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魔物の素材をどこに売るのか。
これに関しては、学園の方針としては一応自由である。自分の行きつけがあるならそこでもいいし、安く売りさばきたい理由があるならぼったくりのところを選んでもよい。
うちの学園の性質上、生徒たちは休日を利用して冒険者として働く場合が多い。
冒険者の仕事として、依頼料を受け取るほかに、取ってきた魔物の素材を売ることで収入を得ることが出来る。
よって、学園の生徒がより円滑に冒険者として働けるよう、マギア学園と提携している公認の店がこの街にはいくつかある。
それは武器屋だったり、武具屋だったり、大手の道具商店だったり、小さな鍛冶屋だったりと色々あるが、あの学園と提携している、つまりマギア学園お墨付きの店と言う事で信頼度はとても高い。また、現役である場合は生徒手帳さえ見せればほんの少しサービスをしてくれたりもする。
ちなみにこれらの店は学園から釘を刺されていて、『マギア学園の生徒には良くも悪くも適正価格で取引するように』と言われている。
よって、人によってはもっと高く買い取ってくれるところを見つけてそこに通い詰めていたりもするのだ。ただし、その場合は問題が起こっても基本自己責任である。
では、俺はどこの店に向かうのか。
「……まぁ、そうなるよね」
俺が目的地としている店の看板を見て、シエルは苦笑いしながらそう言った。
看板には魅せの名前として『スキンブル』の文字と、左下に『マギア学園校章』があしらってある。つまり、マギア学園お墨付きの、冒険心もクソも無い確実な方法だ。
「無用なトラブルは避けたいからな」
俺はそういいながら、もう入るのも三回目になるこの小さな木造建築のドアを開ける。
後ろをついてくるシエルが「何をいまさら……」と呟いていた気がするが気のせいだ。
「へい、いらっしゃ……ってハーレム坊主じゃねぇか」
ドアを開けた正面のカウンターで迎えてくれたのは、人のよさそうな笑みを浮かべた身長二メートルよりちょっとしたぐらいの、筋肉マッチョで蓄えた立派な髭が渋い親父。
「はは、その呼び方はやめてくださいって言っているでしょう?」
俺はそんな風に軽口を返しながら、ストレージから今日売るものを取り出す。
ここは武器制作店。鍛冶屋は金属類しか扱えないが、ここは金属以外の加工もしてくれる。金属類の加工もできるが、そこばかりは鍛冶屋に劣る。また、革製品はそれ専門の加工やに劣るし、魔物や素材の扱いも専門家には劣る。この店は卓越した技術こそないものの、手広く加工を受け入れてくれるのだ。
「先生から事務員、その他もろもろまで皆女の中に男一人だろ? はたから見りゃあハーレム同然だぜ。……って今日はスピアウッドの枝か」
相変わらずの軽口を聞きながら取り出して見せたのは、数本のスピアウッドの枝。その中でも実際に槍として使われていた部分をこうして選んで取り出している。
スピアウッドの枝は、その名前の通り人間を一発で貫ける程度には鋭くて丈夫だ。しかも、人が通らないときはこれでオーガやサンダースネークを貫き、その血肉を啜って養分としているのだ。相当の鋭さと丈夫さである。
そんな枝は、加工しなくても下手な金属よりよっぽどいい武器となる。短く切り出せば刺すタイプの短剣に、長くすれば槍となる。
そんなわけで、このスピアウッドの枝はそれなりにいいお値段で取引される。
「ほんほん……品質も悪くない、長さも槍に加工できるぐらい……切り取ってからの劣化もほとんどなし……っと。こんなもんでどうだい?」
算盤のような道具で示された金額を見る。よし、これで二週間は生活できるな。思いのほか高品質のものだったみたいだ。
「じゃあそれで」
「あいよ。……ほれ」
親父に袋に入った硬貨を手渡される。誤魔化したりしないのは分かっているので確認せず、それはそのままストレージに放り込む。
「ふむ、それにしても……後ろにいるお嬢ちゃんは坊主のこれかい? ハーレムかと思っていたら特定の相手に絞ったのか」
ニヤニヤと笑いながら、『これ』と言って小指を立てて問いかけてくる親父。小指だけ立てるのはこっちの世界でも『恋人』の意である。
つまり……この親父はシエルが俺の恋人だと思っているのだ。
「いえ、違いますよ。生憎俺にはお嬢様を養うほどの甲斐性もありませんしね。まぁ、仲良くはして貰ってますが。なぁ?」
そう言って俺はシエルの振り返って確認する。
するとシエルは顔を赤らめ、嬉しそうに笑いながら、
「あ、あらやだ! ボクとヨウスケって恋人同士に見えるみたいだね! まぁ、結論を言っちゃうとまだ恋人同士ではないですよ」
と言った。妙に演技がかって……そう、クリスタをからかっているときのような声色だった。
「へぇ、まだ、ねぇ……」
ほら、今の態度から親父が何か勘違いしちゃったよ。よく聞こえなかったが、ろくなことを考えていないに違いない。
「ほら、シエル。いくぞ」
「はっはーん、照れちゃってー。冗談冗談」
俺が店を出ようとドアを開けると、明るく笑ってそう言ったシエルはこちらに歩いてきた。
■
この世界の夜は、人通りが多い街でも綺麗だ。
電灯ではなくランタンが夜の闇を照らす。煉瓦や木で出来た建物が並び、石畳にランタンの光が微妙に反射してぼやっと光っているその光景は、異世界なだけあってエキゾチックだ。この世界ではこれが当たり前の風景だろうが、俺にとっては文字通り異国。その神秘的な光景には目を奪われざるを得ない。
そんな街を、シエルという美少女と二人で歩いている。そんな状況なわけだから……悲しいかな、男の性として意識せざるを得ない。前にクリスタから男はけがらわしいもの、と言われて憤ったことがあるが、自分の今の心情からすれば若干同意できるな。
「こ、このあたりはいつ来ても雰囲気がいいな」
シエルが珍しく、黙って横を歩いているだけだったということもあり、沈黙が辛くなってパッと思いついた話題を振る。
「そう? あー、そういえばヨウスケ君は人里離れたところで生活していたんだよね? ならこういうのは珍しいかもね」
そっけなく答えるシエル。
やっぱりそうか。この光景は、シエルたちにとっては普通のものだ。珍しい、ちょっと違うものとして考えているのは……それこそ人里離れたところで育った人か、俺や綾子さんみたいなこういった文化がない国から来た人ぐらいだろう。
「なんなら、今度の休み……明後日にでもここに二人で遊びに行ってみる? 何回かここに出かけてるから少しは案内できるよ?」
シエルは俺の様子からここに来慣れていないことを感じ取ったのか、そんな提案をしてきた。
ここには基本的に魔物の素材を売りに来て、その帰りに食料をまとめ買いする程度しか来たことがない。このマギア学園の近くにある『エフルテ』と言う街はそこそこ大きいため、観光地などもいくつかあるだろう。……巡ってみるのもいいかもしれないな。
「お、じゃあお願いできるか?」
「はいはーい、じゃあ今度の休日は二人で出かける事けってーい」
俺がお願いすると、シエルは嬉しそうにそう言った。
■
「よいしょっと……」
対して重くも無いストレージを親父臭い声をだしながら下し、(エフルテの往復は歩くにはちょっとばかり遠い)タンスからバスタオルと着替えを取り出す。
涼しいとはいえ少し汗をかいたから、今から入る風呂はさぞかし気持ちいいだろう。
「さて、と……。…………」
風呂の入り口手前にある脱衣場には、ピンクを基調としたパステルカラーの可愛らしい手提げがあった。
俺はこれが誰のものか知っている。……クリスタだ。
「ふっ、そういうことか」
中にはクリスタの着替えセット一式が入っているに違いない。つまりクリスタは今、風呂を堪能中と言うわけだ。よく耳を澄ますと、風呂場の中から水音が聞こえる。
はっはっはっ! このままうっかり入って「きゃあああ! 変態!」的なラッキースケベイベントなど起こしはせんのだよ。そんなことをしたら最後、この小屋ごと俺の存在は(文字通り)塵になるだろう。
さて、俺はこの場から可及的速やかに退出させてもらおう。ここにいてクリスタが風呂から上がってくるだけでも危ないからな。
……手提げからチラリと、少し見覚えがある水色の柔らかそうな布が見えたのは気にしない方針でいく。
■
クリスタが上がってくるのを待ちながら、さっきの食事で使った食器を洗う。クリスタは終わった後に水に浸けておいてくれたみたいで、洗うのが楽だった。
この世界では、ポンプがない代わりに魔力で水道を動かしている。よく仕組みは分からないが、魔法を使えるぐらい魔力があれば日常生活の中で地球の水道――と言っても先進国ほどのレベルには及ばないが――ぐらいには使えるらしい。
魔力を流すことで効果を発揮する道具があり、それは一般的に『魔道具』と呼ばれる。
魔道具は、基本的に古代遺跡から発掘される、オーパーツのように現代では解明できない超技術物だ。それのはるか劣化版なら現代の技術で作れるが、それでもそう多くは造れないし使い勝手も悪い。
例えばこの擬似水道が使える魔道具は、一般人では使えない(魔力が少ない)し、そもそも値段が非常に高い。世界最高峰のお嬢様学校の設備だからこそこうして使えるものの、一般人では見る機会すらないだろう。
一方、古代遺跡から発掘されるものは、その効果も使い勝手もいいものが多い。
魔力が少ない一般人でも使えたり、今作れるものよりも効果が良かったりするのだ。
ただし、古代遺跡からの発掘頼りのために安定した供給はないし数も少なく、対する需要は鰻登りのため、値段は恐ろしいぐらい高い。
この古代遺跡から発掘される魔道具を特に『古代遺物』と呼び、これを持っているだけで周りに自慢できるのだ。
ちなみに古代遺物の中でも一番多く出回り、比較的手に入れやすいのがストレージだ。その便利さ故に昔も多く使っていたのか、遺跡からは他の効果を持つ古代遺物よりもはるかに多く見つかる。だからこそ、俺でも軽々しく手に入ったのだ。
それにしても……クリスタは結構長風呂なんだな。俺が出かけてからも猫舌だから食事は大分長引いたとはいえ、もう出かけてから大分経っている。女性は比較的男性に比べて長風呂だとは言うが、クリスタはその長いタイプの様だ。
ガチャッ。
……おっと、そんなことを考えていたら、ちょうどクリスタが風呂から上がったようだ。上がるのがもう少し早かったら脱衣場で出くわす羽目になるところだったな。
しばらくして、脱衣場とリビングを繋ぐドアが開けられる。そのドアから現れたのは――
「「へっ?」」
体にタオルを巻いただけの、無防備な姿のクリスタだった。
俺とクリスタの目が合い、口からマヌケな声が漏れる。
しゃばしゃばしゃばしゃば……と水道から流れる水の音だけが場を支配した。
そしてその静寂は――
「きゃああああっ!」
――クリスタの悲鳴によって破られる。
クリスタは即座に反転、翻ったタオルの端から白い太腿をのぞかせながら背を向け、即座に脱衣場に戻ってドアを勢いよく閉める。
「す、すまんクリスタ!」
俺は水道を止めながら即座に謝罪をする。
くそっ、まさか三段階目があったとは! 一段階目の風呂場でばったり、二段階目の脱衣所でばったりを通り越し、安全だと油断していたっ……! まさか『向こうから飛び込んでくる』なんてっ……!
恐らく、クリスタは俺が返ってきていると思わず、タオルを巻いてこちらに出てきた。恐らく、しばらく周りが女子に囲まれている環境で生活していたが故の慣れ……恐ろしい『習慣』だ。
学校では俺と言う男性と関わってきたものの、私生活の中では男子禁制の女子寮でながらく生活していた。裸を晒すことに多少の躊躇はあれど、相手は同性。また、基本的に大浴場を利用する場合が多く、裸の付き合いには慣れっこだったのだろう。
だがしかし、最近になって急に何回かこちらで風呂に入るようになった。最初の内は少し気をつけていたかもしれないが、繰り返すうちに、一番恐ろしいと言われる『中途半端な慣れ』が出来てしまい、さらにそのタイミングで俺がちょっと遠出をしていた。クリスタは、まだ俺が出かけていると高を括っていたのだろう。
ああ、これは……小屋ごとぶっ飛ばされるかもな。いや、このまま逃げるか? ……違う、そんなことしたら、見つかったら最後だ。ならばそう……偉大なる先人の逸話に則ってっ――頼むぞ、ワシントンの桜の枝っ……!
審判の時を待つ罪人のように、ただそれを下す裁判官を正座して待ち続ける。
ガ、
ドアノブを下す音が聞こえた。それが聞こえただけで、俺の身体は大きく跳ね上がる。
チャ、
ドアが押される音が聞こえた。心拍数は高まり、ただただ恐怖感のみが心の底からわき起こる。
リ。
ドアが完全に開かれ、天使のように美しい裁判官が姿を現した。わずかに濡れた髪と、風呂上がりと言うだけが理由ではないだろう上気した肌。その可愛らしさと美しさを兼ね備えた絵画のような容姿とは裏腹に……否、そのギャップがあってこそ、ひたすら恐怖感をあおる。
ユニコーンの蹄で出来た踵による踏み抜きか、はたまた最近知ったけど海竜の鱗で出来ていると言うつま先による蹴りか、もしかしたら魔法による処刑かもしれない。
「……とりあえず、お帰りなさい」
「……た、ただいまです」
ゆったりとした服を着て俺の前に立つなり、そんなことを言ってきた。言葉を返すも、その言葉の意図が掴めない。
「さて、ではこのたびの失態は、どのようにして起こったのでしょう?」
感情の読めない声でクリスタは俺に問いかけてくる。
「お、俺が帰ってきたことを知らせるべきだったな。すまん!」
俺はそう言うなり、すぐに手をついて頭を下げる。
「そう……ですのね。……頭を上げなさいな」
ため息をつくようにクリスタはそう言った。意図が読めずも、とりあえず俺はそれにしたがって頭を上げ、クリスタを見上げる。
クリスタは感情が読めない目で、ただ俺を見下ろしている。
そして、その白魚のようにきれいでたおやかな指を、俺の目の前へ伸ばしてくる。
ああ……これは……クリスタの無防備な姿を映してしまった、罪深き俺の瞳を潰すのか。それが……俺が出来る贖罪なんだな……。
仄かに赤く色づいた白い指が目の前に来る。本能的な恐怖を覚えた俺は、来たるべき衝撃に耐えきれるよう、とっさに目を強く閉じ、歯を食いしばった。
ピンッ
しかし、その衝撃を感じた場所は目ではなく眉間。また、衝撃は思っていたよりもはるかに弱く、むしろ優しささえ感じるものだった。
「えっ……?」
俺は、思わず僅かに衝撃の残滓が残る眉間を抑えながらクリスタを見上げた。
そこにいたクリスタは……複雑そうな表情を浮かべながらも、どことなくそっけない雰囲気が漂っていた。
「帰って来たならそうと言ってくだされば嬉しかったのですが、人様の家であんな無防備に動いた私のほうが悪かったですわ。だからもう……気にしなくても結構ですわよ」
クリスタはそう言うと、しゃがんで俺に目線を合わせて……優しく笑った。
「お風呂、気持ち良かったですわ。ではまた明日、学校で会いましょう」
そう言って、クリスタは混乱している俺を置いてけぼりにしたまま立ち上がり、出口へと向かった。
「あ、ああ、また明日」
立ち上がった拍子に、風呂上がりの熱気とシャンプー、そしてラベンダーのような女の子らしい匂いが俺の鼻をくすぐる。
その匂いに戸惑いつつも、そんなクリスタに、なんとか絞り出した声で返事をする。
クリスタはこちらをちらりと振り返ると、そのまま玄関のドアを開ける。
「あ、それと――」
そしてその場に立ち止まり、こちらを見ないままクリスタは付け足すように、
「今日の事は、またいつも通り秘密ですわよ」
と言って――そのまま早歩きで玄関を出て扉を閉めた。
出ていく直前のクリスタは……俺の見間違いじゃなければ、耳が赤くなっていた。
■
洋介が住んでいる小屋を出たクリスタは、風呂上がりにも関わらず早歩きで女子寮へと向かっていた。決して門限が近いわけではない。
(ああっ! ヨウスケにあんな姿を……っ!)
恥ずかしくて落ち着いていないだけだ。
クリスタは、ヨウスケに無防備な姿を見られた直後こそ怒ったものの、服を着ている最中にその怒りは鎮めていた。むしろ、悪いのは自分だと思い、少しでもヨウスケに怒った自分に自己嫌悪すら抱いたのである。
そんなクリスタを、洋介は恐れはしたものの、怒りはしなかった。
洋介にはほとんど非がないにもかかわらず、クリスタに謝り、どんな罰でも受け入れる姿勢を見せた。
そんな洋介を、クリスタは好ましく思った。それと共に、自分にもっと罪悪感が沸いた。
(ヨウスケは……私の心をかき乱しますわ)
初対面の時から、クリスタの心は洋介に振り回されてきた。
始めこそ悪い印象を抱き、時には対立したものの……最近は、洋介のふとした動作すら気になり始めたのである。
そんなことが気になり始めたころに、さきほどの出来事が起こった。
クリスタの心は激しくかき乱された。
自己嫌悪、自分の姿を見た時の洋介の反応に対する歓喜、その歓喜に対する理由がわからない戸惑い……今やクリスタの思考は、完全に煮詰まっていた。
(ああああっ! 訳が分かりませんわ! 何なんですの!? 何故、こんなに『ヨウスケの事が気になり』ますの!?)
今にも叫びだし、その絹糸のような髪をかき乱さんばかりに混乱する。どうにかそれはなけなしの理性で押さえつけたものの、クリスタの足は自然、早歩きとなる。
そのせいか、考え事に夢中になっていたせいか、はたまたどちらもか……とても短い時間(とクリスタは感じた)で女子寮の前に着いたクリスタは、ひとまず落ち着くことにした。
(他の方にこんな無様な姿は見せられませんわ!)
自分の顔を両手でパシッ、と張り、気を引き締めようとする。しかし、それで少しは落ち着いたものの、クリスタの混乱は収まらない。
「あら、クリスタ様、どちらに行かれていたのですか?」
「少し街へ出かけておりましたわ。野暮用がありまして」
自身を慕っている女子生徒からの問いかけに、罪悪感を感じながらもクリスタは嘘で答える。その表情は、複雑な人間関係と思想、様々な欲が絡まる高位貴族社会で育っただけあって完璧ではあったが……その声の端と、歩く速さからにじみ出る焦りは周りからすれば、よく見れば分かるものだった。
「く、クリスタ様は一体どちらに?」
「分からないわよ! 最近夕飯も外で召し上がっているようですし……」
「今日はお風呂も外で済ませてこられたようだわね……」
「そもそも、最近のクリスタ様はどことなく変だわ! ふとした拍子にそわそわされるし、顔を赤らめられるし!」
「それと……最近、クリスタ様はどことなくお綺麗にになられましたわよね」
「「「うううっ! クリスタ様に一体何がっ……!?」」」
クリスタが通り過ぎた後のロビーは、噂好きの好きの、クリスタを慕う三人が小さな声ながらも姦しく言葉を交わしていた。




