第1話 異変は突如
「くわぁ〜…」
午後の授業、窓際一番後ろという特等席で少年、曉宗太は睡魔という強敵と熾烈な戦いを演じていた。
季節は四月、春の日差しと食後の満腹感、昨夜の夜更かしに極めつけは坊主の読経も斯くやという教師の声が聞こえてくる。
正に四面楚歌、怒涛の攻勢に自制心という防壁は陥落寸前である。
「じゃあ、…から…まで。曉、読んでくれ。」
勢いに押され船を漕ぎ始めた頃、現国教師田中先生(仮)に指されたが、如何せん今まで必死の攻防戦を繰り広げていたのだ、肝心な部分が頭に入って来なかった。
「67ページ5行目から68ページ2行目までだ。」
指された内容が分からずにいると、隣の席から中学以来の悪友、岡崎浩平が小声で教えてくれた。
なので俺は「ありがとう」と感謝の意を述べ席を立つと──
「すみません、田中先生(仮)。睡魔との抗争が激しくて聞いてませんでした。」
正直に述べる。人間正直が一番である。
途端に教室内は笑いに包まれるが岡崎は悔しそうな顔をしていた。
「俺は橋本だ!まだ名前覚えとらんのか…まあいい、じゃあ同じ所。岡崎読んでみろ。」
田中先生改め橋本先生は呆れながらも岡崎に振る。
岡崎はといえばついさっきまで爆睡していたのだ、分かろう筈もない。南無。
案の定わたわたとしたと思ったら、
「すみません、キレーなお姉様方とキャッキャウフフしてて聞いてませんでした。」
教室内が一瞬で真冬になった。
睡魔も裸足で逃げ出してしまった。恐るべし岡崎。
一体どの様な夢を見ていたのか非常に気になる所ではあるのだが。
「そうか、それはさぞかし楽しかっただろうな。そのまま立ってろ。」
田中先生もとい橋本先生は非常に良い笑顔で仰った。
ハッ、ざまぁ。
────────
そんなこんなで後5分で退屈な授業も終わりという頃、それは起こった。
(──…?何だ?)
何かがおかしい。
周りを見渡してみるも別段いつもと変わらないように見える。
しかし、何故か言いようのない不安、奇妙な感覚が押し寄せる。
まるで自分の周りの空間だけ変質しているような…。
気のせいだと自分に言い聞かせ、残りの授業に集中しようとした時…。
突如視界がねじ曲がった。
「あ、曉!?」
異変に気付いた橋本先生が叫ぶと、振り返った面々も騒ぎ出し教室内はパニックに陥った。
宗太の周りだけ空間が歪んでいるのだ。
「宗太ッ!!」
隣の席の岡崎が歪んだ空間から宗太を引きずり出そうと手を伸ばす。
宗太も必死に手を伸ばすが、本来一メートルもない筈の距離が届かない。
そうこうしている内に歪みはどんどん大きくなっていき、最早歪みの内と外がそれぞれ判らなくなった頃。
宗太の足元が円形に光り、やがて消えた。
歪みと、宗太と共に。
短い…。やべぇ短い。
投稿後確認してみて愕然としました。
てかプロローグに纏めちゃっても良かった気が…。
もっと精進致します。