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異世界で唯一の男魔法使い  作者: 木林森
渾沌に逆巻く黒き焔
29/58

10

 善は急げ。

 作戦の内容を無声音で伝え終えると、俺たちは早速行動に移す。

 それとともにあっちのパーティーも動き出したのがわかった。多分ユーリは「逃げても無駄よ」とか言っているのだろう。

「しかし……そんな悪知恵、よく思いつきますわね」

「まぁ……言い訳は何とでも聞くしいいんじゃない?」

「さて、ヨウスケの鬼謀は我らが希望となるか。しかとこの目で見させてもらおう」

 クリスタとシエルは思い切り酷い言い様だし、ルナは褒めているように見えて『鬼謀』とか言っている。

「いやだなぁ、もう。これは立派な作戦だよ」

 自分でもわざとらしいな、と思いながら、木々の密度が高い場所を選んで進んでいく。そしてポケットから赤い液体を取り出し、それを走りながら適当に地面に撒く。

「さてと……じゃあ三人とも、そろそろいいぞ」

 いい感じに木々が生い茂っているな。よしよし。

 俺が指示をすると、三人とも魔法を発動し始めた。

 その瞬間、特に日差しが入らなくて暗かった場所がさらにうっすらと暗くなり、そこには『俺たちの姿』が現れた。

 今回の作戦ステップワン。クリスタの光属性魔法で俺たちの幻影を作りだし、ルナがそのあたりをさらに暗くして分かりにくくする。また、ここからだと確認できないが、シエルが風を操って俺たちの声を幻影のあたりで出し、動きに合わせて適当に草葉を揺らしている。

「ちょっ! 何よこれ! ああ、もう! ウザったい魔物め!」

 後ろからは俺たちの幻影に困惑し、そこを『タイミングよく』魔物に襲われたユーリの苛立っている声が聞こえてくる。

 ステップツー。俺たちの幻影のあたりに、昨日の狩りで集めた『魔物の血』を撒くこと。

 これによってあいつらは魔物に遭遇せざるを得ず、時間を取ってしまう。また、幻影の部分に限ってはシエルが風で臭いを周りに散らしまくったので、すぐに魔物が来る仕様になっている。

 また、俺たちが通った道にもちょいちょい血を撒いているため、あいつらが追いかけてきても魔物での足止めが期待出来る。

「さぁ、ちょっと右に曲がるぞ!」

 俺たちは森の中を走り抜ける。先頭は俺だ。

 今の俺はちょっとした『レーダー』になっていて、魔物が多くいる場所が手に取るようにわかる。後ろの様子も、離れていても分かるのはこのためだ。

 ステップスリー。『辺りの様子がわかる』性質に変換した魔力をあたりにうすーく漂わせる。

 これによって今から向かう場所も迷わないし、あいつらの行動も逐一わかる。

 ちなみに、『辺りの様子がわかる』というのは大雑把な説明だ。実際は『辺りにある物の形と位置がわかる』といったかんじになる。色とか硬さとか温度とかは分からないが、形と位置がわかるだけでも十分だ。それ以上増えたら、今度は俺の脳みそが処理しきれなくてパンクしてしまう。

 今回の作戦の肝は、三人の『魔法力』だ。

 いわゆる、魔法の総合的な技術。三人とも大変高い水準にあり、クリスタとシエルはその中でも同じ人間かと疑うくらいに技術が高い。

 よって、三人とも悪路を走って警戒しながら、見えない上に離れている場所に魔法を行使できる。

 とはいえ、ルナはさすがに難しく、うっすらと暗くする程度だ。

 クリスタは幻影を作ると言う難しい作業をやってのけているが、それ以上に技術に目を見張るのがシエル。

 俺たちの声を再現して四つ同時操作、草葉も揺らして一つ、さらに血の臭いも辺りに巡らせているため、合計六つの魔法を、目に見えない場所に対して行使していることになる。

 しかも声については精密な魔法だし、血の臭いを巡らせるのは範囲が広い。これはまさに、シエルの人並み外れた技術がなせる技だろう。

 これほどのことは、才能だけでは到底できないはず。もしかしたら、シエルも相当努力を積んだ人間なのかもしれない。

 さて、今回の事だが……一見妨害しているように見えて、実は堂々と言い訳が出来る。

 血をそこらに撒いて魔物をおびき寄せる方法はメジャーだし、幻影を作り出して囮にするのもよくあることだ。

 そう……俺たちはただ、『魔物をおびき寄せているだけ』なのだ!

 そこに『たまたま』ユーリ達が通りがかっただけで、妨害などしていない! そもそも不自然なまでに俺たちのルートを追ってきているのだから、むしろ向こうから危険に飛び込んでいるのです! ドドーン!

「やっぱり悪知恵ですわよ……」

 クリスタは俺の表情を読んだのか、そう呟いてため息を吐いた。

 ……失礼な。


                 ■


「ん?」

 あれから数時間が経った。あいつらは完全に引き離し、魔物が多いところを選んで狩っている俺たちは順調にスコアを伸ばしていった。

 この三人はやはり凄い。普段の強さもさることながら、あれ以来さらに動きが良くなった。

 三人は相当悔しかったのだろう。そこでユーリの鼻を明かすことに成功し、さらに抜かしてやろうと躍起になっているため、士気が滅茶苦茶高いのだ。

 しかも、それで油断するような三人じゃない。昨日の夜の反省を活かし、しっかりと冷静に立ち回っている。これによって……俺はもっぱらレーダー係になっていた。

 そんな人間レーダーヨウスケ君(シエル命名)こと俺は、妙な気配を捉えた。

「これは……今までの奴らとは違うな」

 俺が使っているこの魔法は、相手の場所と共に、相手の強さもある程度分かる。ただ、うすーく漂わせているだけのため、詳しいことは分からない。

「一体なんなのでしょう?」

 クリスタは俺の言葉に首を傾げ、足元に転がっているアイアンゴーレムのバラバラ死体をストレージに放り込みながらそう呟いた。

 そもそもアイアンゴーレムが森の中にいるのがおかしい。こいつは確か、木が生えている部分じゃなくて荒地の方が生息域のはずだ。

 となると、もしかしたらこの妙な気配が原因かもしれないな。

「ちょっと待ってろよ……」

 俺はその気配を感じるあたりに魔力を少し多めに飛ばす。魔力を常時かなりの広範囲に広げているが、未だになくなる気配が全くない。無尽蔵の魔力とはありがたいものだ。

 ふんふん、人型で、体長は……五メートルはあるな。オーガやアイアンゴーレムより大きいぞ。うんうん、二足歩行で、森の中にも関わらず結構な速さでこっちに向かってきているな。いやぁ、森の中でこの大きさなのにオーガよりも速く移動できるなんて、結構知能が高いんだなぁ……。

 …………。

「ベビータイタンが真っ直ぐこっちに来てるぞ」

「「「「……え?」」」」

 俺の出した結論に、ソーニャさんを含めた四人が目を丸くして間抜けな声を漏らした。

「人型でオーガやアイアンゴーレムよりでかい、森の中なのにオーガよりも速く移動していることから……形と知能的、それに事前に仕入れたデータ的に、ベビータイタンで間違いないだろう」

「なんともまぁ……十回来て遭遇するかどうかのベビータイタンだなんて……」

 ソーニャさんはそんなことをぽつりと呟いた。

「どうしますの?」

 緩んだ雰囲気を、クリスタの硬い声が引き締めた。

 その言葉は……戦うか、否かと問うている。

 ベビータイタンは、巨人種の中で最弱とはいえ、されど巨人種なのだ。パワーもオーガ以上、身体能力も高く、それなりに器用。知能もそれなりにあり……何よりも、その巨体を活かした圧倒的なリーチが特徴だ。そんな相手と戦う以上、今まで以上に危険が付きまとう。

 だが、今回の演習の特徴として……倒した魔物が危険で、その地域で珍しいほど、高得点になるのだ。となると、ベビータイタンを倒すメリットは大きい。滅多に会えない上に、危険度もよく知られている。

 俺たちはしばし逡巡する。

 普通なら迷わず逃げるだろうが……今の俺たちは絶好調だ。また、このメンバーならばベビータイタンにも劣らない自信はある。それが慢心でないかと言われれば違うとは言い切れないのだが……やってもいいかもしれない、ぐらいに考えるほどには勝算があるのだ。

「ボクは……やってもいいと思う」

「ルナも。……調子もいいし、ここは挑戦してみたい」

 シエルとルナは少し間をおいて賛成した。

 自然、クリスタの意識は俺に向く。

「俺も……戦うといいだろうと思う。ただ、危なくなったらすかさず逃げれる準備だけはしておこうな」

 俺の結論はこれだった。

 逃げれる、という言葉だけで、三人は俺の意思を理解した。

 さっきやった、ユーリ達から逃げる方法をそのままやればいいのだ。いくら巨人族とはいえ、人間より頭は悪い。あいつらが引っかかるならベビータイタンも引っかかるだろう。

「……いざと言う時には、私を頼ってくださいね」

 表情と声を引き締めて、ソーニャさんはそう言った。

 よし……決定だな。

 それにしても……さすがにこいつ相手の戦いに参加せず、静観と言うわけにはいかないだろうな。レーダーは一旦やめるか。

 俺たちの意思が固まった時、ドシン、ドシンという激しく地面を揺さぶる音が少しずつ近づいてくるのを感じた。

 そして俺は、その音の正体ともう少しで遭遇することを知っている。

「さてと……話し合っている間に……やっこさんは来たぞ」

 木々の間から……くすんだ肌色が覗く。

 バリバリバリ! と木々を砕く音を響かせながら、その全貌を現す。

「ガアアアアアアアアッ!」

 見上げるほどの巨体、人間とほぼ同じ体の構造、ぼさぼさの黒い髪の毛、腰には動物の毛皮で作ったと思われるズボンを穿いていて、それ以外は裸だ。

 その巨体と厳めしい顔、筋肉質の身体は、その強靭さと力強さをこれでもかとばかりに表現する。

 巨人種の一種――ベビータイタンだ。

 名前の通り、巨人の中でも小さい。それなのにこの巨体。

 ベビータイタンは厳めしい顔にある鋭いギラギラと光る目を俺たち向け、喜色を浮かべる。それはまさに、獲物を見つけた強者の目。

「いくぞ!」

 目線で確認した陣形を取る。俺はベビータイタンの正面に、他は周りに散開して木々に身を隠す。

「ガアアッ!」

「うおおおおっ!」

 まずは真っ向勝負。

 ベビータイタンは正面の俺を手始めに殺そうと、頭よりも大きい拳を握りしめて俺に向かってパンチしてくる。

 それに対して俺も、魔法で身体能力を大きく強化して、拳をぶつける!

 ガッ! 乾いた激しい音が森の中に響いた。最初の勝負に勝ったのは――

「ぐっ!」

 ベビータイタンの方だった。俺は衝撃によって吹き飛ばされ、後ろの木に背中をぶつける。とっさに魔法で保護したから怪我はないが、少々痛い。

「巨人種相手に力勝負とは無理しすぎですわ!」

 クリスタは俺にそう叫びながら、水の壁を通して増やした光の線で巨人の目を狙う。

 しかしその攻撃は、野性的な本能によって感知され、ベビータイタンの分厚い手のひらに防がれる。そしてその手のひらにダメージを与えられた形跡はなく、焦げ目がついているだけだ。

「それっ!」

 シエルがすぐさまベビータイタンの後頭部を狙って空気の塊を飛ばす。しかしそれも首を傾げて躱されてしまい、それどころかシエルは後ろ蹴りによって反撃を食らってしまう。

「くっ!」

 とっさに作り出した空気の塊でカバーをするものの衝撃を殺しきれず、シエルはバックステップで残りの衝撃を殺す。

「お返しだ!」

 俺は高密度に圧縮した実体化した魔力の弾丸を数発撃ち出す。

 それはベビータイタンの左胸に当たるものの、その強靭な胸板にダメージを与えることはできない。

「うおっ!」

 それどころかそれによって俺にターゲットを絞ったベビータイタンから、ものすごい速さで石を投げられて反撃を食らう。ギリギリ躱したものの、あんなの食らったらひとたまりもない。

 それによって体勢が崩れた俺に、ベビータイタンは容赦なく追撃を食らわせようと走り寄ってくる。

「させない!」

 シエルはそう叫ぶと魔法を発動し、ベビータイタンが踏み出そうとした地面に空気の塊を作り出す。

 それによってベビータイタンはバランスを崩し、勢いが弱まった。

「今だ!」

「行きますわよ!」

 一転攻勢に出る俺とクリスタ。

 その筋肉に覆われていない分脆弱である顔面や喉に向かって魔法を撃ち出す。

「ガアアアアッ!」

 その攻撃の内の数発が決まった!

 クリスタの光の槍が左目に刺さり、俺の魔力の剣が浅いながらも喉に刺さる。傷ついた部分から血を流し、痛みに悶えるように叫びながら巨人はそれらを引き抜く。すると、そこからさらにたくさんの血が流れてきた。

 強力な魔物を相手にする場合、ある一定以下の攻撃は全く意味をなさなくなる。強力な魔物は生命力も頑丈さも理不尽で、有象無象の攻撃は全く意味をなさないのだ。よって、こういった敵を相手する場合は、とにかく急所を狙うのが鉄板なのだ。

 その暴れている隙にも三人でどんどん攻撃を加えていく。次第にベビータイタンは傷ついていき、その動きも精彩を欠いてきた。だが、それでも死ぬ気配は全くなく、むしろその静けさは……反撃を予感させるものだった。

「コオオッ――!」

 ベビータイタンは大きく口を開いて息を吸った。それによって周りの木々が傾くほどに大量の空気を吸い、胸部が大きく膨らむ!

「来るかっ!」

 巨人種の中でも弱い方がもつ技……『大風破ブラスト』の予備動作だ。

 大きく周りの空気を吸い、それを一気に吐き出して破壊を撒き散らす大技。威力もそうだし、追加効果も特にない分飛竜の『狂乱の大音声(パニックボイス)』に圧倒的に劣るものの、それでも厄介なものには変わりない。あそこは障害物がなく、造りが頑丈な闘技場だったが……ここはただ生えているだけの木々が大量にある。それに巻き込まれて吹き飛ばされれば、それらに潰されて大けがを負ってしまう。

「ルナっ!」

 ――だがそれは、千載一遇のチャンスでもあった。

「任せよ! 逆巻く黒き焔に侵され燃え尽きよ!」

 さっきまでずっと隠れて魔力を練っていたルナが、それを解放する。

 真っ直ぐにベビータイタンの顔面へと放たれた黒い業火は……ベビータイタン自身の吸い込みによって、その口に、鼻に入り……そこから、口内を、気道を、肺を……体内を焼き尽くす!

「ガアアアアアアアアアアアッ!!!」

 巨人は吸い込みを中断し、喉と口を押えて苦しそうに叫んだ。体内が恐ろしいまでの高温で焼き尽くされているのだ。いくら外側が強靭と言えど……飛竜と同じように、体内は柔らかい。

 また、いくら物理法則に反するのが魔法とはいえ、ある程度は影響を受ける。例えば――『炎は酸素によって勢いを増す』とかだ。

 魔法で作った炎は、最悪空気がなくても燃えるし、燃えるモノがなくても燃える。だが、魔法で作った炎に空気を送り込めば、特別な処理をしていない限りは酸素を取り込み、物理法則に則って勢いを増すのだ。

 今回、ベビータイタンの肺には大きな吸い込みによって空気が満たされていた。それによってルナの炎はより勢いを増したのだ。

 そして何よりも、ルナの魔法の性質によって巨人は大きなダメージを負う。

「ゴアッ! ゴゥア! ゴッ! ゴゴッ――!」

 少しずつ叫びは短く、小さく……苦しそうになっていく。

 ベビータイタンは巨人種。確かにさっきぐらいの炎でも充分致命傷だが、それでもここまでのダメージは受けない。

 ルナの炎が黒い理由……それは、火属性魔法に闇属性魔法を混ぜているからだ。

 闇属性が操るもの……それは闇と影、そして『毒』だ。

 また、毒の性質として、体に浸透する……いわば、『侵食』する、というものがある。

 今回はその毒の中の性質の一つ、『侵食』に特化して炎に混ぜた。

 超高温のそれを体内に大量に取り込み、さらにそこで勢いを増せば……体中に超高温の炎が『侵食』する。だからこそ、ベビータイタンはあそこまで苦しんでいるのだ。

「そろそろいいだろ」

 俺がルナにそう言うと、ベビータイタンの口や鼻や目や耳から噴き出していた黒い炎は消え、ベビータイタンは……ズゥン……と低い音を立てて倒れ伏した。

 しばらく様子を見るも、ピクリとも動かない。

「――終わったな」

 口から、ぽつりとそんな呟きが漏れる。

 風と、葉擦れの音。それにベビータイタンが倒れた残響のみが聴覚を支配する。

 その、わずかに騒がしい沈黙を――――

「やったぁああああ!」

 弾けるように叫んでルナが破った。

「やりましたわよ!」

「凄い凄い! ボクらでベビータイタンを討伐しちゃったよ!」

 そこから堰を切るように、二人が歓喜の鬨の声を上げる。

「す、凄い……倒しちゃった……」

 ポカン、とソーニャさんは倒れ伏すベビータイタンの死体を見て、そう呟いた。

「ヨウスケの作戦勝ちですわね」

 三人で喜び合っていたクリスタが、ふとこっちに視線を向けてそう言った。

「あー……そう言えばそうだったな」

 そう、今回の作戦は、事前に決められていて、俺が立てたものだった。

 三人で気を引き、『大風波ブラスト』が来るタイミングで、隠れて力を溜めこんでいたルナが魔法で止めを刺す。

 急所を狙う、大きな予備動作による隙を狙う、一気に大きなダメージを食らわせて必殺を狙う、という強い魔物を相手にする際の基本に則った作戦だった。ちょっと前に魔法戦闘の授業で習ったのを活かしたのだ。これがまた我ながらいい作戦で、提案して即採用された。

 ここに来るまでの馬車の中で、強力な魔物に出くわした際の対策を話し合っていた甲斐があった。迷わず、正しく、作戦通りに行動できたのは勝利の大きな要因だろう。

 ちなみに、事前の話し合いの中で緊急時の連絡方法の暗号も打ち合わせたが、今回は使うことはなさそうだ。ちなみにそれは綾子さんが広めたモールス信号だった。

「まぁ、俺は考えただけで、実際に止めを刺したのはルナだ。……誰一人欠けても成功はしなかっただろうが……MVPはルナだろうな」

 照れくさくなった俺はそう言いながら銀色のカードを懐から取り出す。そこには今までのスコアに加えて、しっかりと、『ベビータイタン・一体』と表示されていた。

 その文字に、深い感銘を覚え、ジーンと心の奥底から充足感が沸き上がってくる。

「ヨウスケ!」

「おわっ!?」

 その充足感に浸って注意が散漫になっており、いきなり感じた温かくて柔らかい衝撃に驚く。

 衝撃を感じた腹部を見ると……そこには、燃えるような赤が見えた。

「ヨウスケのおかげでベビータイタンに勝てたよ! ありがと、ありがと!」

 それとともに、腰と腹部に絞まるような感覚が沸き上がる。

 ルナが飛び込んできて、思い切り抱きしめているのだ。

 ルナは俺の胸に顔を埋めているため、自然俺の鼻先をルナのポニーテールがくすぐる。そこからは……クチナシのような、女の子らしい、花のいい匂いが漂ってくる。

(うっ!)

 途端、自分が美少女に抱きつかれていると言う実感が沸き、しどろもどろになる。

「あー、そのー、何だ……とにかく、お疲れ様」

 必死に俺はそう言葉を振り絞り……無意識に、ルナの頭を右手のひらでぽん、と柔らかく包むように叩いていた。

奥様、聞きました? 冬の童話祭ですって。

そんなわけで、ネタは出来ていませんが参加はします。

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