第一話「遅刻と出会い」
第一部「俺の高校0」
神騎高校、それが俺の学校の名前だ。
俺の住んでる町、いや、地方、いや、おそらく日本で一番大きな高校だ。
ただ大きいというわけではない。施設も充実していて教師も一流教師ばかりだ。
しかし決してエリート校というわけではない
レベル的には並の高校と大した差はなく、進学先としては無理なく受験できる
実際俺だって大して勉強もしなかったのに推薦で楽に入れたほどだ
無事高校に入れたのは良かったが、一つ問題、いや、大問題があった。
その原点とも言える入学当時の話を今から話そうと思う。
下らないように思えるだろうが、俺にとってはかなり重要だ。
毎日が戦争と思えるくらいに・・・。
ジリリリッジリリリッ
俺の耳に雑音が響いてきた。
睡眠という名の幸せを奪う残虐な破壊兵器だ。
・・・・・・すいません嘘です、ただの目覚まし時計です。
だが誰だって目覚まし時計が鬱陶しいと思った試しはあるだろう。
俺のだってこの音はかなり鬱陶しい。だが目覚まし時計は悪くない。
一人で起きることのできない愚かな人間達をその独特な音で起こしてくれる・・・いわば救世主だ。
だから人間達は素直に起きる義務があるのだ
無論俺は素直に起きる、特に今日は。
何故なら今日は神騎高校の入学式だからだ。
入学式が始まるのが8時半、余裕を持って目覚ましを7時10分に設定しておいたから何の問題もない。
俺はとりあえず上体を起こし雑音の原点であるスイッチを押した。
「あ潤オ潤オ・・・」
わずかだがカーテンの間から太陽の光がさしこんでいるのがわかる。
晴天だ。素晴らしい学校日和じゃないか・・・!
思いきって カーテンを全開にすると案の定、まぶしい光が一直線に俺の目に飛び込んできた。
フフフ、どうやら俺は太陽にも祝福されているようだ。
さ潤オて、それでは早速学校へ行く準備を・・・。
「・・・・・・ん?」
はて?おかしいな、目覚まし時計が8時10分をさしているように見えるのだが・・・・・・。
念のため携帯の時間も確認してみる。
8時10分。
・・・・・・・・・わお、遅刻だ。
「うがぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!」
慌てて布団から離脱し、壁にかけてあった制服に手を出すと急いで着替えを開始した。
迂闊だった・・・まさか一時間遅れで設定していたとは・・・。
入学初日に遅刻など冗談ではない!
十秒単位で着替えを終わらせた俺はカバンを手に取り、部屋を出るとそのままドアに直行し、家を出た。
とある理由で俺には両親がいないため行ってきますとは言わない。
俺はあらかじめ家の前にとめていた自転車に飛び乗ると鍵のロックを解除し、猛然と走り始めた。
最悪だ・・・!マジで最悪だぁ!!
初日一人だけ遅刻などしてきたら、先が非常に気まずい。
最悪の場合不良と思われてもおかしくはない・・・。
「くっそぉぉぉおぉぉ!!俺だけ遅刻してたまるかぁ!!」
「残念だが・・・一人ではないぞ?」
「は?」
視線を横に移すと、そこには俺同様自転車を猛スピードで走らせている神騎高校の女子生徒がいた。
背中辺りまで伸びた綺麗な黒い髪が特徴的な彼女は一目で美人という印象を受けた。
しかしその時俺はまだ気づいていなかった。
彼女との出会いが俺の人生を大きく変えることになるとは・・・。