7.オコメとオニギリ
【注意】
後書きに私が出したAIイラストが載っています。苦手な方はご注意ください。AIイラスト不可の企画なのに申し訳ありません。
作者:ゆさま様
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【オコメとオニギリ】
これは、オコメ研究者の間で話題になっている絵だ。というのも、少年の持つ白い三角形のものが、オコメを握った「オニギリ」ではないかと言われているからだ。
雨量の激減により絶滅したオコメは、研究者たちの手によって復活の傾向が見られているが、まだ実験段階だ。
この絵が描かれた時期についての詳細は分かっていない。
しかし背景に見える山脈と、描かれているネコノオウという魔物が主に北方に生息する魔物であることから、北の地で描かれた可能性が高いとされている。
オコメに関しての何かしらの情報を得られる可能性が高いと、近く調査が行われることになっている。
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「オニギリ」
ポツッとゲンはつぶやいた。知っている。故郷の村で食べたことがあるからだ。ただオコメが握られているだけなのに、なぜかすごく特別な気持ちになったものだ。
「ラーちゃん、あれが食べられるか分かる?」
聞かれたラーちゃんは、左右に体をプルプルさせる。否定だ。
「……そうだよね。さすがに絵じゃ分かんないよね」
枯れた状態のオコメを見て分かるだけでもすごいのだ。これで絵を見ただけで分かったら、その方がおかしい。
「北、か……」
描かれているネコノオウという魔物の姿を、しっかり見て覚える。この魔物がいる近くに、オコメを育てているところがあるのかもしれない。
「行こう、ラーちゃん!」
ピョンと跳ねながら上下に体をプルプルさせる。ゲンの顔に自らの体をこすりつけて、それにゲンもくすぐったそうにして笑う。
「一緒にオコメ食べようね!」
ゲンの故郷でも、細々とだがオコメは育てられていた。しかし、それを食べたラーちゃんは咳が出て止まらなくなった。
そんなラーちゃんが食べられるオコメを見つけて、一緒に食べようというラーちゃんとの約束。大切なその約束を再び口にして、一人と一匹は美術館から駆け出したのだった。
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「えっ、出発しちゃったんですかっ!?」
ゲンが街を出たという報告を受けた、冒険者ギルドの受付のお姉さんは、ガックリと項垂れた。オコメ研究者に狙われている二人を守るための護衛を、美術館で絵を見てもらっている間に見繕いたかったのだが、間に合わなかった。
「本当に自由な子なのね……」
報告から知ってはいたが、実際に体験すると改めて実感する。
どうか何事もありませんように、とゲンとラーちゃんの無事を祈るのだった。




