第3話 街への到着とギルド登録
今回は説明、説明、また説明。
ちょっと長くなってしまいました。
人気の無い森の中の街道を巨大なイノシシを引き摺りながら進む少年が一人。
街道に出てからかれこれ二時間、人っ子一人現れない。
「むう…、自転車が結構通ってたみたい何だがなぁ…。」
地面を見ると、剥き出しの土の道には細い車輪の後が幾つも残っている。
最初の内は近くに民家でもあるのかと思ったのだが、その様なものは一向に見えてこない。
疑問に思いながらも今では半ば諦めている。
「腹減った…。」
今日は目が覚めてから何も口にしていない。
いや、歪みに飲み込まれてから朝まで眠っていたのなら、最低でも丸一日何も食べていない事になるのか。
腹も減るはずである。
「腹減った!メッシ食わせー!腹減った!メッシ食わせー!………はぁ。」
気を紛らわせようと騒いでみるも、そんな事で腹が膨れるわけも無く。
溜め息一つ。
時刻は三時、このまま民家が見つからなければ野宿は確定。
火を起こす事も出来ず、猛獣が出没する森の中で過ごすのは全力で遠慮したい。
最悪、食事も生で猪肉を貪らなければならないかもしれない。
そこまで考えると気が滅入ってくる。
「…ん?」
脳内でこれからの鬱展開に悶えていると、視界の先で森の木々だ途切れているのが目に入ってきた。
「おお、森から抜け出せた!?」
やったぞ木の枝!スゴいぞ木の枝!
気分一転、森の終わりに喜びも露わに足を速める。
森を抜け出せば、そこは一面の草原が緩やかな傾斜を描いていた。
何とも牧歌的な光景である。
片田舎とは言えゴミゴミとした現代日本で過ごしていた宗太である、観光で訪れていたならどれほど心安らぐ光景だろうか。
そしてその先には…。
「──…城?」
巨大な城壁の中には城を思わせる建築物と、街と思われる小ささな建物が微かに確認する事が出来た。
てっきり日本に居たものと思っていたのだが、西洋圏まで来ていたというのか。
宗太は思いもよらない事態に、呆然とその場に立ち尽くしてしまった。
「──…ハッ!」
どれだけ立ち尽くしていたのか、気を持ち直すととりあえず城塞に向かって歩く事にする。
日はとっくに傾いているのだ。
急がなくては日が暮れてしまう。
早足で向かうこと数十分、道なりに進むとこれまた巨大な門に辿り着いた。
入口脇に灰色に輝く鎧を着込んだ数名の兵士らしきものが、槍を手に警戒している。
時代錯誤も甚だしい格好だ。
宗太がイノシシを片手に近づいていくと、こちらに気付いた兵士が槍を向けて問うてきた。
「止まれ!貴様は何者だ!」
宗太はどう答えたものか悩みつつも何とか返答する。
「えーとですね…、気が付いたらあっちの森の中に放り込まれてて、自分にも何がなんだか…。ここって何処なんでしょうか?」
そう言って来た方角、森の中を指差す。
「イーヴルニスの森からだと?…貴様、魔族か!?」
そう言うと兵士は刺し殺さんばかりに槍を突き出してくる。
「え、ええ…!?」
宗太は訳が解らず混乱する。
「少しは落ち着かんか、ロイド。」
宗太が狼狽えていると、そう言いながら奥から一人の兵士が出て来る。
歳は40くらいだろうか?
ガタいのいい鍛え抜かれた体躯は歴戦の戦士の風格さえ漂ってくる。
「部下が済まんな。俺はモーリス、良ければ中で話を聞かせてくれんか?」
モーリスと名乗った兵士の言葉にロイドと呼ばれた兵士は反論する。
「危険です!魔族かも知れない者を中に入れるなどと…!」
「落ち着けと言っとるだろう。確かに黒髪黒眼といった風貌や身なりは珍しいが、居ないという訳ではないし魔族にしては小柄。羽も尻尾も角すら見当たらんではないか。」
そう言われると漸くロイドは黙る。
「では改めて、中で話を聞かせては貰えんかな?」
上司と部下の言い合いに付いて行けずにぼうっとしていると、ロイドを黙らせたモーリスが再度訊ねてきた。
よく観察してみると、表情こそは柔らかいが目が笑っていない。
此方の一挙手一投足すら見逃すまいとしているようだった。
「分かりました。」
断ったらどうなるかと不安になり即答してしまう。
「そうか、それは良かった。では付いてきてくれ。」
そう言うとモーリスは門の中、詰め所のような場所に向かう。
(早まったかな?もし納得して貰えなかったらどうなるんだろ…?)
後ろをロイドともう一人の兵士に固められながらモーリスに付いて行く宗太は、今更ながら不安を覚える。
と、詰め所の前まで来た所で引き摺っていたイノシシの存在を思い出す。
「あの、コイツはどうすれば…?」
「ああ、ロングホーンボアか。ひとまずコチラで預かろう。そこらに置いといてくれ。」
そう言ってモーリスは詰め所内の隅を指差す。
「分かりました。」
宗太が隅にロングホーンボアを置いたのを確認したモーリスは更に奥の部屋へと入っていく。
奥の部屋は隊長室とでも言うべきか、執務机と書類、ソファーに応接机が置いてあるだけの質素な部屋だった。
「そこに掛けてくれ。ロイド、済まんが水晶を持ってきてくれんか。」
モーリスは宗太にソファーに座るよう促すと、入口に立つロイドに指示を出し、自分も反対側に座る。
「改めて自己紹介をしよう。私はここ城塞都市ハーベルの衛兵隊長を務めるモーリス・ブラウンという者だ。さて、いきなりだが君の素性と何故イーヴルニスの森から来たのかを聞かせて貰っても?」
(魔族云々とか訳の分からん事言ってたし包み隠さず答えるのはマズいか…?)
「あ、自分は曉…いや、ソウタ・アカツキと言います。あの森に居たのは自分でも良く解らなくて、気が付いた時には着の身着のまま放り出されてたとしか…。」
モーリスに問われるままに、しかし重要な事ははぐらかしながら答える宗太。
それを聞いたモーリスは顔を顰める。
「ソータか、変わった名前だな。しかし、何も持たせずにイーヴルニスの森に放り出すとは…何か恨みでも買ったか?」
「そんな事は無いと思うんですが…。」
「失礼します!」
モーリスの疑問に宗太が苦笑しながら答えた時、ロイドが手に水晶球を持って入ってきた。
「おお、来たか。ここに置いてくれ。」
そう言って応接机の上を示すと、ロイドは水晶球を慎重に置く。
「これは…?」
宗太が訊ねるとモーリスは説明をしてくれた。
「これは俗に識別球と呼ばれる物でな、手を翳す事でその者の持つ魔力属性を調べる事が出来るのだ。」
そう言って手を翳すと水晶内が赤く輝き出す。
「と、まぁこんな感じだ。君もやってみてくれ。」
宗太は促されるまま水晶球に手を翳す。
すると、水晶内が緑色に輝く。
「ほう、風に…若干だが土もあるのか?優秀なのだな。」
僅かながら茶色が混ざっていたようだ。
そう言ってモーリスは頷く。
心なしか表情が柔らかくなった気がする。
「あの、これにはどういう意味が…?」
宗太が質問すると、モーリスは済まなさそうに答えてくれる。
「うむ…実はな、先日魔族が近々この都市を攻めてくるという情報がもたらされたのだ。それで警戒を強化した所、魔王国領であり魔獣の巣窟であるイーヴルニスの森から正体不明の人間がロングホーンボアを引き摺りながら現れた。それで君を魔族かどうか調べさせて貰ったのだよ。魔族は少なからず闇属性を持っているのでね。」
そう言って笑う。
入口の兵士も緊張を解いてくれたようだ。
室内の張り詰めた空気が弛んだ気がした。
「手数を掛けて済まなかったな。お詫びといっては何だが通行税は此方で免除させてもらうよ。」
「助かります。財布すら無い状態でしたので。」
そう言うとモーリスは大声で笑い出した。
「ハッハッハッ!そいつはまた災難だったな。まぁ、あのロングホーンボアをギルドに持ってけば丸ごと一頭だ、それなりの値段で買い取って貰えるだろう。そうなると早めに行かんとギルドが閉まっちまうな。ロイド!手早く手続きをしてやれ!」
モーリスはロイドに指示を出すと宗太に訊ねる。
「ギルドまでの道は…分からんだろう。ロイドに案内させよう。ついでに荷車も貸そう、ロングホーンボアを運ぶのに使うといい。」
「重ね重ねありがとうございます。」
宗太はモーリスの好意に感謝を述べる。
「気にしないでくれ、魔族なんぞと間違えて不快な思いをさせちまった詫びだ。荷車は売り払った後で返しに来てくれれば良い。」
その言葉に宗太は改めて礼を言うと、手続きの為に執務室を後にする。
詰め所で名前や目的等簡単な質問を受けた後、滞在許可証を受け取りギルドに向かう。
ギルドに登録していない者は身分確認が出来ない為、許可証が無いと色々と不便なのだとか。
ロイドはロングホーンボアを売るついでにギルドに登録しておいた方が良いとアドバイスしてくれた。
ハーベルで手続きを取った西門から続く大通りを暫く進むと、目当ての冒険者ギルドはすぐに見付かった。
道すがら教えて貰った情報によると、ハーベルは東西南北四つの区画に別れており、魔王国に近い危険な西区が冒険、傭兵ギルドや武器・防具店の集まる区画になったのだとか。
因みに、南が市場等の商業区、北が城を含めた高級住宅区、東が一般住宅区らしい。
「じゃあ、俺は詰め所に戻るよ。後はギルドの受付の指示に従えば諸々の手続きは出来る。」
そう言ってロイドは来た道を引き返す。
「ありがとうございました。」
宗太はロイドに礼を言うと、ロングホーンボアを持ち上げギルドの扉を開ける。
大きめの扉をくぐると、正面にカウンター、左手の壁に書類が何枚も張り出され、その手前には幾つかのテーブルと椅子。
何ともベタなギルドであった。
「すいませーん、素材を買い取って貰いたいんですが…」
「あ、はい。…い!?」
宗太が入口からカウンターの受付嬢らしき人に声を掛けると、宗太を確認した受付嬢は驚愕の表情を浮かべた。
ギルド内にたむろしていた冒険者達も皆一様に口をあんぐりと開けて宗太を見ている。
「コイツを買い取って貰いたいのですが。」
皆の反応を不思議に思いつつもカウンターの前まで進むと、右肩に担いだロングホーンボアを示しながら受付嬢に言う。
「…あ、は、はい!では向かって左手のドアから奥にお進み下さい。」
何とか我を取り戻した受付嬢がカウンター脇、奥へと続いていると思われる扉を指し示すと、宗太は礼を言って奥の部屋へと入っていく。
それを見送った冒険者達は宗太が消えた後も暫く呆然としたままだった。
奥の部屋は思ったよりも広かった。
入って左手には恐らく荷車等で運び込むためだろうか、正面入口よりも大きな扉があり、依頼の書類が張り出されていた壁の裏側に当たる場所には保管庫なのか、重厚な鉄の扉がある。
「すいませーん、コイツを買い取って貰えますか?」
宗太は右側にカウンターを認めると、再び訊ねる。
「あ、はい。…て、嘘ぉ…。」
宗太に気付いた受付嬢はこちらでも呆然と宗太を見つめる。
「…あの、コイツってそんなに珍しいんですか?」
その反応にいい加減不安になってきた宗太は受付嬢に訊ねる。
「…あ、い、いえ!ランクはC相当ですが、割とポピュラーな魔獣です。…じゃなくて!その…、重く無いんですか…?」
どうやらこの受付嬢、相当混乱しているようである。
「まぁ、そこそこですね。コレはどうすれば?」
先に進まないと判断した宗太は話を進めることにする。
「そこそこですか…。あ、そちらに置いて下さい。魔獣素材の買い取り確認お願いしまーす!」
宗太が床にロングホーンボアを置くと、受付嬢は裏に向かって声を上げる。
すると、奥から数人の男性職員が出てきてロングホーンボアを調べだす。
「お客様、査定の間に買い取り手続きをさせて頂きます。ギルドカードはお持ちでしょうか?」
どうやら受付嬢はもう立ち直ったようだ。
流石は荒くれ共を纏める冒険者ギルドの受付嬢。
大したプロ根性である。
「いえ、実はまだ登録はしてないんですよ。」
「そうですか。では都市発行の身分証明書等はお持ちでしょうか?」
言われて宗太は詰め所で貰った滞在許可証を提示する。
「この許可証で大丈夫ですか?」
「はい、そちらで大丈夫です。ソータ・アカツキ様ですね、少々お預かりさせて頂きます。」
許可証を受け取った受付嬢は書類に何やら書き込んだ後、ロングホーンボアの査定をしていた職員と二言三言言葉を交わす。
「お待たせ致しました。今回の買い取りですが、ロングホーンボアが殆ど完全な形となりますので7万エリーでの買い取りとさせて頂きます。」
「え、エリー…?」
初めて聞く単位に宗太は頭上に疑問符を浮かべる。
「えっと…、失礼ですがお客様、入城手続きの際に通行税の方は…?」
不法入城と思ったのか、受付嬢が訝しげな表情で聞いてくる。
「あ、通行税は魔族に間違えられたお詫びだとかで衛兵隊長さんが免除してくれたんですよ。お金の方は小さい頃から人里離れた場所で修行の毎日で今の今まで接する機会も無く…。」
勿論修行云々は口から出任せであるが、何とか納得してくれたようだ。
「では、通貨の説明を致しましょうか?」
「助かります。よろしくお願いします。」
何と優しい受付嬢だろうか。
まるで後光が差して見えるようである。
「では…、ここフォートレス大陸では国を問わず共通通貨が流通しています。単位のエリーとは商業を司る女神エリーシャから来ていると言われており、貨幣の発行量は毎年女神エリーシャを祀る神殿の巫女が神託を受けて公正に決め、神殿が発行しています。」
そう言って幾つかの八角形と円形のコインを取り戻した。
よく見ると八角形のコインの方が少し小さいようだ。
「これが貨幣です。種類は下から角銅貨、銅貨、角銀貨、銀貨、角金貨、金貨、白金貨となります。白金貨だけは高額なので角貨幣はありません。」
「続いて貨幣単位ですが、角銅貨一枚が1エリー、銅貨一枚が10エリー、角銀貨一枚が100エリー、銀貨一枚が1000エリー…と10の倍数で続いて、最後の白金貨が100万エリーとなります。
角銅貨は使う人が少ないため余り見る機会は無いでしょう。
貨幣で呼ぶか単位で呼ぶかは人によって様々ですので、細かいですが両方覚えた方が良いと思います。何か御質問は?」
受付嬢は一息に説明すると質問があるか聞いてくる。
「神殿が全て発行しているとの事ですが、不正はどうやって防止しているのですか?それと、両替はどうすれば良いのでしょう?」
宗太の質問に受付嬢は笑って答える。
「今まで何度か神殿の司祭等と不正を画策した人は居たそうですが、その全てが企みが成功する前に金銭的不運に見舞われて没落したそうです。今では不正を働こうと考える人も居なくなったそうですよ。両替についてですが、大抵の都市に民間の両替商が居りますが5〜10パーセント程の手数料がかかります。お客様はこの後ギルドへの登録はなさいますか?」
「はい、一応その予定です。」
宗太の答えに頷くと、笑顔で続ける。
「では、表のカウンターでギルドカードを提示して頂けば手数料無料で両替を御利用頂けます。これはどの都市の冒険者ギルドでも共通のサービスとなっておりますので必要の際は是非御利用下さいませ。以上で説明はよろしいですか?それでは改めまして、買い取り代金の7万エリーです。角金貨6枚と銀貨10枚にしておきました、どうぞお受け取り下さい。尚、ギルド登録手続きの際こちらの書類も提出して下さい。」
宗太が頷いたのを確認した受付嬢は、角金貨と書類を差し出す。
宗太がそれらを受け取ると、男性職員がロングホーンボアを保管庫に運び込む。
大の大人が五人掛かりでも少しずつしか動かない。
「そこそこですか…。」
受付嬢の呟きは聞こえない振りをした。
表の部屋に戻ると、登録手続きのためカウンターへ向かう。
「お疲れ様です。どのようなご用件でしょうか?」
すると、こちらも立ち直った受付嬢が良い笑顔で対応してくれた。
「えっと、ギルドへの登録をしたいんですが。」
「畏まりました。それではこちらの用紙にサインをお願いします。身分証明書と買い取り時に受け取った書類がありましたらそちらもお出し下さい。登録手数料は3000エリー、銀貨3枚となります。」
言われた通り、銀貨と書類を提出する。
「見たことの無いサインですねー…。」
サインを確認した受付嬢が不思議そうに呟く。
「拙かったですか?」
不安になって聞き返す。
日本で育って17年、外国語など書けるワケがない。
というか、さっきからみんな日本語話してるじゃないか。
「いえ、カードの再発行の際に必要になるだけですので。」
受け取った受付嬢はというと、特に気にした様子もなくカウンター奥の部屋に行き、書類を渡して戻ってくる。
どうやら奥の部屋は買い取り窓口と共通の事務室になっているらしい。
「カードの発行には少々お時間がかかりますが、その間にギルドについての説明を致しましょうか?」
「お願いします。」
ギルドについても聞いておく事にする。
冒険者ギルドは想像していたよりとても親切なようだ。
「冒険者ギルドとは、基本依頼者と冒険者間の仕事の仲介を行う組織です。依頼の内容は護衛や魔獣及び犯罪者の討伐、素材の採取など様々なものがあります。
あくまで依頼者は個人単位が基本ですので、戦争等に参加するのでしたら傭兵ギルドの方に登録下さい。両方登録されている方もいらっしゃいます。
丁度向かって左手の壁に依頼書が確認出来ると思いますが、その中で仕事内容と報酬から納得出来るものをお選び頂き、こちらのカウンターに持ってきて頂ければ受注手続きを致します。」
「報酬額ですが、基本一つの依頼を何人のパーティーで受けようと報酬額は変わりません。パーティー内で山分けして頂く事になります。しかし、護衛など人数が欲しい依頼では個別報酬となる場合もあります。キチンと依頼内容は確認するようにして下さい。その場合は報酬欄に『個別報酬』と記載されますので分かりやすいと思います。
また、提示されている報酬額は予めギルドの仲介手数料を差し引いた金額となっております。尚、ギルドを通さない依頼の契約にはギルドは一切関与致しませんのでご了承下さい。ここまでで何か御質問は?」
訊ねられて宗太は首を横にふる。
「では説明を続けます。次にランクですが、これはS〜Fの7段階に別れており、それぞれ2ランク上の依頼までしか受ける事は出来ません。下は制限がありませんが、ランクアップの審査の対象にはなり難いですね。ランクは依頼の達成状況やランクの高い魔獣を倒す等、実力があると認められる事で上がっていきます。
注意して頂きたいのは、依頼を失敗されると10パーセントの罰則金が発生致します。また、失敗を何度も繰り返すと実力無しと判断されランクが下がる場合もありますのでご注意下さい。」
「最後に依頼とは関係ありませんが、便利なギルドのサービスを説明させて頂きます。
ギルドでは、新しくやってきた冒険者の皆様に対して優良商店、宿屋などの紹介や両替、お金のお預かり、素材の買い取り、各種手続きの代行等を行っております。手続き代行は一部手数料が掛かる物もございますが、これらのサービスは基本無料でご利用いただけます。新しい都市にお越しになった際は是非ご活用下さい。
また、ギルド提携店ではギルドカードの提示により割引が行われます。割引率は店舗により異なりますが、大抵は5〜30パーセント程でしょうか。提携店は看板の隅にギルドの印である『盾に立て剣』が描かれています。」
そう言って一枚の紙を取り出して見せる。
紙にはヒーター・シールドの中心に両刃の剣が立て掛けられた様な絵が描いてあった。
「提携店は厳格な審査によって選別されますが、万が一詐欺行為等が起きた場合はギルドまで申し出て下さい。調査し、再発防止等に努めさせて頂きます。
説明は以上です。解らない事がありましたら、お気軽に職員にお訊ね下さい。」
受付嬢が説明し終えた時、奥からやってきた職員が受付嬢にカード渡す。
「お待たせ致しました。こちらがカードになります。ソータ様はロングホーンボアの討伐が評価され、Dランクからの開始となりました。頑張って下さい。
尚、カードの再発行と一年毎の登録更新ではそれぞれ手数料が発生致しますのでご留意願います。
それでは、ソータ様の今後のご活躍をギルド職員一同、心よりお祈りします。」
そう言ってお辞儀する受付嬢。
宗太も礼を言うと宿屋の場所を聞いてギルドを後にする。
外はすっかり暗くなっていた。
急いで荷車を詰め所まで持って行くと、衛兵にお礼を言い返却する。
ギルドで紹介された宿屋は西区の大通り、比較的ギルドに近い場所にあった。
一階が酒場兼食堂とはまたまたベタな…。
向かって左に上に上がる階段がある。
「いらっしゃい!一人かい?」
中に入ると恰幅の良いおば…お姉様が出迎えてくれた。
一瞬強烈な殺気を感じたのは気のせいだろう。
近くの客がこっちを見て青い顔をしていた気もするが。
「冒険者ギルドの紹介で宿を取りたいんですが。」
そう言いながらギルドカードを提示する。
「おや、アンタ冒険者かい。一人部屋で良いのかい?一泊二食で角銀貨5枚だけど。」
一応、暫く滞在するかも知れないので角金貨一枚を支払う。
「20日分前払いだね。もし宿を出る場合は残金返却するから言っとくれ。アンジー、お客さんを部屋に案内しておくれ!」
おば…お姉さんが店内で叫ぶと、給仕をしていた十歳くらいの女の子がやってきた。
「部屋を確認したら夕食を出すから降りてきておくれよ。」
おば…お姉さんはそう言うと給仕に戻る。
一々感じる殺気な何なんだ?
「ママにおばさんって言ったら凄く恐いのよ?あたしアンジェリーナ、アンジーって呼んで。よろしくね!」
「俺はソータ。よろしくね、アンジー。」
そう言って挨拶する宗太とアンジェリーナ。
食堂内におかみさんの怒声と客の笑い声が響き渡った。
その後部屋に案内されてから夕食を取り、今日は早めに寝る事にする。
今日は色々とあり過ぎて疲れた…。
(明日はどうするか…。)
そんな事を考えながら眠りに落ちていった。
他人との会話が入っただけでここまで長くなるか。
いや、説明のせいでしょうかね?
ご意見、ご感想お待ちしています。
次回、ついに魔王様が出る!!…予定。