表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグ

 

 古の時代から、天の道を歩む者たちが語り継いできた伝説がある。魔法と時空の法則が交錯する世界において、最も強力で、最も神秘的な存在――その名はアルベルト・アイビス。彼女の名を知らぬ者は、もはやこの世界にはいない。どんな王国にも、どんな民にも、彼女の名は恐れと敬意を込めて語られ、また、その名は神話としても伝えられた。

 


宇宙第五惑星ソラリス20510年


 アイビスは、かつて人間が触れることのなかった力を掌握した。彼女は**「時の扉」**を開き、無限の未来を手に入れた。その瞬間から、彼女は不老不死の存在となり、時を超えた知識と魔法を操る「神々の使者」となった。彼女の力は現実世界を越え、異なる次元にさえも及んだ。

 だが、その力には代償があった。アイビスが開けた扉の向こうには、誰も知らない未知の世界が広がっていた。その名は「ルポン」。ルポンは、神々によって引き起こされた異変によって作られた新たな大陸――「歪んだ大地」であり、過去と未来が同時に存在し、光と闇が交差する神秘的な場所だった。アイビスはこの宇宙第六惑星と制定し、あらゆる存在をその手のひらで導く力を持つ者となった。

 

 だが、ルポンに住む者たちは決して幸せではなかった。アイビスはその力で人々を試練にかけ、力を与え、また試練を与え続けた。力を手に入れた者は、次々とその試練に挑み、時には敗北し、時には勝ち抜く。しかし、試練を乗り越えた者に待ち受けているのは、さらなる試練であった。「力を得る者、試練を乗り越えた者こそが真の力を手に入れられる」という法則が、アイビスの支配するルポンにおける唯一の真理となっていた。


 そして、アイビスが次に目をつけた者は、一人の少年――アルドリック・ヴァルノアであった。


 アルドリックは、ある魔法使いの家系に生まれた。幼少期からその名は広まり、彼が使う魔法の力は、すべての者に驚嘆を与えた。数々の魔法の奥義を、ただの子供の手で使いこなす彼は、誰もが認める天才だった。両親からも、そして周囲からも「未来の大魔法使い」として期待され、その名は魔法の世界で広がりを見せていた。

 だが、どれだけ努力しても、どれだけ魔法を使いこなしても、アルドリックはどこか物足りなさを感じていた。彼の心の中には、いつも空虚な感覚が広がっていた。それは、誰にも理解されない孤独であり、すべてを手に入れた後に残る寂しさだった。

 

 アルドリックは、まだ十歳の頃、世界中の魔法使いや学者から直々に教えを受け、飛び級で大学に入学した。その年、彼は初めて「時空の法則」を理解し、その本質を解明した。しかし、その学びの先に待っていたのは、彼が知ることのなかった真実だった。「アイビスの存在」という、圧倒的な天才の前に立った時、彼は初めて自分の無力さを感じることとなる。


 アイビス――彼女は、アルドリックがこれまで見てきたどんな魔法使いや神話とも違った存在だった。初めて彼女を目にしたのは、彼女がルポンから一時帰郷したとき、アイビスは、まるで時空そのものを宿したかのような美しさを持っていた。銀白色の髪は背中まで流れ、青紫のグラデーションが微かに輝く。深い紫色の瞳は無表情でありながら、その奥に無限の時と知識を秘めているかのように輝いていた。彼女の顔立ちは彫刻のように完璧で、冷徹さと儚さが交錯する。身にまとった純白のローブには、星座や時計の模様が施され、まるで彼女が時を超えた存在であることを示していた。

 その美しさは圧倒的で、アルドリックは初めて彼女を見たとき、言葉を失った。だが、彼女の瞳の奥に、冷徹さとともに深い孤独を感じ取った。

 そして、この世の天変地異を引き起こすような強大な魔法を目の当たりにし、アルドリックは自分が知っている魔法や学問、すべてが無意味に思えた。彼は、それまでの人生で初めて「自分の限界」を感じたのだ。


 だが、逆に彼女の存在は彼を挑発するものでもあった。アルドリックは、アイビスの才能を越えてやると誓いを立てる。どんな方法を使おうとも、どれだけの代償を払おうとも、彼女を超えてみせる――そう決意した。



 それから数年後、アルドリックはアイビスからの命令を受けることになる。


「アルドリック・ヴァルノア、君に命じる。ルポンに向かい、私のもとへ来なさい。」


 アルドリックは、彼女が自分を選んだ理由を全く理解していなかった。ただその言葉に従い、アイビスの支配する新たな世界、ルポンに足を踏み入れることを決意する。


 しかし、彼にはその時、すべてが何を意味するのか全くわからなかった。ルポンは、時空の歪みが生じる場所であり、過去と未来が交差する異次元の世界だった。時が停滞し、世界が無限に広がるその場所には、試練と謎が待ち受けているだけではなかった。そこには、アルドリックが今まで知らなかった魔法と力の使い方が潜んでいるのだ。


 アルドリックがルポンに到着したその時、彼の運命は大きく変わることとなる。何もかもが未知であり、すべてが試練となるその場所で、彼はどんな魔法を学び、どんな成長を遂げるのだろうか。そして、アイビスが本当に彼に何を求めているのか――その答えを、彼はまだ知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ