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異世界で唯一の男魔法使い  作者: 木林森
最終章 夏の夜の狂乱
53/58

「ああもうくそ! 全然数が減らねぇ!」

 俺は魔力の弾丸による弾幕を前方に撃ち込み、迫りくる魔物の群れを屠る。だが、また後続がすぐに表れてきて、休憩する暇も無くまた弾幕を撃つしかない。ひたすらそれの無限ループが、かれこれ一時間は続いていた。

 今や他の魔法使いはほとんどが魔力切れを起こしかかっていた。完全な魔力切れになると命を左右するため、仕方なくある程度残して前線から退かざるを得ない。

 魔力の属性変換効率の悪さは、今や五〇パーセント以下だ。同じだけ魔力を変換しても、いつもの半分の量しか魔法に使える魔力は練れないのだ。

 最初から前線に出ていた人のほとんどは、魔力が少なくなってダウンしていた。

 今動けているのは、変換阻害の影響を受けない俺、魔力量が飛びぬけて多いクリスタ達三人を筆頭にした生徒や先生(生徒会長もここに分類される)、それに魔法と武器を併用して戦うタイプの人のみだった。ほとんどが魔法のみで戦うため、全体的にダウンしている人は多い。

 運悪く、俺の周辺はダウンしている人が多かった。また、ダウンしていない人もいつそうなるか分からないため、俺は一班分だけでなく、周りの二つも含めた合計三班分の範囲を守っていた。

 もはや、いつ防衛線が抜かれてもおかしくない状態だった。また、連絡によるとエフルテ方面は防衛があらかた片付き、あと十数分で第一陣がここに着くらしい。あと十数分だけ耐えればいいと思うべきか、はたまたそんなに耐えるのか、と思うべきか。

「いい加減疲れてきたぞ……!」

 俺は規格外の魔力量を持っているらしい。事実、今まで自分の中の魔力が減る感覚など味わったことがないが……今はそれを実感していた。絶え間なく体の中からエネルギーのようなものが消費されているのだ。実感できないわけがない。

 今の俺の魔力は残り五割ほど。一割を切ったらレッドゾーンになると言われている。

 より消費が少ない倒し方を考えながら、魔物を次々と葬る。進路を塞ぐような倒し方をするものの、第一渾沌の魔物たちなだけあって、数回同じことをしたら狂乱状態にもかかわらず学習され、通用しなくなった。

「くそっ!」

 悪態をつきながら、腹立ちまぎれにホブゴブリンの集団の心臓を一発ずつの弾丸で正確に打ち抜く。だが、今度はそれを超えて動く骨の魔物であるスケルトンがわらわらと出てくる。スケルトンは、他の肉体を持った魔物と違い、全体をある程度破壊しつくさないと再生するため、今の状況ではかなり厄介だ。

 ふと三人を見てみると、危険を顧みずに柵の外で戦っていた。ちょうどあの辺りから変換阻害の効果はなくなっているが……防衛側で、遠距離攻撃手段を持っているにもかかわらず、堅牢で高い柵から出て物量で押し切ろうとする集団に向かうのは、かなり危険な事だ。だから他の人たちもやらなかったが……今はなりふり構っていられないようで、三人の様子を見て、まだ動ける教師や生徒会長が柵を乗り越えて魔物の群れと対峙し始める。

 俺は阻害の効果を受けないうえ、三つの班分の範囲を補っているため、あまり前に出るのは良くない。よって俺は現状の位置から魔物たちを屠っていく。

『騎士団と冒険者の第一陣の方々が到着しました! 各班合流次第交代して休憩をはさんでください!』

 指示を出すイザベラさんの声にも力が入る。

 よし、到着したなら大丈夫だろう。戦闘のプロである騎士団や、この状況に派遣されるほどの強力な冒険者ならかなり活躍してくれるはず……!


『――みなさん一斉に耳を塞いでください!』


 安心しかけた直後、何かに驚いたような声を上げたイザベラさんから不可解な指示が出される。

 それをただ事じゃないと思い、迫りくる魔物を無視して耳を塞ぐ。

 直後――


『ギャオオオオオオオオ!!!』


 ――世にも恐ろしい咆哮が響き渡った! それは根源的恐怖を呼び起こすような咆哮で、その大音量から、目玉は飛び出しそうになる、口から臓腑が吐き出されそうな感覚がする。

 ビリビリビリ! と肌や骨、脳を揺さぶるような振動は、周辺の魔物たちにもパニックをもたらしていた。

 この咆哮は聞き覚えがある。けれど、遠くの方からとはいえ……『複数』聞こえたぞ……?

 嫌な予感を胸に、空を見上げる。

 そこには――翼を広げた、ゴツゴツした鱗を持つ巨大な白い影……飛竜が、『十体も』いた。


                 ■


『飛竜が十体現れました! 生徒は即座に校舎内に避難してください!』

 イザベラの声が響く。そうなると迫りくる魔物を校内に侵入させることを許してしまうことになる――が、イザベラはこれに近い予感はしていたため、既に防衛戦が崩れた時の対策は打ってあった。

 ポケットから水晶玉のような拳大の透明な球を取り出し、そこに魔力を流し込む。すると、学園の外側を覆っていた柵が光を放ち、触れる魔物を焼き払っていく。

 これは綾子がこの世の中でも特に危険な魔物がひしめく古代遺跡で見つけてきた古代遺物(アンティーク)だ。綾子はこれをパソコンのプログラムに因んで『ファイアウォール』と名付けた。

 これは指定された壁状の物に魔物が触れた場合、即座にその魔物が燃え上がる、というものだった。

 欠点としては、壁状のもの限定であるため、上空が守れない事、そして効果時間が五分しかないことだ。そして、一度発動したらあと数カ月は発動できないことも挙げられる。

 これは最終手段だったわけだが、さすがに生徒を飛竜と戦わせるわけにもいかないし、その戦いの中に晒すわけにもいかない。

『教員と騎士、冒険者の方々は飛竜を即時排除してください! 戦い方は任せますがなるべく学校の敷地外で戦う事をお勧めします! それと――飛竜の排除には私も参加します!』

 瞬間、周りにどよめきが広がる。飛竜が放った『狂乱の大音声(パニックボイス)』によって恐怖に押しつぶされた者たちも、その一言で再起する。

 これこそが――この世で『二番目に強い魔法使い』と言われているイザベラの力だった。

 四体の飛竜が、校舎を目指してイザベラの近くを通り過ぎようとする。

 途端――飛竜は、それぞれ、暴風に晒され、水の刃に傷つけられ、大岩に頭をぶつけ、業火に巻かれた。

「環境は酷いものですが――校舎には指一本触れさせません」

 もはや変換効率が三〇パーセントにも満たない状況の中――メガネをはずして放り捨てたイザベラは、飛んでいる飛竜に対して四体同時に明確な傷を刻んだ。

「さぁ、来なさい。――環境が悪かろうと、アヤコお姉さまの妹である私は負けません」

『戦技無双』の二つ名を綾子から与えられた、『世界で最強に最も近い魔法使い』が動き出した。


                 ■


「イザベラ先生はああいうけど――ままならねぇな!」

 俺は上手く耳を塞げ、恐怖に押しつぶされることも無かった。クリスタ達三人や生徒会長、それに先生たちは無事だったが、後は全滅だった。

 イザベラ先生の参戦宣言で動けるようにはなったものの――飛竜の動きは俺たちにとって都合が悪いものとなる。

 四体はイザベラ先生が、一体は先生たちが、一体は騎士と冒険者の連合チームが相手する形になっている。安全にもかかわらず、まともに魔法が使えないせいで学校の敷地内での戦闘は厳しいものとなる。自然、先生や騎士と冒険者連合チームは魔物溢れる外で戦うことになる。また、それぞれはこれで手一杯だ。

 では、残りの四体はどこへ? 誰が相手するのか?

 これに関しては、恐らく俺たち四人は運命を呪ったはずだ。

 とっさに三人の様子を見た俺は、自分の状況と重ね合わせ、思わず同情した。

 一体は俺の目の前に、また一体はクリスタの前に、さらに一体はシエルの前に、最後の一体はルナの前に――それぞれ、恐ろしいほどの偶然で、飛竜は舞い降りてきた。

 舞い降りてきたまでは偶然だろう。だが、えてして野生動物というのは――最初に目を合わせた獲物と戦うものだ。もう、俺たちは飛竜にロックオンされている。

 周りの救援は期待できない。そう――俺たちは、せめて腰が抜けた生徒たちが避難し終えるまで、『飛竜をひきつけなければいけない』状態なのだ。生徒会長は後で加勢すると言っていたが、生徒の長として避難誘導に加わらなければならない。

「くそ、嫌になるな」

 まさかのここに来て大量の飛竜。しかも普通の魔法はほぼ無理、全体的に疲弊している、そして原因不明でいつ終わるかわからない。……あまりにも酷すぎる。

「ギャオッ!」

 血走った目でギョロリと睨み、大きな口からダラダラと垂らして叫ぶ。

 その姿は、まさに『狂乱』と呼ぶのにふさわしいものだった。

「一体なんでこんなことになったんだろうな……」

 俺は高速で移動し、襲い掛かってくる飛竜を柵の外に誘導する。滅茶苦茶に爪や牙や尻尾で攻撃してくる飛竜は、自然周りの弱い魔物たちを虐殺していく。

 そして、俺を追って移動していくうちに、周りの魔物のほとんどを殺していた。

「グルォラ!」

 いつまでも捉えきれないことに業を煮やしたのか、飛竜は一声叫ぶと――大きく息を吸い込み、胸を何倍にも膨らませる。

 来るぞ――『狂乱の大音声(パニックボイス)』!

 俺はそれに合わせ、手のひらを中心に実体化させた魔力を伸ばしていく。

「ギャ――」

「うるせぇ!」

 そして、恐怖に陥れる咆哮を放とうと、『口を開けた瞬間』、俺は実体化させた魔力をその中に『突き刺した』。

 体を、魔力で出来た槍が、柔らかい内側から貫通する。その光景は、前にも見たことがある。――そう、闘技大会の時だ。

 喉を貫いたため、それ以上の大音声は放たれる事はない。

 そのまま、飛竜は――体から力が抜け、ドウッ、と低い音を立てて地面に倒れ、動かなくなった。

「一度成功しているんだ。二度目も成功しないとな」

 俺は飛竜の死体を見下ろし、そう呟いた。


                 ■


「くっ!」

 一方、シエルは飛竜相手に苦戦していた。もはや魔力は五割ほどしか残っていない。そんな中、強者である飛竜と一対一で戦うのは、シエルにとって厳しいものだった。

 シエルの戦い方は、手数で攻めるタイプだ。だが、硬い鱗を持つ飛竜に、それは相性が悪い。口を開いた瞬間を狙おうにも、柔らかい体内にもかかわらず結構な威力を叩きこまないと致命傷は負わせられない。

 対するこちらは、相手の攻撃全てが、喰らったら致命傷だ。

 かろうじて頑張ってはいるものの――シエルは、覚悟を決めなければならなかった。

(魔力は残り少ない。あれを使ったら、多分この後は戦えない。――いや、もうやるしかない!)

 シエルはひたすら逃げ回りながら、体中の魔力をかき集めて変換させる。柵の外側に出ているので変換効率は悪くない。それでも――意識が飛びそうなぐらいの魔力を使う。

「食らえ――!」

 シエルは魔力を解き放つ。途端、


 ゴオオオオオオオオッ!


 と激しい竜巻が、飛竜を襲った。竜巻程度なら飛竜は楽に抜けられるが――その竜巻は、その全部が、今までとは比べ物にならないほど鋭い『風の刃』だ。そして、竜巻の中に含まれる砂礫は、シエルの魔法によって、恐ろしい速さで『振動』し、『渦巻いて』いた。

「ギャオオオオオ!」

 飛竜が悲鳴を上げて暴れまわる。まずはその翼膜が、比較的柔らかい腹の部分が、そして鱗の部分が……無数の『刃』によって、『削り取られて』いく!

 高速で振動し移動する砂礫と、激しく移動する風の刃は――その一つ一つが恐ろしい切れ味を誇る。それらが激しく移動している渦中に巻き込まれた者は――鋭く細かい傷を大量につけられ、削り取られていく。

 これこそがシエルのオリジン『渦巻く爪牙(デザート・テンペスト)』だ。砂嵐のごとく暴れ、猛獣の爪牙のごとく切り刻むそれは、破壊に特化した魔法オリジンだ。

「これは……疲れるんだけどな……」

 砂嵐の中で力尽きた飛竜を、疲労の籠った目で見つめ……シエルは苦笑した。

(さぁ、飛竜は倒せた。……多分三人とも倒せちゃうだろうけど……少なくとも、ボクは遅れてはいないだろうね)

 そして苦笑を満足げな笑みに変えて……フラフラとした足取りで、学園に戻る。


                 ■


「昏き闇よ! 猛き焔よ! 我に力を与え、今、敵を殲滅せよ! そして我の覇道を開け! ――喰らい尽くせ! 『煉獄の黒焔龍インフェルノ・ドラグーン』!」

 そのころ、ルナの戦いも佳境に入っていた。

 襲い掛かってきた飛竜を、夜のように昏い漆黒の煉獄が包む。

「ギャオオオオオオオオ!」

 体の内側に食い込んでくるような灼熱に、飛竜は苦悶の咆哮を上げる。

 そしてそんな飛竜を喰らい尽くすべく――黒焔の龍たちが牙を剥く。

「ギャアアアアアアアア!」

 黒焔の龍に噛み付かれ、体の内側まで漆黒の業火を浸透させてしまい、内側から燃え上がった飛竜は――絶命した。

(三人には負けないもん!)

 腕を組み、得意げな顔で鼻を鳴らすルナ。彼女の心もまた――かけがえのない親友への対抗心があった。


                 ■


 現状、女性三人の中で一番強いと思われる彼女――クリスタもまた、上への対抗心で燃えていた。

 思い描くは、クリスタの心に棲みついた男。

 最初は憎く、今ではかけがえのない存在となった親友。

 クリスタの心は、洋介を『友』と称するごとにざわついた。この理由のわからない心の動きもまた、クリスタにとっては今、心地よくすら感じた。

 狙うは――飛竜が口を開けた瞬間だ。

「『水と光の幻想舞曲(ミラージュ・ロンド)』!」

 クリスタのオリジンを使用し、飛竜の視覚を惑わす。

 いきなり数が増えたクリスタに飛竜は動揺し、全く滅茶苦茶な方向にその爪牙を向ける。当然なんの感触も無くすり抜けるクリスタの幻影に、飛竜はついに怒り出した。

(来る――!)

 クリスタは学んでいた。狂乱状態の魔物は――上手くいかないことがあると、すぐに強硬策に出ると。それを一番実感したのは――あの魔法闘技大会のハプニングの時だった。あの時は洋介が巧く誘導したため大暴れはしなかったが、だんだんと怒りに染まってゆくのがよく分かった。

 そしてもう一つ、ここで強く実感したのは――自分が洋介に守られたという事実。

 一回目も二回目も、自分が子供のように怯えているところを、洋介が助けてくれた。

 この事実に、クリスタは嬉しく思い――自分に腹を立てていた。

 飛竜の胸が大きく膨らむ。自分をあんな目に遭わせた、忌まわしき咆哮が放たれようとしている。

 そして今度は――それを逆に利用する。

 飛竜の大口が開け放たれた――瞬間、

「食らいなさい!」

 クリスタは、『水と光の幻想舞曲(ミラージュ・ロンド)』を発動した際に空気中に浮かべていた大小の水の塊を通して増やした、何千にも及ぶ光線を、その口の中に密集させて放つ。

 クリスタの攻撃には圧倒的な決定打と言えるものがない。そのオリジンが、他の生徒や教師と違って攻撃系でないことから、それがよく分かるだろう。

 だからこそ、クリスタは思考し、工夫し――進化する。

 飛竜は身体の内側を幾千もの光線によって穿たれ、悲鳴を上げて息絶える。

 クリスタは、それを体を抱くように腕を組みながら満足げに見下ろす。

 クリスタの脳裏によぎるのは、かけがえのない友であり、ライバルであり――いつのまにか『憧れと目標』になっていた存在がよぎる。


「飛竜は倒せましたわ。――また、ヨウスケに一歩近づけましたわね」


『努力する天才』たちの進化は、とどまるところを知らない。


                 ■


「見事だ……」

 騎士と冒険者の連合チームの内、冒険者側を率いていたガルード――タダ働きなのをいいことに恐ろしい仕事を任された――は、集団で囲んでやっと倒せた飛竜の死体を尻目に、学園の方向を見て感嘆の声を上げた。

 自分を負かした二人を含め、四人の生徒がそれぞれ単独で飛竜を倒したのにも驚いた。最近の教育はここまで進んでいるのか、と微妙な勘違いをしつつ、それ以上の光景に見惚れる。

 業火が、暴風が、大岩が、急流が――一か所に集う四体の飛竜を屠った。その一つ一つは、もはや変換効率が一割にも満たない悪条件の中で放たれたものとは思えないほどの威力を誇っていた。

 それをやった人物は――当然、イザベラだ。

 適正属性は光と闇を除いた四属性。これだけでも恐ろしいが、そのそれぞれの魔法力が、単一の属性をを専門にする一流の魔法使いすら凌駕するほどなのだ。

 かつて、大量の魔物に襲われた街を――理由は竜種の卵が街中に間違って運び込まれていたのが理由だ――一人で救った彼女は、その見事な戦いぶりから『戦技無双』の二つ名が与えられていた。

「……さすがに、もうボロボロですね」

 だがそんな彼女でも、さすがに、この異常な悪条件の中、単独で飛竜を四体同時に葬るのは相当辛かった。

 もはや、彼女に残された魔力は全体の一割も無い。普通なら意識不明の重体になるレベルだが、それでもこうして立っていて、周辺に放り投げたはずのメガネを探す程度の元気はある。綾子の妹分なだけあって非常識だ。

(そろそろ――『ファイアウォール』の効果も切れますね)

 けれど、もう最大の危機は去った。冒険者と騎士連合チームの第二陣も見えてきた。後は生徒を避難させて掃討戦だ。

 そう思って立ち上がり、ふと空を見る。満月と星が空で輝いている。その中で『こちらに向かってくる大きな影』を見つけた。

 瞬間――イザベラは寒気に襲われる。

 まだ終わっていない――ここからが本当の地獄だ……。


                 ■


「よう、お疲れさん」

「まったく、気楽な顔して……」

「そうだよヨウスケ君! こっちは大変だったんだから!」

「ふ、ふん。あの矮小な狂った竜もどき(トカゲ)など我が黒焔龍の敵ではない」

 学校の敷地内に入り、三人と合流する。あまり暗い雰囲気にならないように気軽に声をかけたが、皆割と元気そうで、むしろ責める様な目線を貰った。ルナは強がっているが――あの少し話すのにどもっている感じからして、苦戦したのだろう。

「もう魔力はスカスカだよ。あと少し魔法使っただけで倒れちゃいそう」

「我もだ。少々宵闇の狂宴で暴れすぎてしまったな」

 シエルとルナは、確かに顔色が悪い。ルナは元気に見せようと中二病モードになっている感じだ。

「私も……少々疲れましたわね」

 一方のクリスタはさすが学年トップだった。飛竜と戦う前でも一番効率よく立ち回り続け、元々の魔力量も二人よりかなり多い。相当減ってはいるだろうが、まだ戦えそうだった。口では疲れたと言っているが、『少々』を強調しているあたり元気そうだ。顔色もそんなに悪くない。

「まぁ、そろそろ救援も本格的に来るだろうし、最大の危機も去ったから俺たちの仕事は終わりだろう。あとはプロに任せて、避難していよ――っ!?」

 移動を促そうとそう言いながらふと空を見上げた瞬間――大小の輝きが闇を照らす空に、大きな影が見えた。

 その影は恐ろしいスピードでこちらに真っ直ぐ向かってくる。

「こ、この気配は……なんですの?」

「い、いやだ……怖い……」

「そんな……こんなの、ボクは感じたことないよ……」

 瞬間、ビリビリビリ! と全身に嫌な予感と――強者の気配を強く感じ取った。今までとは比べ物にならない、格の違う……否。――『次元が違う』と表現した方が正しいような気配だ。

 三人も同じように感じたようで、気の強い三人とは思えないほど顔を青ざめさせ、怯えている。

 恐ろしいスピードで大きくなっていくその影は――ひたすら大きかった。満月と星の輝きが、その影の姿を映し出す。

 ――巨体、太い牙と爪、強靭で太い尻尾、分厚い白い鱗。それらは飛竜の特徴によく似ていたが――巨体のレベルが違う。

 距離とあの大きさからして――マギア学園の校舎レベルの大きさだ。

『それ』は真っ直ぐに庭に降り立つ。その風圧だけで校舎は軋み、庭園の草葉や建築物は傾き、吹き飛ばされる。

 砂埃が晴れ、その巨躯が姿を現す。

 巨大な飛竜。一言で表現してしまえばそれで済むが……オーラが桁違いだ。

「ま、まさか……あれは……」

 クリスタが顔を真っ青にしながらその巨躯を見上げる。

 そう、竜種の中でも絶対強者と言われる、半ば神格化された存在。


「『龍』……」

今日から一日一話です

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