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第18話 ルーベック到着と入城審査と

今回全然進みませんでした……。


年上キャラは一体何時になれば出せるのか。

「ルシフェラ様、ルーベックの街が見えて来ました」



「む? おお、ようやくか」



御者席に設けられた小窓から馬車内へとリースリットが声を掛ける。



街道を馬車で走る事さらに五日。



ようやく遠くに鍛冶の街ルーベックが見える位置にまでやって来ていた。



馬で五日というのは、どうやら馬単騎でという意味だったらしい。



馬車では僅かに遅れ、六日掛かってしまった。



尤も、一日程度遅れた所で大して問題も無いのだが。



道中は初日の森以来盗賊に出会う事も無く、森を抜けた頃からチラホラと商人達ともすれ違うようになった。



初日にすれ違わなかった原因は、やはりあの盗賊団にあったのだろう。



道中、偶々同じ場所で休む事になった商人に話を聞いた所、どうやら都市部の商人の間ではこの街道は『危険な道』としてウワサとなっているらしかった。



ならば何故そのような道を選ぶのか。



答えは『時は金なり』という事である。



脚で稼ぐ行商人などにとって一分一秒は大事な物ではある。



が、利益を考えれば増やせる護衛など高が知れているし、護衛を多少多目に雇った程度で安心し危険な道を選ぶということは、詰まる所商人としては二流以下だったということだろう。



確かに時間は得難い物ではあるが、命に代わる物は無いのだから。



二日目以降にすれ違った商人達は幸運だったと言える。



だが、それに気付かないのであれば、いずれ同じ過ちを繰り返すことになるのだろう。



その時に運が向いているかは知らないが。



途中、魔獣には幾度か遭遇したものの、全てルシフェラとリリスによって瞬殺されていた。



乗り物酔いで動けない宗太と戦闘に慣れていないアンジェリーナの代わり、という事だが、リリスは実に嬉々として魔獣を狩っていた。



久しぶりに実体を持てた事が余程嬉しかったのだろうか。



対象を自動追尾する攻撃魔術の複数発動などを難なくこなし、一同を驚かせていた。



ルシフェラの魔剣月夜・不知夜月がそれに似てはいるが、追尾系魔術は難易度の高さから現代では失われた技法であるらしい。



改めてリリスの技能の高さを思い知らされた。



『いやー、随分と掛かったねぇ』



そのリリスはと言うと、数度の魔獣退治で魔力を使い果たし、今は魔導書の中に戻っている。



魔力を使ったとしても、召喚主からの追加の魔力供給により実体化の時間は延びるらしいのだが、リリスが拒否したのだ。



曰わく、『実体化していると通行税や手続きが面倒だから』という事である。



しっかりしていると言うべきなのだろうか、理由を聞いた一同は余りに現実的な理由に微妙な反応を返すことしか出来なかった。



(全くだ……、街に着いたら先ず休みたい……)



乗り続けて慣れたのか初日よりはマシになったものの、未だ続く頭痛を堪えながら宗太はリリスに同意する。



吐き気は無いのが救いか。



と言っても、最早戻す物が胃の中に無いというのが事実なのだが。



「ソータさん、大丈夫ですか?」



「ソータ、街に着いたら直ぐに宿を取る。もう少し我慢せい」



相変わらず蒼白な顔色の宗太を見かねて、アンジェリーナとルシフェラが心配そうに声を掛ける。



馬車の中では終始この調子である。



延々続く頭痛も、二人にこうして声を掛けられると堪えられる気がするのが不思議だ。



「ソータよ、念の為、今の内に魔力の属性変換をしておくがよい」



「……え?なんでまたそんな事を?」



宗太が憎き頭痛を耐えながらも横を向くと、向かいの座席に座るルシフェラの手には既に黒く鈍い光沢を放つ弓が握られていた。



いつの間にか影の中から取り出していたようだ。



ルシフェラは弓の上端に弭槍(はずやり)を取り付けながら、説明を続ける。



「うむ、街に入る際に魔力属性の審査を受けるやも知れんからの。簡易版の識別球なら体内で属性変換した魔力を巡らせれば誤魔化せる。まぁ、それも割と高等な技術なのじゃがな、ソータなら問題ないじゃろう。魔術での識別阻害の方は、リリスに術式の改変を頼むしかないじゃろうしの。そちらは王都への道中で間に合うじゃろう」



「分かった。じゃあ、風と……火、水辺りで良いかな」



「うむ」



宗太は言われた通り、体内の魔力を変換して巡らせる。



頭痛により集中力を切らせば、直ぐに無属性へと戻ってしまうのだが……。



そうして馬車に揺られること更に一時間、太陽が頂点を過ぎた頃、ようやくルーベックの街の城門へと辿り着いた。



「ようこそ、鍛治の街ルーベックへ。旅の方ですか?」



「はい、審査の方よろしくお願いします」



城門の監視をしている衛兵に、御者席からリースリットが対応する。



「では、手続きをしますので皆さんはこちらに。規則ですので馬車も確認させて頂きますが、よろしいですね?」



衛兵に促され宗太達も馬車から降り、門に備え付けられている審査窓口へと向かう。



ルシフェラが了承の意味で頷くと、別の衛兵二人が馬車の荷台や内部などを詳細に調べだした。



これは密輸などを防ぐためである。



都市部の通行税は商人よりも冒険者などの方が安い。



その都市に店舗を持たない行商人などからは通行税として徴収するためである。



それ故、冒険者ギルドへと登録だけし、税金をごまかして利益を上げようと考える者が出てくるのも当然と言えるだろう。



その対策として、馬車や大荷物を背負った冒険者は度々荷物検査を受ける事になるのである。



拒否すれば入城は認められず、規定量以上の商品と思しき物品を持ち込む際は追加の税を払う、もしくは投獄される事になる。



投獄などは余程悪質と判断されなければ、滅多にあることでは無いのだが。



但し、冒険者にも基本追加税無しに持ち込み及び売却が認められている物がある。



魔獣の素材である。



優秀な冒険者がその都市周辺で魔獣を狩ってくれるならば、近隣の被害も抑えられ領主が兵を出す必要も減るためだ。



私兵を討伐に差し向けるより、冒険者ギルドに依頼を出す方が安く済む。



ならば冒険者から素材を買い取って行商するならどうか、と考えるだろうが、その様な事はまず起こらない。



冒険者にとっては商人に売ってもギルドに売っても値段に大差は無いからである。



商人としては利益を出す為に出来るだけ安く買いたい。



ならば、と冒険者は少しでもランクアップの評価に繋がるようにギルドで売却するのである。



ランクの高い冒険者の中には、都市の素材を扱う商店で直接買い取って貰う者も居るが。



どちらにせよ行商人にとっては、魔獣素材の売買は旨みが無いので手を出す者は居ないのである。



「身分証などがありましたらお出し下さい」



兵士に連れられて向かった場所はハーベルと違い、城壁内、外開きの城門より内側に設けられた小窓だった。



宗太は以前受けた審査との違いに、不思議そうに眺めていた。



実はハーベルの城門にも同じ物があり、普段はそこで審査されるのだが、宗太の怪しさから詰め所での審査になったのだった。



が、そこは宗太の知るところではなかったりする。



キョロキョロと周囲を見回す宗太を不審に思ったのか、衛兵達の顔付きが僅かに厳しいモノとなる。



「ソータ、初めての街が珍しいのは分かるが、あまりキョロキョロとするでない」



不穏な空気の変化を過敏に察知したルシフェラに窘められ、宗太は慌てて姿勢を正す。



そのやり取りを見て、衛兵達の間の張り詰めた空気が僅かに弛む。



新米冒険者が初めての審査で緊張の余り挙動不審になるのは別に珍しい事では無いのだ。



一応仕事であるから警戒はするが、衛兵達もそんな冒険者は何度も見てきたのである。



「ギルドカードで良いかの」



そんな宗太の態度に苦笑しながら、ルシフェラが窓口の衛兵にギルドカードを提示する。



次いで、リースリットとアンジェリーナもギルドカードを差し出す。



「ルシフェラ・レストールさん、リースリット・ノエルさん、アンジェリーナ・メナードさん、全員ランクDでハーベル登録の冒険者で間違い無いですね?」



「うむ」



窓口の衛兵の問いをルシフェラが肯定する。



「……それで、あなたは?」



書類に何やら書き込んだ後、衛兵が宗太の方を見る。



先程の挙動不審な様子から、若干探るような視線を宗太に向けている。



「あ、はい」



宗太は身分証を出していない事に気付き、慌ててギルドカードを提示する。



「ハハッ、慌てなくても良いですよ。ソータ・アカツキさん、ハーベル登録……、ランクB!?」



苦笑しながらギルドカードを受け取った衛兵は、内容を確認すると共に思わず絶句する。



それを聞いて他の衛兵達も驚く。



挙動から新米冒険者と思えばまさかのBランク。



熟練者とも言える実力を持っているというのだから、この反応も当然だろう。



不正な書き換えや偽造カードということも疑ったが、その様な形跡もなくカード自体も本物のようだ。



衛兵達の様子に何か拙いことでもあったかと内心焦る宗太だったが、咄嗟のことに何と説明すれば良いのか分からずつい黙ってしまう。



「ソータは今まで人里離れた森の中で武術の師匠と二人暮らしていたらしくてのう。冒険者としてはまだまだ初心者じゃが、ロングホーンボア程度なら一人でも容易く狩れる程の実力者じゃ。そのランクはそれがギルドに評価された結果じゃよ」



と、訝しんだ衛兵が再び口を開こうとした頃、見かねたルシフェラが助け舟を出してくれた。



「ロングホーンボアを? まあ、そういう事でしたら……。次は魔力属性の検査をさせていただきます。皆さん、順番にこちらの水晶に手を(かざ)して下さい」



ルシフェラの言葉もいまいち信じてはいない様にみえるが、とりあえず仕事を進める事にしたようだ。



カウンター脇から識別球を取り出すと、宗太達の魔力属性を調べるために促す。



「三属性が三人に、二属性が一人……ですか。今まで色々な冒険者を見てきましたが、属性持ちの人なんて初めて見ましたよ」



どうやら識別阻害は上手くいったようで、宗太はホッと胸をなで下ろす。



尤も、三属性持ちが三人も固まっているというのも異常な光景なのだが、衛兵達はその事に気付いてはいないようだった。



因みに、リースリットは識別阻害の魔術により、火と風の二属性のみ反応するようにしていたようだ。



これも(あるじ)を立てるということなのだろうか。



「あたしとソータさんは、ルシフェラさんとリースさんに魔術を教わりながら旅をしているんですよ」



「才ある者を育てるのも存外楽しいモノでのう。魔術師ギルドの偏屈共には任せておれぬわ」



衛兵は偏屈共という部分で思わず吹き出してしまう。



ともあれ、魔術も使えるならCランク魔獣の単独討伐も可能なのだろうと、宗太の実力と立ち居振る舞いの差異については一応の納得はしてくれたようである。



正拳一撃で倒したなどと言われれば信じなかったであろうが。



いい具合に勘違いをしてくれたようだ。



「それでは通行税、お一人につき銀貨一枚になります」



「じゃあ、四人分で」



「確かに。では良き滞在になりますよう」



通行税は宗太が代表して払い、衛兵に礼を言うと、馬車に乗り込み街へと進めるのだった。





外で煙草吸いながら執筆していたら、足首から先で11カ所蚊に刺されました。

指先とか刺すのは止めて欲しいです。


まあ、それは置いといて。


何の予告も無く、5ヶ月にも及ぶ休載をしてしまい済みませんでした。

ここに深くお詫び申し上げます。


続きが思うように書けず、つい読み専という逃げに走ってしまいました。

これからも投稿は不定期になるやも知れませんが、今後はここまで間を空けないように執筆していきたいと思います。



それではまた次回の投稿で。

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