僕の終わり
5月28日、あのニュースを見てから2日が経った。
いつもより気分が良い朝だ。なんでだろうか。
学校が再開すると聞いてからだ。
ああ、やっとだ。
やっと学校が始まる。
学校には標的にできる獲物が多い。
早く殺りたいなあ。
若干曇り空なことだけが頭にくるが、
まあ良い、向かうか。
この頃巷では奇妙な噂が流れていた。
【殺人衝動病が流行っていると】
ああ楽しみだなあ。
南北高校は全国でも有数のマンモス校で全校生徒は1000人を超えている。
殺りたい放題じゃないか。
ノルマは200だなぁ。
そんなことを妄想しながらいつもの道を歩く。
学校まであと1km。
登校中これほど殺人衝動が抑えられずにいたが通りすがりの人々にはなぜか殺意が沸かなかった。
そこから歩き続けて10分が経ったころ校舎が見えてきた。
それはとても異様な空気を放っていた。
地獄は本当にあったんだと僕でも分かるような、
まるで取り憑かれた何かのような。
校内は辺り一面が血溜まりだった。
ところどころで人が死んでいる。
屍の山だ。
怖い、悲しい、可哀想など色々な感情が飛び交っている。
この時にはもう自分の殺人衝動は抑えられていた。
だけど、なぜだろうか、胸の高鳴りが抑えられない。
自分の中で違うと分かっているのに。
ここまで来たんだ、教室まで行ってみよう。
自分はそう決意したんだ。
教室に向かうまでに生きている人は見かけなかった。
音もなく見た全員が刃物で刺されて死んでいる。
人間の急所である動脈を確実に刺し、殺している。
もう確実に500人以上の死体は見た。
誰だろうな、僕以外でここまでやれるのは…。
僕の教室の窓は全て血で染まっていた。
外からは見えないようになっていて不気味としか言いようがない。
僕はさっき拾ったナイフを片手にドアに手を掛けた。
その時だった。
気づいた頃にはもう遅かったんだ。
背後に気配を感じた。
僕は気配の先にナイフを突きつけ本気で殺しにかかった。
「殺してやるお前を」 狙いは頸動脈。
だがもう遅かった。
痛みが遅れてやってくる。じんわりと、
刃物で刺されたような痛み。これはしてやられたな。
見下げてみれば自分の腹辺りは赤黒い液体で染まっている。
正直勝った自分を想像していた。誰もが一度は想像するだろう。英雄のような姿を。僕のナイフは1mmもかすらなかった。姿さえも見えなかった。なぜ戦おうとしたのだろう自分でも分からない。
だが、もうそんなこと微塵も関係ない。
「自分」でも分かる。
「僕」は死ぬんだと。