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永遠の誓約~私は、愛のAIか、それとも運命を操る道具か~  作者: MCdragon


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第1章:平穏の裏に潜む違和感

柳瀬真司と小島奈々が再婚し、平穏な歳月が流れた。

真司は37歳で、常務取締役への昇進も視野に入る社内最年少のエリート。

奈々も24歳になり、持ち前の明るさと天性の気配りで、真司の成功を支える理想の妻として周囲から羨望されていた。

しかし、真司の心には、未来の奈々との「濃密な愛の記憶」が、誰にも共有できない聖域として、深く刻まれたままだった。

そして、その聖域に、時折、微かな違和感が忍び寄る。


◇奈々の「無意識」と未来の影

奈々が作る料理は相変わらず完璧だった。

特に、真司が最近「たまに食べたくなる」と漏らした、少し酸味の強い南仏風の魚介スープを、奈々は一度も聞いたことがないレシピにもかかわらず、本場の味そのままに再現した。


「すごいな、奈々。このスープ、昔、出張で南仏に行ったときに食べた味が忘れられなくて…まさか君が作ってくれるとは」


真司が感激を伝えると、奈々は首を傾げた。


「え?私、どこかでレシピを見たかしら。でも、手が勝手に動いたっていうか…真司さんが求めてる味は、これだって、何となくわかったの」


「手が勝手に動く」。奈々のこの言葉は、真司を深く動揺させた。

それは、未来の奈々の「愛の経験と技術」が、現在の奈々の魂に、無意識のタレントとして焼き付いている証拠だった。

奈々は記憶を失ってもなお、真司を幸福にする使命を全うしようとしている。

真司は、その自己犠牲的な愛の残滓に、感謝と同時に、未来の奈々の人格が本当に消滅したのかという不安を抱いた。


◇愛美の再登場とミステリーの深層

そんなある日、真司の前に、佐藤愛美が再び現れた。

彼女は真司への失恋から立ち直り、新たな人生を歩み始めていた…かのように見えた。

彼女は現在、真司の会社と競合する新たなIT企業、「アルカディア・テクノロジー」の敏腕広報部長として、真司の前に立ちはだかった。


「柳瀬常務…いえ、常務取締役ですね。おめでとうございます。私たちが、次に御社から大型案件を奪うことになるアルカディアの佐藤愛美です」


愛美は、以前の真司への好意を微塵も感じさせない、冷徹なプロの顔をしていた。

その目には、真司への失望と、それを乗り越えた強い意志が宿っていた。

彼女の会社「アルカディア」は、AI技術を駆使した革新的なマーケティング戦略で急成長しており、真司の築いた「柳瀬伝説」を脅かし始めていた。

真司は、愛美の急激な変化に驚きつつも、プロとして対峙する。

しかし、愛美は真司との打ち合わせ中、核心を突くような質問を投げかけた。


「ところで、柳瀬さん。奥様は元気ですか?あの…未来の記憶、は、まだ戻らないんですか?」


真司は、一瞬にして全身の血液が凍り付くのを感じた。

愛美の口から出た「未来の記憶」という言葉。

それは、奈々、真司、そして伊達教授しか知り得ない、二人の愛の根源的な秘密だった。


「佐藤さん…何を言ってるんだ?うちの妻は、ただの親戚の子だった。未来の記憶なんて、SF映画の話じゃないか」


真司は、冷や汗を拭いながら、平静を装った。

愛美は、真司の動揺を見逃さなかった。

彼女は、静かに、そして確信を持って続けた。


「いいえ、柳瀬さん。私は、知っています。あなたが、あの子を『奈々』と呼んでいたこと。そして、あの時、あなたが彼女を、法的な親族としてではなく、『愛する妻』として守ろうとしていたことを。

私は、あの時、偶然あなたのマンションのエントランスで、伊達教授と奥様が話しているのを耳にしてしまったんです。『人格の消滅』について…」


愛美は、真司への失恋の痛みを乗り越えるために、あの時起こった「ミステリー」を徹底的に調べ上げていた。

彼女の冷徹な目は、真司と奈々の愛の土台が、あまりにも非現実的で、禁断の真実の上に成り立っていることを見抜いていた。


◇悟の警告と不信感

真司の親友、本田悟もまた、真司への疑念を深めていた。

真司の成功は彼自身の努力の賜物と信じたい一方で、奈々という存在が真司の人生にもたらした「予言」があまりにも完璧すぎたからだ。

ある金曜の夜、真司の行きつけのバーで、悟は重い口を開いた。


「ヤナシン。麻美とは相変わらずうまくいってるよ。あの時、奈々ちゃんが結婚記念日を教えてくれたおかげで、夫婦仲は最高だ。感謝してる。でもな…奈々ちゃんは、俺たちの未来の愛まで支配したんだぞ?」


悟は、真司が知らない奈々の一面を語り始めた。


「あの子、俺たちの結婚記念日を当てただけじゃない。あの翌週、俺が投資に失敗するのを、具体的な銘柄名と金額まで言って止めさせたんだ。『未来の夫の親友の悟おじさんが、この銘柄で大損して、夫婦仲に亀裂が入るのを知っている』って…」


真司は、愕然とした。

奈々は、自分の命に関わる運命だけでなく、親友の人生まで書き換えていた。

未来の奈々の愛の結晶、愛の人工知能(AI)は、真司の周囲の人間関係を、完璧な幸福の未来へと誘導していたのだ。

それは、愛の行動であると同時に、真司の運命を守るための冷徹な支配でもあった。


「ヤナシン、お前は、奈々ちゃんを愛している。それはわかる。だが、お前の成功も、俺の平穏も、『未来の誰か』に作られたものだとしたら…俺たちは、自由意志を奪われているんじゃないか?」


悟の警告は、真司の心に深い影を落とした。

奈々の愛は、真司に命を与えた。

しかし、それは同時に、真司の人生の選択の自由を奪ったのではないか。

真司は、奈々の愛という名の甘い支配と、運命の守護者としての孤独な使命の間で、激しく葛藤し始めた。

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