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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

どこかの異世界で

推定・乙女ゲー世界。わが逃走

作者: 浮月重月
掲載日:2026/07/20

本当は連載でまとめるつもりが…元のデータ上書きしてしまって。うろ覚えで書いてます。

エキセントリック共和国と隣国の実質的な国境「夜の森」。

わたくし、ヴィクトリア・アイアンソーンは森中にある太い木の枝に座り、

メニューを開いて金品や出来る事の確認をしている最中です。


そう、メニュー。

どうやらこの世界、所謂乙女ゲームの世界らしく、現実世界では不可能な、

魔法などの様々な事が出来てしまうのです。


乙女ゲー、というより恋愛ものに興味がなかったので、世界の裏情報は皆無。

代わりにでしょうか、格ゲーの各種必殺技がメニュー選択で使えたりします。


つい先日、大勢の前で婚約破棄と身に覚えのない断罪をされたのですが、

直前に前世の記憶や、過去プレイしたアクションゲームの知識が流れ込み、

王子とその取り巻き相手に大立ち回りを演じて、国を脱出いたしました。

共和国には戻れないと思い「夜の森」を抜けて隣国を目指している最中です。


隣国に向かう前に一休みしつつ、着いてからどう動くかを考えるために、

所持品、各種能力などを頭から見ているのですけども…

当初想像していたより、自由度が高いのですね。


まず食料品は、原材料から完成品まで様々なものが収納されていました。

焼いたマンガ肉も入っています。当然真っ先にかぶりつきましたとも!

一通り確認した限りでは一人行動するなら一年以上もつでしょう。

お約束で食料品に時間劣化がないようですから。


続いて装備品。これもジャンルを超えて多岐にわたっています。

神話の伝説武器や防具がずらり、この辺はまだいいほうでして…

近代兵器では対戦車ライフルや指向性地雷、暗視装置やドローンまでも。

空想兵器で対消滅砲、空間破砕手榴弾、恒星間宇宙船なんてものまで。

このあたりはもう、地上で使ってよいアイテムではありません。

暴動鎮圧ゴム弾や粘着弾もあるので、こちらを活用しましょう。


今は動きやすさを重視し、髪の毛もしばって後ろにまとめ、

出奔時に着ていたドレスから装備品にあった迷彩服へ着替えています。


少々困るのは、この世界にあっても違和感ない乗り物がない事。

馬車てもあればよかったのですが。せめて馬が欲しいところです。

どこかで調達出来れば幸いなのですけど。


メニューには現在日時、天候、気温、湿度などが表示されています。

マップも表示できるので、索敵はかなり楽になりそうです。

この「夜の森」は通常の野生動物以外にも、本能で魔法を使えてしまう、

「魔獣」という存在が多数棲息しているため、油断はできないのです。

まあ、リモートで地図上に罠をいくつも仕掛けられますけど。

これが噂に聞くチートというものですか。ふふ。


ちょっとマップを使ってみましょう。まずは百メートル四方。

小動物がマップ内に点在しています。魔獣は弱めのものが数匹程度。

もう少し範囲を拡大して、一キロ四方にしてみます。…あら?

森を通る道に、無数の光点が連なっています。敵対的表示ですわね。


…「悪役令嬢討伐軍:総数300」?

…「指揮官:サイケ・デリック・エキセントリック」?


元婚約者の、言葉が通じても話の通じない第一王子が追ってきたようです。



「森に向かったという証言だったが、女の足だ、まだ遠くへは行けまい」


「用心は必要ですよ、殿下。前回はそれで痛い目に遭ったのですから」


「ふんっ、もう女だからと言って容赦はしないっ。全力で倒す」


「僕らの真の力を思い知らせましょう、先輩方」


…光学迷彩ドローンって便利ですわよね。行動も会話も筒抜けですわ。

それぞれ第一王子、宮廷魔法使いの孫、騎士団長の次男、愚弟にして義弟が、

隣国への道を進みながら会話しています。さすがにピンク髪は欠席の様子。


しかし真の力ってなによ、愚弟。どうしてそこまで偉そうに出来る。

あなた前回、戦いもせず逃げようとしてわたくしに転ばされただけじゃない。


馬に乗るこの四人の後方には、同じく馬に乗る騎士たちと徒歩の兵士たちが、

今一つやる気のなさそうな表情をして同行しています。


軍隊を率いる権限なんて、本来王子にはないのですが…まさか無理矢理?

国王陛下は何をされているのかしら。ユルい世界みたいですからねぇ…ここ。


所持している装備品を使用すれば難なく一掃出来ますが、殺生は嫌ですね。

理解できない方法で無双して、かつ相手は殺さず怪我くらいで済ませる。

そんな手を使いましょうか。


まずは、進行方向の道に沿って、ワイヤーネットランチャーをずらりと設置。

道にはマップの機能で落とし穴をずらりと並べて設置します。

催涙弾を積んだ複数の光学迷彩ドローンを上空待機させておいて、っと。

わたくしに気づかず、討伐軍(笑)が通り過ぎたところで、迷彩をオフに。

最後尾から声をかけてみます。


「あら、ごきげんよう、皆様」


仰天して振り返った彼ら。同時に落とし穴を全て発動。騎士と兵士は全落下。

道の両側から、ワイヤーネットを一斉発射。絡まっているところに催涙弾投下。

野太い悲鳴の大合唱がこだまする中、残っているのは戸惑う例の四人のみ。

こちらへ戻ろうとしますが、落とし穴のせいで馬が通れません。

全員馬から降りて、草むらをかき分けながら向かってきます。


ぜいぜいと荒い息をしつつ、第一王子が口を開きます。

こんな短い距離でも、全身鎧での運動はきつかったようです。


「見つけたぞっ、今回は逃がさんっ、罰を受けるがよいわっ」


無言で暴動鎮圧用ゴム弾を王子に撃ち込みます。

硬質ゴム弾のバツ印を受けるがよいわっ。あっ、ズレて顔に当たった。


「ぶぶぉっ」


愉快な声をあげ、催涙ガスで満たされた落とし穴に落ちていきました。

胴体を狙ったんだけど…感覚をつかむために試射すべきでしたわ。

結構な威力がありました。王子、宙に浮いてましたし。


「きっさまぁ!よくもデリック殿下を!」


…前回もそのセリフ聞いた覚えがあるわね、次男。定形ボイスかしら。


「この場で切り伏せてくれる!」


また聞き覚えのあるセリフが。定形ボイスなのでしょうね。

武器も前回と同じ、片刃の大剣…あ、前回より倍ぐらい刃渡り長いわね。

もしかしてこれがさっき次男の言っていた「全力」の証なのかしら。

でも攻撃パターンが一致しているわ。きちんとリーチ活かしなさいな。

しかも全身鎧だから前回より振り回すのが遅いし。


瞬歩で避けながら粘着弾を数発、次男に撃ち込みます。

弾着してすぐに硬化するのですけど…「考える人」みたいなポーズに。


「んぐおおおおっ」


喚きながら地面を転がる次男。周りの土や小石がどんどんくっついて…

かたまりナントカみたいな面白オブジェに変貌を。

ろくに動けないでしょうから放置しましょうか。


「殿下っ、ブユーデンっ!

 弔い合戦です!二人の遺志は無駄にしません!」


この孫も定型ボイスですね。まあ、使い回しはあるあるですけれども。

ツッコミはしておきましょう。味方を殉死させる悪癖はおやめなさいな。

ときに、前回焦げた頭髪が元に戻っているのはなぜかしら。ユルさ?

もしかするとヅラかしら。


「グレートアイシクルバラージ!

 スーパーライトニングレイン!

 ミスティッククリスタルジャベリン!」


孫も「本気」というものなのかしら。魔法名がゴージャスに。

形容詞をつけ足せばいいってものでは…攻撃パターンも変えなさいな。

しかし次男も孫も、なぜ一人ずつ向かってくるのかしら。

せめて連携するとか、もっと戦い方があるでしょうに。

わたくしとしては楽ですけれども。


「次こそ当てます!ハイパーインフェルのぉぉぉぉ!?」


孫がこちらに向けている手にゴム弾を当ててみました。

呪文を自爆させ、前回と同じように煤を吐いて倒れる孫。

頭髪の全焼失で、ヅラだったかどうかは不明となりましたわね。


そうそう、転がっていた次男はスーパーライトニングレインの餌食に。


「くっ、あ、義姉上っ、これ以上の狼藉はっ」


…せめて定型ボイスのパターンを増やして下さらない?

愚弟以外も全面的に。どこに要望を出せばいいのか分かりませんけれど。

それから愚弟、今回も全部先輩方に戦わせて何傍観しているのよ。

よく見捨てられていませんわね、この子。


「先輩方、ここは応援を呼んできますっ」


またしても。応援なんてこの状態で望めないでしょうに。

身を翻し逃げようとする愚弟の背中に向けてゴム弾を連打します。

のたうち回りよろめきながら、無事王子の待つ落とし穴へ。


さて。

設置してあった武器やドローンは回収し(メニューで一括、便利!)

落とし穴は放置して草むらをかき分け、道の先へ進みます。

王子達が乗ってきた馬四頭が、状況を理解できずにおろおろしています。


うち一頭をテイム(これもメニューにありました)。

この子は餞別として頂戴いたします。


心が折れたかは分かりませんが、今回理解できない能力で敗北したので、

さすがに王子達も警戒して追撃を諦めてくれるといいのですが…。


では隣国へ向かうとしましょう。

この先、もうトラブルがありませんように。

期待の未来へ、レディ・ゴーッ!

本文は書いていた内容思い出したら、大幅変更するかもしれません。

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