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5.夜会へ

ご訪問ありがとうございます!

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 えっ、ディートハルトから!?


 私はあわてて手紙を開いた。


『愛しいアーシュへ


 アーシュ元気にしてる?


 なかなか会えず、寂しい思いをさせてしまって申し訳ない。


 夜はちゃんと寝てる?魔道具作りに没頭してご飯はぬいてない?


 ちゃんと夜は寝て、ご飯もしっかり食べるんだよ。


 一週間後に王家主催の夜会があるね。ぜひ、私にエスコートさせてほしい。


 ドレス一式送らせてもらうね。(きっと君の事だから、仕事に熱中してドレス注文してないだろうから)


 では夜会で。アーシュのドレス姿楽しみにしてるね。


 君のディーより』


 うわぁ……、全てバレてる……。実は監視されてる……?私は周りをキョロキョロ見てしまった。


 やっぱり、騎士団が忙しくても出席するのね。


 一番大きな箱を開けてみる。


 黒と赤を基調にした豪華なドレスだった。レースや刺繍、スパンコールにビジューと、眩しいくらいに装飾が施されていた。


 こんな豪華なドレス着た事ないわ……。いったいいくらかかったのかしら……。


 途中まで計算して、怖くなって止めた。


 小さい箱を開けるとネックレスと、ブローチが入っていた。


 翡翠色の宝石だった。これは社交界ではやっている、お互いの瞳の色ってやつね。


 ちょっと恥ずかしいなぁ……。


 夜会……中止にはならないわよね……。


 でも、私のサイズなんでわかったんだろう……。まぁ、深く考えるのはやめよう……。



 ◇◇◇


 あれから仕事をしていたらあっという間に夜会当日になった。


 普段侍女はいないため、女性のコンシェルジュに手伝ってもらった。


 社員寮の玄関口の扉を開くと、そこには光沢のある黒と赤のタキシードに身を包んだ、ディートハルトが待っていてくれた。


「アーシュ!」


 ディートハルトの笑顔が満開で、私までつられて笑顔になってしまった。


「すごくきれいだね!」


「ありがとう……」


 ディートハルトにエスコートされながら、王宮の会場まで歩く。


 社員寮から会場まで徒歩5分だが、ヒールが高くいつものように歩けなかった。


「ちゃんと会うのは3年ぶりだね」


「そうね」


 3年ぶりにあうディートハルトは、肌の色が焼けていて少し男らしく感じた。


 背はもともと高かったが、さらに筋肉がついて屈強な騎士団員という感じだ。


 正装姿、なんてかっこいいんだろう。これではまたご令嬢に囲まれるわね。


 胸元には赤い宝石のブローチがつけられており、頬が熱くなった。


 幼馴染のはずなのにまるで知らない人になってしまったようで、少し心の距離を感じてしまった。


「あの……、ドレスとか一式ありがとう……。ディートハルトのいう通り、仕事ばかりしちゃってて……、本当に助かったわ」


「アーシュは本当に変わらないね……」とディートハルトはクスクス笑った。


「でも、呼び方……」


 愛称呼びしろってことね。一応婚約者としていくんだもんね。


「うん、ごめんね。ディー」


「うん」と言って、ディートハルトは満足そうに私の手に自分の手を重ねた。


 こんな素敵な人が婚約者だなんて、いいのかしら……。


 いや、ディートハルトの為にも、今日は話し合わないと。


「ディー、夜会の後なんだけど……。少し時間貰えるかな?」


「うん、もちろんだよ」


「ありがとう……」


 大人になってしまった幼馴染に、動機が止まらなかった。その美しい瞳に見つめられると、上手く息が吸えなかった。




「ディートハルト様よ……」


「本当だわ……」


「前は美少年だったけど、すっかり逞しくなられてさらに素敵ね……」


「確かまだご結婚されてないわよね……」


「でも、確か婚約者はいたような……」


「あ、あの隣にいる赤髪のご令嬢じゃない?いかにも悪女って感じの」


「学生時代から、良い噂を聞かないわよね。今も夜遅くまで遊び歩いて、男性もとっかえひっかえしてるらしいわよ……」


「まぁ!見た目通りじゃない!」


「ディートハルト様が騎士団で頑張ってらっしゃるのに……」


「ディートハルト様……、おかわいそう」


 王宮での夜会会場で、もう噂話をされている。


 確か同じ王立学園の生徒だったご令嬢たちだ。もう結婚されている人もいれば、まだの人もいる。


 女性も仕事をする人が増えて、昔よりは結婚の年齢が上がってきている。


 遅くに帰っているのは、仕事なんだけどね……。やっぱり髪が赤毛で、顔が派手なのがいけないのかな……。


 今ディートハルトが騎士団のメンバーに挨拶をしているので、私は笑顔で終わるのを待っている所だ。


「アーシュ!」


 振り向くと、イヴェッタが兄様と共に立っていた。知った顔に会えて、緊張がゆるんだ。


 二人は水色を基調としたドレスとタキシードで、とてもさわやかだった。


 私はイヴェッタの兄のバーデンに一礼した。


「君が作った耐炎の白衣とインクのなくならない万年筆、すごく重宝しているよ。君は本当にすごいな」


「本当ですか⁉使っていただけてうれしいです!」


「あぁ、こちらこそありがとう。これからも期待しているよ。では、私は同僚にあいさつしてくる」


「はい」


 バーデンが手を振り、私も手を振った。


「はぁ……、素敵……。なんてクールなのかしら」


 イヴェッタが「どこがよ」と言わんばかりの目を向けてきた。


「ところで、また悪目立ちしてるわよ」


「うん。知ってる」


 私は白ワインを一口、口に含んだ。酸味が効いていて、すごくおいしい。


「アーシュって、見た目が派手だから、昔から女性に敵作るわよね。逆に言えば、きれいで羨ましいのよ」


「はっ?私がきれい?魔道具しか作ってないのに?まぁ、今日はきれいにしてもらったけど……」


 イヴェッタがはぁ……とため息をついた。


「騎士団の人たちも、アーシュの事羨望のまなざしで見てるわよ」


 後ろを振り向くと、何人かの団員達と目が合い、頬を赤らめていた。


「ワインの飲みすぎかな……?」と私が言うと、こりゃダメだとイヴェッタがおでこを触り溜息をついた。


 中央ホールには楽器を持った楽団員達がゾロゾロと決まった席に着く。


 騎士団員との挨拶が済んだのか、ディートハルトが戻ってきた。


 イヴェッタと久しぶりと軽く挨拶している。


「アーシュ、そろそろファーストダンスの時間だよ。私と踊って頂けますか?」


 ディートハルトがそう言って、私に手を差し出した。


 どうしよう……、ダンスなんて全然練習してこなかった……。


 これは誰でも踊れる靴でも発明しないといけないかも……。


「……はい、喜んで……」


 私はそう答えて、上げた口角がひきつった。


「ねぇ、ディー……、私学園を卒業してから全然踊ってないの!大丈夫かな?」


 中央ホールに向かう中、私は小声でディートハルトにそう伝えた。


 それはダメだねって、引き返してくれないかな……。


「大丈夫、私がリードするから……。それに体が覚えているものだよ」と笑った。




 ――ダメだった……。私はガクンと肩を落とした。


「全然ダメだったじゃん……」


 私は今バルコニーで、先ほどのダンスでグネった足を休めている。


 隣ではお腹を抱えたディートハルトが声を殺して笑っている。


「だって、あんなに踊れないって……」と言って、思い出したのかまたケラケラと笑い始めた。


 はぁ……、本当に最悪だ……。もう会場に戻りたくない……。


 隣を見ると笑いすぎたディートハルトが目じりの涙を指で拭っていた。


「こんなに笑ったの、久しぶりだよ。やっぱり、ディーは最高だね」


 いや、これ完全にけなされてるよね。淑女として終わってるよね……。


「そんな怒んないでよ!アーシュ」


 ディートハルトが頭を撫でてきた。


 でも、やっと変な意識をしないでディートハルトと過ごせているかも。


 うん、やっぱり私たちの関係はこうじゃなきゃ!よし、婚約解消の話もしちゃおう!


「母さんが、屋敷に遊びに来いって……」


 先手を打たれてしまった。


「へ……?」


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