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第2話 目覚めと遭遇、初戦闘で逃避行

「しらない天井だ…。」



目を覚ますと、そこにあるのは蒼と白、そしてそれらを侵食するかのように包み込む緑。



要するに森の中だった。



「言ってみたかっただけですよーっと…。」



誰に言うでもなく一人呟くと身体を起こし立ち上がる。



木々に遮られ日が余り当たらないためか、地面は水分を多く含んでいるようだ。



どれだけ寝ていたのか、制服に水分が染み込み背中が冷たい。



正直気持ち悪いのだが、日が遮られているため乾かす事も出来ないだろう。我慢する事にする。



「しっかし…、どこよ?ここ…。」



辺りを見回してみるが、そこにあるのは木、木、木。



正直言って人が足を踏み入れているのかも怪しい。



「何でこんな所で寝てたんだ…?」



急な展開で記憶が少々曖昧になっているようだ。



一度大きく深呼吸。



落ち着いた所で、記憶を辿ってみる。



「確か…、朝起きて、遅刻ギリギリで急いで学校に行って…。」



授業を真面目にとは言えないが受けていた筈だ…。



「んで、昼飯食ったら眠くなって、睡魔と闘ってる内に岡崎がバカやって田中先生(仮)に立たされて…。」



だんだんと記憶が(一部を除き)はっきりとしてきた…。



「変な感覚がしたと思ったら周りが歪み出して…?」



オーケーオーケー、眠る前の事思い出しましたよ。思い出しましたとも。



「…どこよ?ここ…。」



いくら眠る前の事を思い出したとしても、起きた後の事との繋がりが解らないなら意味が無いのである。



「…そうだ!携帯で…。」



誰かに連絡するなりして状況の打開を図ろうと試みるも、ディスプレイには無情にも『圏外』の二文字…。



「はぁ…。どんだけ山奥に…てか、何故に山奥に…。いや、森か。」



ボヤいてみるも答えてくれる人は存在せず。



無駄に虚しさが込み上げてくるのみである。



「とりあえず、人が居そうな場所を探すしか無いのかな?」



深い森の中、サバイバル道具どころか水も食料も無いのだ。



助けが来るかも分からない中、何時までもこの様な場所でじっとしているのも不安になる。



「…というか、熊とか出てきたら恐い。てか、出てきそうで恐い。」



本音などそんなものである。誰だって野生の獣は恐いのだ。



「さってと、どっちに進めば良いんだ?最低でも川ぐらい見つけたい…。」



周りは木ばかり。太陽の位置でかろうじて方角は判るのだが、現在地が欠片も判らない状況では大して意味がなかったりする。



「仕方ない、こういう時はアレに限るか。」



そう言うと、地面に落ちていた一本の木の枝を拾い上げ地面に立てる。



手を離すと、枝は南東を指し示すように倒れた。



「よし、こっちか。」



どうやら未だ混乱は治まっていなかったようである。



しかし、落ち着かせてくれる者などいる筈もなく。



宗太は深い森の中を歩き出した。








────────




どれだけ歩いただろうか、昇りかけだった日は頂上に達している。



時計を確認する。一時十五分。



まだまだ余裕はあるとはいえ、日が暮れる前には森を抜けたい。



何故か肉体的な疲労は感じないのだが。



「腹…、減ったー…。」



とは言え、精神的な疲労や空腹感だけは如何ともしがたい。



片田舎に住んでいたとはいえ、森に踏み込んだ経験などない宗太には食べられる木の実などの知識はない。



下手に食べて体調を崩すのも嫌なので、木の実や茸を見付けても手を出せずにいた。



そんな時である。



──ガサガサ



何かが落ち葉を踏みしめ歩いてくるような音が宗太の意識の隅に届いた。



(……?何だ…?)



音は後ろ、宗太が歩いてきた方角から聞こえてくる。



何とも嫌な予感がする。



はっきり言って振り返りたくない。



だが、予感は所詮予感。森に入っていた人が発見してくれたのだとしたら出口まで案内もして貰えるかもしれない。



ガサガサガサッ



そんな風に悩んでいると音は大分近くまで来ていた。



意を決して振り返る。



「ブルルルルルッ」



そこには巨大なイノシシが居た。



体長は二メートルを越えるだろうか。下顎からは二本の大きな牙が突き出ている。



それだけ見れば只の巨大なイノシシなのだが──それでも十分脅威ではあるのだが──額からは何故か一本の角が突き出し、背中にも棘の様に小さいながらも幾つか付いている。



そんな異様なイノシシ様は鼻息荒く呆然としている宗太を睨み付けている。



(ななな、何アレ!?(ヌシ)!?この森の主様(ヌシさま)ですか!?)



角の生えたイノシシなど見たことも無い宗太は混乱が頂点に達している。



不意に、イノシシが宗太を睨み付けたまま口を開けると、大きく息を吸い込みだした。



(何をしてるんだ…?)



宗太は意味も判らず見つめ続ける。



すると、イノシシの口内が淡い緑色に輝き出し、空気の砲弾を吐き出した。



「いいっ…!?」



宗太は訳も分からず横に飛ぶと、地面を転がって回避する。



すると、背後から爆発音と共に風が吹いてくる。



恐る恐る背後を振り返ってみると、その場の木々は薙ぎ倒され、地面が抉れた光景が目に入った。



直撃したと思われる木は半ばから砕けて(・・・)いる。



(じょ、冗談じゃねえぞ…!?)



あんなモノが直撃すれば人の身体など容易くボロ雑巾のようになってしまう。



背中を冷たい汗が流れる。



「ブルルルルルッ!」



獲物を仕留め損なったイノシシは怒りも露わに一鳴きすると、再度口を開け息を吸い込む。



(──ヤバいっ!)



そう思った時には身体は勝手に動き、後ろを向いて走り出す。



ドゴォォォン!!



背後、自分が先ほどまで居た場所から爆発音が聞こえる。



次いで吹き荒れる風に煽られながらも木々の間を縫って全力で逃げる。



続け様に二発、三発。



全てが宗太の背後に着弾する。



(あれ…?俺ってこんなに速く走れたっけ?)



宗太は自分が何時もより速く走れることに疑問を抱きつつも、逃げることに精一杯で深く考えることは出来ない。



イノシシは圧縮弾では仕留められないと悟ったか、宗太を追いかけて走り出す。



突進の威力のまま角で突き刺せば、大抵の獲物は仕留められると理解している。



意外にも獲物の足が速いのは予想外だが、それも時間の問題だろう。



そうした追いかけっこを続けること凡そ一時間、じりじりと距離を詰められる中、宗太は横に長く木々が途切れている場所を見つけた。



(──…街道、か?)



舗装されてはいないが、狭い訳ではない道がそこにあった。



しかし、その一瞬気を緩めてしまったのが拙かった。



宗太の走る速度が遅くなったのを好機と見たか、イノシシが更に速度を上げて突っ込んできた。



「……!?うおっ…!?」



背後からの気配を察した宗太は辛うじて横に飛ぶことで、イノシシの一撃を回避する。



避けられたイノシシは前方で停止、振り返る。



宗太は街道を目の前にして回り込まれた形になった。



「うわっと…!」



振り返ったイノシシは宗太を仕留めようと突進してくるも宗太は横に飛んで避ける。



イノシシは進路上にあった木を薙ぎ倒し停止する。



「…怒ってらっしゃる?」


長い追いかけっこでジレたのか、イノシシはかなり鼻息が荒くなっていた。



口を開け再度圧縮弾を放つが、何度も見たソレ。



宗太は風圧でバランスを崩しながらも回避に成功する。



と、突如イノシシが突進してきた。



今まで単調な攻撃しかしてこなかったのが、ここにきて連続攻撃を仕掛けてきた。



(──やられる…!!)



迫り来る巨体。

バランスを崩した状態で回避出来る筈もなく、目を瞑り衝撃を覚悟したと同時に無意識に拳を前に突き出した。


(───…!!……?)



メキッというイヤな音の後に何かが倒れるような音。



腕に若干の衝撃を感じたものの、覚悟していた程のモノは来なかった。



「……何で?」



恐る恐る目を開けてみると、そこには角の下、眉間の辺りが陥没したイノシシが痙攣しながら横たわっていた。



「はぁ〜…。」



予想だにしなかった急展開に思考が付いていかず、精神的疲労と相まってその場にへたり込む。



「何で一発でイノシシ仕留められたんだ…?虎殺しならぬ猪殺しってか?どこの武道の達人だよ…。」



理解出来ない出来事に一人ボヤく。



「あれだけ走ったのに殆ど疲れて無いし…、一体どうなってやがんだ。」



本来であれば答えてくれる人がいたのだが、宗太の問いは誰にも聞こえる事なくただ木々に吸い込まれるだけだった。



「…さて、行くか。」



疑問は幾つも湧いて出て来るが、解決のしようがないのなら悩むだけ無駄である。


気を取り直して人のいる場所を探す事にする。



「…と、その前にコレどうするか。」



目の前には先程仕留めた巨大イノシシ。



とりあえず足を掴んで引き摺ってみる。



「…軽っ!」



殴った時の衝撃の軽さから考えてもしやと思ったのだが、せいぜい20キログラム程度にしか感じられない。



ともあれコレなら運べそうである。



イノシシの足を掴み上げると街道まで出る。



「右か左かか…」



一本道の街道をどちらに進むか迷ってしまう。



「よし、決めた!」



そう言うと、地面に落ちている木の枝を拾い上げる。



困った時の神頼みならぬ枝頼み。



木の枝を地面に立て、手を離す。



枝は街道を横切る形で倒れた。



「……気を取り直してもう一回。」



再度枝を倒すと今度は左。



「よし、行くか。」



宗太はイノシシを掴み直すと、街道を進み出した。





森の中でイノシシ狩り。

身体の変化にも余り深く悩まない宗太でした。



しかし、魔王様が出て来ない(笑)。

設定は主人公の宗太よりも詳しく出来てるのに。



誤字、脱字、「改行とか読みづらいよー」等の御意見など御座いましたらお気軽にどうぞ。

少しでも読みやすくなるよう変えて行きたいと思います。

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