白く、穏やかな感じだ。

 気持ちいい。この軽いのに、柔らかくて温かい感じ……まるで天国のようだ。

 天国……俺は死んだのか?

 どうにも記憶があいまいだ。飛龍の口に飛び込んで、そこで魔力を解放したのは覚えている。

 そこで、最終的に魔力も尽き、体力も限界だったので気絶でもしたのだろう。

 確か、体内の魔力が一定量なくなると三途の川で奮闘する羽目になる……と綾子さんが言ってたな。

 じゃあ、ここは天国か? こんな気持ち良くて、温かい場所だ。そう言われても違和感はない。

 それに、もう寝て起きたら異世界でした、って体験をしているんだ。天国や地獄があっても不思議ではない。

「……知らない天井だ」

 自分を落ち着かせるために、もはや様式美となっている冗談を口にする。

 そして起き上り、あたりを見回す。

 部屋に見覚えはない。ふと脇腹あたりの突っ張ったような感覚が気になってそちらを見てみると……


 そこには、美しい天使がいた。


 輝くような少しふわりと癖がついた長い金髪、少し開いた、花弁のような可憐な唇に白い肌。そして、その芸術品ではないかと思うほど整った顔立ち。

「……天使?」

 そう、まさに天使。そんな天使が、床に女の子座りをして、ベッドを枕に手をついて寝ていたのだ。まるで、看病していたら思わず寝てしまった時のように。

 ここが本当に天国に思えてきた。

 このあどけない、それこそ天使のような寝顔。いつまで見ても飽きなさそうだ。

 ――って、

「クリスタ?」

 そう、そこで無防備に寝ていたのはクリスタだった。見惚れてしまった自分に気恥ずかしさを覚え、それを吹っ切るように首を思い切り振る。

「いだっ!」

 瞬間、首筋を中心に全身に激しい痛みを感じた。よく見てみると、左腕は布と硬いもので固定されているし、体にも何かを巻きつけられたような鈍い感触がする。

 痛みを感じると言う事は、夢でもない。ここが天国だとしたらクリスタも死んだと言う事になるから……その可能性は無理矢理却下だ。

 となると、俺は……

「……生きてた?」

 ……ということになるのだろうか。

 それにしても……腹減ったな。なんか頭痛もするし、体調はあまりよくなさそうだ。

「そうか、俺……生きてたのか……」

 そんな実感が、心の奥底から熱い泉が沸いてくるかのように上がってくる。ジーン、と熱いものを感じ、思わず目頭が熱くなる。

 そして、俺が生きていて、目の前でクリスタが可愛らしく寝息を立てて眠っているということは――クリスタも生きている、ということだ。

「……う……ふぁ……」

 目頭を押さえていると、俺がもぞもぞ動いていたせいか、クリスタが眠そうに体をもじもじとくねらせる。そして、閉じられていた目蓋がゆっくりと開けられ……アイスブルーの瞳が現れる。

「よう、おはよう」

 努めて軽く、学校で会った時のような挨拶を交わす。

「…………」

「…………」

 お互いの視線が交錯する。クリスタは寝ぼけ眼、俺は歯をキランと見せる爽やかな笑顔(自称)。沈黙が場を支配する。聞こえるのは、心臓の音と、外で鳥が鳴く音だけだ。

「……ヨウスケ……?」

「おう、洋介だ」

 クリスタは寝ぼけ眼のまま首を傾げ、俺の名前を口から漏らす。それに俺は、またも軽く返す。

「…………ヨウスケ!?」

 少しの沈黙の後、クリスタは目を見開き、体をのけぞらせて顔を真っ赤にしながら俺の名を叫んだ。

「め、目が覚めましたの!? それともこれは夢ですの!?」

 クリスタは混乱したような上擦った声で叫びだす。こちらでも文化は変わらないようで、頬を引っ張って確認していた。

「ヨウスケっ!」

 そしてクリスタは、そのままガバッ! と跳び込んできた。衝撃によって体に結構な痛みが走るが、それを我慢して受け止める。

「ヨウスケ! ヨウスケ! 心配しましたのよ! あんな無茶して! 飛龍の体内に飛び込んで魔力を全部解放するだなんてっ!」

 俺の胸に顔を押し付け、少しくぐもった、湿った声でクリスタは心の底から絞り出すようにそう言った。

 胸に、温かくて湿った感触がする。これは多分……涙だ。

「ヨウスケ! もう、一人で背負いこまないで! 自分だけ犠牲になるだなんて言わないで! もう――私から離れないで!」

 普段の気取った話し方ではなく、子供のように本音をさらけ出したような、駄々をこねる様な話し方だ。その話し方によってクリスタが完全な本音で話しているのだと実感し――申し訳なさと愛おしさが沸き上がってくる。

「そうか……済まなかったな、クリスタ」

 俺は自然にあふれてしまった優しい声でそう言いながら、クリスタをあやすように髪を撫でる。さらり、と何の抵抗も無く指が滑る。一撫でするたびにラベンダーのような匂いが舞いあがり、俺の鼻腔をくすぐる。髪の毛は、舞い上がるたびにキラキラと朝日に反射する。

「生きてて……良かった……っ!」

 クリスタは小さな声でそう言って、あとはひたすら体を震わせ、しばらく嗚咽を漏らし続けた。

 その間、俺はずっとクリスタの頭を撫で続けた。……クリスタの行動を見て気付いた。俺は、とても自分勝手な事をした。あれをやらなかったら被害は広がる一方だったから後悔はしていないが……反省はすべきだろう。

 クリスタを慰めるように、俺はここにいるぞ、と語りかけるように、俺は頭をゆっくり撫で続ける。

 こうしてクリスタと触れることで……お互いに生きている、と認識できた。


                 ■


「ん、コホン、んんっ」

 しばらくして、落ち着いたクリスタは、俺からバッ、と勢いよく離れた。目の下も赤くなっていたが、それ以上に頬が真っ赤だ。気恥ずかしかったのだろう。

「……それで、どこか悪いところはございません?」

 チラッ、と顔を見てはすぐ目を逸らし、という落ち着かない動作を繰り返しながら問いかけてくる。

「んー、なんか体中が痛いし頭も痛い。それに腹減った」

 俺も同じく気恥ずかしさを覚え、そっけなさを装ってシンプルに答える。クリスタの視線は、どうにも俺の顔の中でも下のあたりに多く向けられている。何かついているのだろうか。

「……空腹なのは元気な証ですわね」

 ジト目をしながらクリスタはそう言った。

「考えてみりゃそうだな。案外元気だ」

 俺はクリスタの視線が気になり、口元を右手で探りながら答える。

「まぁそう言うなら、準備してくるのでしばらく待ってほしいですわ」

 クリスタがそう言い残してドアに向かおうとした瞬間、ドタドタドタ! と激しく足を踏み鳴らしたような音が廊下から響いてきた。

「物音がしたけど何!?」

「非常事態!?」

 バンッ! と勢いよくドアを開けて現れたのは、シエルとルナだ。その顔は真剣そのものだったが……俺に視線が映った瞬間、鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。

「よ、おはよう」

 俺を見てぽかんと呆けている二人に、またもや軽く挨拶してみる。

「「ヨウスケ(君)!?」」

 ……また説明が要りそうだ。


                 ■


 二人が落ち着いてきたところで、情報交換と相成った。飯はしばらくお預けになりそうだ。

「そうか……三日も寝ていたのか……」

 どうりで腹が減って気だるいわけだ。三日も寝っ放しだったらそりゃあそうなるな。

 ここは、どうやら学園から少し離れたところにある綾子さんの屋敷らしい。この世界に舞い込んだ時とは別の部屋だな。

「やぁ、おはよう、洋介君」

 この屋敷の主の綾子さんが、落ち着きのあるハスキーボイスで気軽に挨拶をしてきた。声がした方を見ると、そこには綾子さんがあの魔女スタイルで悠然と立っていた。

「あ、おはようございます。――って明らかにおかしいだろうが!?」

 一瞬何の違和感もなく素で挨拶を返してしまった。

 いやいやいや、廊下の足音も聞こえなかったし、ドアが開く音もしまる音も聞こえなかったし、そもそも気配すらしなかった。もう何かいろいろ突っ込みどころ満載だ。

「お、おおおおおおおはようございますわ!」

「ほ、ほほほ本日は御日柄もよく!」

「おはひょうございまひゅ!」

 三人は慌てて綾子さんに挨拶を返すが、揃いも揃って滅茶苦茶テンパってた。そりゃあそうなるわなぁ。殿上人ともいえる人がいきなり現れたんだもん。

「まぁまぁ落ち着け君達。……まぁ、こうなることを狙っていたわけだが」

「場の収拾が大変だからやめてくれませんかねぇ!?」

 ダメだ。この人といると突っ込み役に回ってしまう。

 綾子さんはセミロングの黒髪を掻き上げ、メガネを懐にしまって歩み寄ってくる。

「まったく、君はとんでもないことをしてくれたよ。まさか狂乱状態だとはいえ飛龍を倒してしまうなんてね」

 綾子さんはそう言って、我が物顔(実際綾子さんのものなわけだが)で椅子にドカリと座って足を組む。その仕草も、雑に見えて洗練されていたから恐ろしい。

「緊急連絡を受けて巨人の峡谷タイタンズ・キャニオンからおっとり刀で駆けつけたのだが、さすがの私もあの距離だと丸一日はかかってしまってね。連絡役の教師から逐一報告を受けていたが、いやはや、心臓に悪かったよ」

 巨人の渓谷から単独移動で一日って……。揺れなくて速度が出る王宮御用達の馬車ですら一ヶ月は架かる距離だぞ?

「飛龍が出たとか聞いた時点でもうダメかと思ったが……私の予想通り、君はとんでもない器だったようだね」

「そりゃあありがとうございます」

 おい、ちょっと照れくさいじゃないか。

 俺はそれを隠すためにそっけなさを装う。

「ふふふ……さて、事の顛末のお話といこうか」

 綾子さんはそう言って、懐から書類を数枚取り出した。

「今回の騒動についてのまとめだ。まず、黒幕は男性権利主義集団を名乗る阿呆どもだ」

 そう言って一枚の紙を放り投げてくる。そこには名前と略歴が羅列されていた。有名な貴族の名前もある。

「動機としては、どうにも私が邪魔だったようでね。かといって、私に直接妨害など出来ないから、遠くに行っている隙に騒動を起こしたわけだ」

 綾子さんは苦々しげな表情をつくり、吐き捨てるように言う。

「私がいろいろ有名になったせいで、最近魔法主義の思想が全体的にものすごく強まっていてな。貴族の男はその煽りを食らって立場がどんどん下がっているのだ。国王の奴にそれに歯止めをかけるよう進言してはいるが、あいつも大分苦労しているようだな。で、今回は私が経営しているこのマギア学園に的を絞ったわけだ」

 綾子さんはそう言うと、もう一枚紙を投げてくる。

「今回の集団狂乱状態の理由は、その組織に加担していたマッドサイエンティストが原因だ。なんでも、割かし楽に作れる『魔物を狂乱状態にする薬』……通称狂乱薬が秘密裏に開発されていて、それをこの一帯の魔物の生息地の水源なんかに撒いていたわけだ。そうすれば一気に狂乱状態が広がる。人体には無害のくせ、効果はものすごく強力で、一瞬で広まったんだな。巨人の峡谷での集団狂乱事件もそれが原因だ。実験がてら、私を遠ざけようとしたのだろう。また、飛竜や飛龍はそれを直接飲まされたっぽいな」

 紙にはそのマッドサイエンティストの略歴と、狂乱薬の詳細が記されていた。

「ちなみに、ごうもゲフンゲフン尋問の結果、闘技大会の飛竜乱入事件もこれが原因だ。この時から計画は動き出していたんだな」

 うん、綾子さんは噛んだだけ。拷問とか言いかけた気がしたけど気のせい気のせい。

「あのことが……ここに関わってくるなんて思いもしなかったですわね」

 説明の間に理性を取り戻したクリスタが、深刻そうな表情で呟く。

 確かにそうだ。まさか、あのことが今回の件に絡んでいたとは……考えてみればぴったり符合するが、いかんせん考える余裕がなかったな。

「でも……狂乱状態になってなんでここを真っ直ぐ襲いますかね?」

 そう、それが今回の最大の疑問だ。

「ふむ、確かにそれは気になるところだろうね」

 綾子さんの言葉に、三人とも頷く。

「どれ、たまには先生らしく授業っぽく進めようか」

 俺たちの反応に興が乗ったのか、綾子さんはもったいぶった口調でそう言いだす。

「まず、魔物の性質についてだ。……魔物は、本能的に縄張りの覇権を狙っている。これについては分かるね?」

 四人で同時に頷く。

 普段はあまりないが、狂乱状態になると、下手をすればそのあたり一帯が更地になるほどの争いを魔物同士ですることがある。狂乱状態でより凶暴な本能に忠実になり、覇権を奪おうとするのだ。

「また、魔物はより本能に近い生物のせいか、動物全てに見受けられる習性、刷り込み――インプリンティングを理解しているんだ。これについてはまだ研究段階だが、大体の研究機関でも概ね証明されているから、そのうち教科書にも載るだろうね」

 うん、刷り込みか。テレビで何回か見たことがある。本能として、生まれて最初に見たものを母親として認識するとかいうやつだな。

 三人が首をかしげているため、その説明を無声音で伝えてやる。

「さて、では少し話が変わるが……副学園長のイザベラが『戦技無双』と呼ばれるまでの由来は知っているかい?」

 突然変わった話に困惑する。しかもその話は聞いたことがない。

 三人は知っていた様子だった。代表してクリスタが答える。

「確か……イザベラ先生が立ち寄った街の周辺で、偶々集団狂乱が起こって魔物が大挙して街に押し寄せて……先生一人で撃退した、と聞き及んでいますわ」

 すっげぇ。マジかよ。あの人が凄いのは知ってたけど、そこまでだったのか。

「正解。じゃあ……狂乱状態になって、何で街に押し寄せたのか分かるかい?」

 さらに問いかけられて、さすがの三人も分からない様子だ。

「その街の中にね……裏ルートで買われた魔物の卵があったんだ。買った本人はもっと別のものだと思っていたらしいが……それが、竜種である『牙竜の卵』だったんだよ」

『……っ!』

 ここまで言われて、やっとわかった。クリスタ達も分かった様子で、口を押えてはっとしている

「じゃあ、狂乱状態で本能に忠実になった魔物たちは……その卵を奪って、自分たちで孵化させることによって強大な力を手に入れようとした、ということですか?」

「正解だ。刷り込みを利用して、強大な力を手なずけようとしたのだろうね。全く、魔物は奥が深い。あの面倒くさがりのミーシャが唯一真面目にやるわけだ」

 俺の回答に、綾子さんが笑顔で返事をくれる。

「じゃあ……今回も、学園のどこかに魔物の卵が?」

 シエルが敬語も忘れて、呆然とした感じで問いかける。

「そんな……いつのまに……?」

 ルナも同様に、困惑した感じだ。

「そう……今回この学園に仕掛けられていたのは――」

 最後の紙を、こちらに放り投げる。

 そこに書かれていたのは――


「――『飛龍』の卵だったんだ」


 ――飛龍の卵の資料だった。


「……闘技大会の時、外部の人物を割と学園内を自由に移動できるようにしている。許可が下りた者しか学園内には入れないが、逆に下りた者は校内を自由に出歩ける。持ち物検査なども実施していないから、この時に運び込まれたのだよ。……範囲が広い分、変換効率阻害は段階的にしか上げられないマギディストラクションと一緒に、巧妙に隠されていた」

 綾子さんが悔しげに奥歯を噛み締める。

「これに関しては完全にこちらの管理ミスだ。改めて、各方面に誠意をこめた謝罪が必要になる。……当然、君たちにもだ。……済まなかった。それと、君たちは防衛戦で大活躍だったそうじゃないか。そのあたりも踏まえて、お礼も言わせてくれ。ありがとう」

 いつもと違った、真剣なトーンで綾子さんは深々と頭を下げる。

 頭を上げてください、とかは失礼にあたるのだろうか、三人とも真摯な表情でそれを受け止めて、あとは黙るだけだった。

「……今回の後始末は、徹底的にやるつもりだ」

 頭を上げ、低い、唸るような声で綾子さんがそう言った。その眼に浮かぶのは――怒り。

「……いや、それは今話すことではないか」

 だが、綾子さんがそう言った瞬間それは霧散した。飛龍よりも恐ろしいオーラが発せられていたが、そんなのは最初からなかったかのように空気が軽くなる。

 ただ、俺たち四人は冷や汗を流していた。

「洋介君。可愛い女の子三人に囲まれているところを邪魔して悪かったね。それじゃあゆっくり鼻の下を伸ばしていたまえ」

 綾子さんは、そういって颯爽と部屋から出て行った。――特大の爆弾を落として。

「おーけい落ち着け。俺は怪我人病人病み上がりで弱ってる。さすがにこの状態で暴れられたら、せっかく死守した命が無駄になる。そんなのだけは避けたい。

「「「…………」」」

 しかし、三人の反応は予想外だった。

 三人とも、照れたように顔を真っ赤にし、こちらをちらちらと伺い見てくるのみだ。

 え、えーと、なんですか、その反応? え、ちょ、その新しい形は反応に困るって。

「そ、その……っ!」

 クリスタが意を決したように切り出した。瞬間、場の緊張感は一気に高まる。

 ドクン、ドクン、と心臓の鼓動が、やけに大きく聞こえる。

「ヨウスケはっ……」

 口の中が渇いてくる。そのくせ、やけに飲み込みにくい唾が口の中に湧き上がってくるため、それを飲み下す。

「私たちを……そんな目で見ていらしたの……?」

 クリスタの問いかけが終わった瞬間、場の緊張感が最高潮に達した。

 いまや、呼吸をするのすら難しくなっている。

 クリスタの質問は、当然俺に向けられたもの。

 そう――この緊張感から先の展開は、俺の答えによって大きく左右される。

 鼻の下を伸ばしていた、とまではいかないが、美少女である三人を見て少なからず眼福だったのは認めよう。けど、そんなこと言ったらもれなく、下手をすれば飛龍より恐ろしい三人に命を刈り取られる。

 そう、ならば、一番無難な答えが必要だ。


「そ、そそ、そんなわけないだろ!」


 いかん! テンパってしまった! むしろ嘘ついていて、『それの逆だぜ!』と告白しているようなもんじゃねぇか俺のバカ!

「へぇ、そう……私には魅力がない……あんなことまでしたのに……」

「そうなんだぁ……ボクはそぉんなにダメなのかなぁ……?」

「やっぱり大きい人が好きなの、ねぇ? 小さいのは嫌い?」

 しかし、三人の行動は予想とは違った。

 普通の激昂が赤だとしたら……そう、その怒りは青。静かなる、腹の底からじわりと湧き出る怒りだ。

 しかも、どうにも俺が嘘をついているとは思っていないっぽい。だが言動は全く持って意味不明。


 ――魔力が練られる気配がした――っ!


「ここではやめろぉおおおおおおお!」


 俺は全力で、魔力の壁を展開した。


 ――幸い一発も被弾しなかったが、その後三人は怒って部屋を去り……俺は食事にありつけなかった。

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