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第三十三話 フォーエバー

 ラナイは連撃の速度を上げていった。心の中でカウントを始めた……。


 このカウントが終わるまでにスペルスに致命傷が与えられなければ決着が遠のく……、勝利の女神はラナイに微笑むのかどうか。今は願うしかできないだろう、女神では無いがアリウルがいるではないか? と思うだろうがそんな権限はアリウルには無い。


 5……、スペルスは攻撃を捌いているがそれも不安定になってきている。4……、スペルスの顔が力む。3……、遂にラナイの剣がスペルスの剣の軌道を逸らした。2……、ラナイの剣がスペルスの腹部に刺さった……1、ラナイはスペルスの腹部に刺さった剣を貫通させた。


 0……、スペルスは地に倒れた。腹部に剣は刺さったままだ……、バタッ! と背中から倒れたスペルスを悲しそうな顔でラナイは見つめていた。これは本当の悲しみだ。


「終わり……ですね。増大したパワーのベクトルを焦りから変な方向へと向けてしまった……、だから先程のような事が起こったんです」

「ハハッ、ゴホッ! それは教えてくれてどうも。血は少し吐いただけだ、心臓が動いていれば人は意外と生きていられるからね。さあ続きを話してくれ」


 スペルスは剣が腹部に突き刺さったまま話を続けてくれと頼んだがラナイは「本当に大丈夫ですか?」と問いかけた。


「大丈夫なわけ、無いだろ? だから早く死ぬ前に話してくれと、……そう言っているんだ」

「そうですか、最後に話すことが戦いについての話なのは釈然としませんが。あと何分持ちますか?」

「ああ? そうだな、あと15分ってところかな」

「十分ですね、それでは話します」


 ラナイは「はぁ……」と息を吐き心を落ち着かせた。スペルスは倒れた状態のままラナイの方を見つめていた。


「あなたの能力は確かに強力でした、詳細を教えてくれなければ勝てなかったと思います。実際3速から4速への切り替えをあなたが急いでいなければ私は負けていた、一瞬でも気を抜けば崩れるという状況でしたから。加速ターボによって産み出された威力はとても強力で、そのパワーを制御するには心の安定感が必須……。あなたのその自信が仇になって負けたというわけです」

「ハッ! なるほど、ゴホッ! あぁ……、僕は強力な力を手に入れて自分に酔っていたらしい。気づ課されたよ君には」


 ラナイは勝利までの過程を説明し終わって満足そうな……顔はしていなかった。寧ろまだ不満が、いや知りたいことがあるのだろう。最初に感じていたこの世界にスペルスがいる理由を。


「スペルス、いいえ正義。あなたはどうやってこの世界に来たんですか」


 スペルスは鼻息でスゥー、と反応をする。


「転移さ、とある男に勧められてね。特段何かあったかと言えば無いよ」

「そうですか……。それでは」

「もう行くのかい? 悲しいなァ、僕ァ。まあ、死ぬ前に楽しませてもらったよ、この戦い勝ってもらいたいね……」


 スペルスは息絶えた。目を閉じ静かに。


「やっぱり15分というのは嘘でしたか。さて私もデスターさんの所へ向かわなければ」


 ラナイはデスターが向かった山の方へ走った。


 国内に場所は移る……。ヴァーナは現在国内の家に戻っていた、扉を開きメルアを呼ぶ……。


「メルアさん! 今戻りました、回復薬を下さい!」


 ヴァーナは翼が生えた覚醒状態で家に入ったので所々引っかかっていたが気にせずリビングへ足を運んだ。そしてヴァーナが見た光景はメルアが目を閉じ死んでいる様子だった、肌は白くなり髪も色を失い汚れたグレーになっていた。


「メルアさんッ! ……死んでいる?」


 ヴァーナは腕を触りその冷たさで実感した、もう死んでいるという事実を。いずれ死ぬとは言っていたが早すぎた、もう少しの猶予があるとヴァーナ以外も思っていたのだ。


 ヴァーナは取り敢えず冷蔵庫に入っている回復役を1本飲み干す。そしてそれと同時にメルアのスマホから着信音が鳴っていた。名前はメルアの友人と書いてある。


「友人? 誰……」


 ヴァーナはスマホを手に取り電話に出る。そして「もしもし」と低い女性の声が聞こえた、加工してある声だ。


「誰ですか?」

「ん? ああ、この声はメルアが言っていた部下か。よろしく、私はメルアの友人Aだよ。メルア死んでるよね?」

「そうですけど……。悲しいとか無いんですか?」

「勿論あるよ? でも今は気にしていられない状況なんだよね、君もすぐ戦場に戻らないといけないからさ。もうすぐ敵軍の本体が到着する、君が今回の戦いのキーだ。死ぬ気で頼むね」

「そうですか……、まあ良いです。死ぬつもりですから私は元々、それがこの戦いなら本望です。グットなのです、それに……私は敵を殺すことが……いえなんでもありません」


 ヴァーナはニヤケてそう言った、しかし最後の言いかけた言葉を発言しようとした瞬間だけは顔が曇ったようにも見えた。電話は切れた、ヴァーナは窓を開けて翼を羽ばたかせて飛び立った。その姿はまるで都市の黒い堕天使「ブラックエンジェル」だ、その堕天使は鋭い槍のように飛ぶという……。


 その頃デスターはデス・バレット第4位と接触していた。


「私はデス・バレット第4位、ドーツ・ミスルです」


 シルクッハットを被った全身が白い服の男……。デスターはナイフを構えた、もう雑談すら聞くことはしたくないらしい。


「おやおや、もう戦うのですか? そんなに焦らなくても……」


 低い声と高い声が交差しているような声だ、デスターは正直こんな声を聞きたくないなと思いすぐに戦闘を始めようとしている。


「私、今急いでるから。第4位ならさ、1位に会わせてよ」


 デスターはそう言い、ドーツは「良いでしょう」と言った。


「ついてきなさい……。第1位ヘルエス・ゲリラ様と対峙させてあげます」


 ドーツは歩き始めた、デスターはついていく……。


 



 

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