プロローグ
読んでいただきありがとうございます。
『佐藤、アウト~』
『あぐっ! ……これほんまきっついわぁ』
「あっはっはっはっはっ!」
テレビの中で、笑ってしまった芸能人が尻をプラスチックバットで叩かれた。
俺はそれを見て腹を抱えて笑っている。
大晦日の夜、毎年この時間の定番となっている『小僧の召使じゃないどすえ』の『必ずに笑ってはいけない寺修行四十八時』は、俺のお気に入りの一つだ。
大晦日は『源平歌合戦』や『ニャゴえもん』と言った様々な特番が放送されるが、俺はこの番組を毎年見ている。何となく番組表を見ていたところ、マイナーなローカルチャンネルで『突然少女が姿を消した日から一年。大晦日の謎を追う!』という若干悪趣味な番組までやっているのを見つけた。前日の夜まで普通に生活していた高校生の少女が、正月の朝に行方不明になった、当時大騒ぎになった事件の特番だ。
『じゃ、ここからルール変更や。必ず驚いてはいけない、に変わるで』
女装をしている進行役の芸人がルールの変更を別の芸人たちに伝えた。これも毎年の定番で、番組の終盤にこうなるのだ。
「あと数時間で今年も終わりか……」
ちらり、と時計を見て俺はどことなく感傷的な気分になりながらそう呟く。
高校に進学してからもう半年以上が過ぎた。あと三カ月ほどでもう進級だ。最終的な進路決定はまだ先だが、もう二年生の選択科目希望は出している。そろそろ本格的に進路を考え始める時期だろうか。
俺はそんなことを考えながら、テレビを消してパソコンの液晶に目を向ける。あの番組は録画してあるからこれ以降は明日にでも見ればいいだろう。
冬季深夜アニメ一覧を見ながら、これから見ていくであろうアニメをチェックしていく。
「お、『じぇじぇの珍妙な旅』と『実行委員会役員達』もやるのか。これは要チェックだな……」
画面をマウスホイールを使ってスクロールしていき、頭の中にメモする。
アニメ、マンガ、ライトノベル、ゲーム……俺は俗にいう、『オタク趣味』のサブカルチャーにハマった。受験前のストレスで若干情緒不安定になっていたところを、友達が気分転換にどうだ、と教えてくれたのがきっかけだった。
それ以来どっぷりハマり、今ではお小遣いのほとんどがこの趣味に消えていっている。
画面を一番下までスクロールし終える。これでチェックは終了だ。
「さてと……お年玉はいくら貰えるかねぇ」
明日に入ってくるであろう大金を夢見ながら、俺は目を瞑る。
――数分も経たないうちに、俺は意識を手放した。