4.六本の足を持つ犬とテイマーの少年
作者:歌川詩季様
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【六本の足を持つ犬とテイマーの少年】
六本の足を持つ犬であるムツアシケンをテイムした少年。
このムツアシケンという魔物は、野生での発見事例がほとんどなく、発見時はすでにテイムされている場合がほとんどだ。
テイムした場所を確認しても、その場所はバラバラで統一されていない。
そのことから、この魔物は自らが気に入った人間の前にだけ、姿を見せるのではないかと言われている。
ムツアシケンの資料は少なく、気難しい魔物だと思われていた。このようにくつろいでいる姿が見られることがなかったため、魔物研究者の間に激震が走った。
この絵が描かれた場所や、テイマーの少年のことを調べているが、情報が少なく調査は進んでいない。
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「…………」
絵を見て説明を読んだゲンは無言のまま、肩に乗っているラーちゃんと顔を見合わせた。ムツアシケンという名前を知ったのは、初めてだが。
(珍しいんだ……)
かつて会ったことがある、六本の足の犬。背中に乗せてくれて、あちこち走り回ってとても楽しかった。
「そういえば、別れるとき寂しそうにしてたなぁ……」
魔物と出会って一緒に遊んだあと別れるとき、たまにそういう様子を見せる子はいる。けれど別に何かがあるわけではなく、バイバイすれば普通に去っていくので、あまり気にしたことがなかった。
「いつかまた会えるかな」
ラーちゃんが体を上下にプルプルさせる。ゲンも頷いて、次の絵へと足を進めた。




