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第二話 Death is beautiful 「死は美しい」

第二話 死は美しい

 ビルの中は一般的なホテルと変わらない内装だったが、付近にある張り紙や掲示看板の文字は日本語ではなかった。玲奈はこの時点で全てを理解した、興奮した時からの全ての行動を思い出す。


 ここはもう異世界だという事が理解できた玲奈は、近くの赤い椅子に座った自分と同じ背丈の少女に声をかけた。青髪だった。「初めまして、私はデスター」と。短い挨拶だった……、雑な挨拶だなと思った人もいるだろう。だが、これもまたこの界隈の常識である。多くを語らない、隙を見せれば殺されるという世界なのだから自分から自爆はしないだろう。


 その少女は同じ背丈ながら胸は玲奈よりも大きかった。少し玲奈は嫉妬した、そういう部分が何かに影響があるのか? といえば殆ど無いから多くのゲームでは大丈夫だった。だがとあるゲームで男性を誘惑しろというミッションがあった時、玲奈は顔を顰めて「チッ!」と舌打ちをした。


 その時のゲームはそれが最終関門というバカゲーだったので特殊ケースだ。だが豊満な身体があってこの世界で困る方が稀なので玲奈は本当は豊満な身体に生まれたかったと、時々嘆いている。ゲームでは珍しくないのだ、狂っているが故に奇行をする人間が。


 急に全裸になったり、人前で襲ったり......そういう事例がまあまああるので女性の場合そういう身体だと誘ったりして後ろから刺す等、殺しの幅が広がる。デスゲームギャンブルには倫理観は存在しない、無法地帯なのだ。故に奇行をする人間が多い。


 玲奈自身も誘う事が一度だけこの身体でも成功した事がある。その時玲奈は初めてを経験した。感想としては「こんな物なんだ」という感じだった、がっかりというより自分には必要無いかなという心情だった。一度好奇心でやってみたものの、これなら真正面からぶっ殺した方が楽だと感じた。


 ミッションも実は報酬アップだけなのでやらなくても問題は無いのだ。


 話を戻す。少女は返事として「にゃ〜」と鳴いた。猫の鳴き声、これは馴れ合うつもりは無いという意思表示だった。それならと玲奈は大人しく身を引いた。


「正直すぎない? 正直はこの業界では良い事だけどアナタからは”素直”さは感じないわね」


 少女は急に話し始めた。先程の行動はただ単に玲奈を試していたという事になる。そして声が想定していたよりも高くて玲奈は驚いた。顔には出さずに心の中で。何処かで聞いた事があると感じていたがそうだ、一昔前の深夜アニメでツンデレキャラを演じていそうな声だった。


「私は猫又、よろしくデスター」


「知ってたんだ、こっちこそよろしく。っていうか何故私の事を?」


 猫又は足を組んでその豊満な胸を両手で支える。まるで見せつけるかの様に......玲奈はムカついた、後で殺してやろうと決意した。標的は逃さない。


「アナタ程の人間なら知らない方が無理あるわ。今世紀最高のデスゲームギャンブルプレイヤー「デスター」、こんな逸材もう二度と生まれないでしょうね」


 そこまで褒められると流石に照れてしまいそうな玲奈だったが、心ではそう思っていても今の玲奈にはそれを表に出力する機能が消え去っている。残念だが猫又は照れ顔を拝む事はできなかった。


「じゃあ一つ聞いても良いかな? 話は終わったでしょ。他の人間がここに来たのは何故?」


 猫又は眠る様に目を閉じる。そして言うのだった。「人生に終止符を打つためよ」と、玲奈は絶句した。というより、言う言葉が思いつかなかったのだ。私が居る時点でこのゲームは玲奈自身、一人勝ちというというビジョンが見えていた。まさか全員死ぬ為にここに来たとは驚きだ。そういう意味での一人勝ちとは玲奈も思っていなかった。


 補足しておくがこの一人勝ちのビジョンとはイキっているのでは無く、自分の実力なら勝てると思う事で気を紛らわす為のモノだ。断じて自分が強いと言っているのでは無いと言っておこう。


「正直アナタはこのゲームに参戦すると全員が思っていた、それでもみんながこのゲームに参加したのは......さっきも言った簡単なバーション、死ぬ為なの。だからここへ来た」


 玲奈の頭の中には? が沢山浮かんだ。当然だ、死ぬだけなら自殺だけで事足りる。それにデスゲーム、少し種類が違うとはいえ他人を殺す事を厭わない、自分が死ぬ事を怖がっていない連中が、わざわざゲームに殺されに来るとは考え難い。これが玲奈の考えだった。


 しかし現実は玲奈の思っているよりも狭いという事を思い知らされるのであった。猫又は先程と同じ体勢で、今度は開眼し語った。


「自分で死ぬのが怖い人、それがここに集まった意味よ」

「ゲームで死ぬなら他のゲームで良くない? もっと殺人鬼とか狂人とか、犯罪者も居るよ?」

「それが嫌な人の為のゲームよこれ。アナタ、まさかあの手紙を読んでいないの?」

「いや......読んだけど」

「あのカードには、『自分で死ぬ事が怖いお方。そして地獄に落ちたい方、ぜひこのゲームにお越しください。このゲームのトラップと、とある最強プレイヤーがアナタを殺してくれる事でしょう。トラップと最強は、まるで人を人の様に認識せず殺すという』って」


 その最強って私の事? と玲奈は思ったが、もしそうだとしたら一つ誤解を招く言葉があった。私は確かに人を殺す事を躊躇わないし、自分が死ぬのも全然良い。ただ、何も感じていない訳じゃない。私は人を殺す時必ずその人の名前を聞いて私は丁寧に身体に名前をナイフで記す、大量の血飛沫を受けながら。......というのが玲奈の言い訳? だ。


「私は殺す人間を尊敬はしてるんだけどね。何も感じていない訳では無いよ」

「そう。けどそんな事はどうでも良いです、ゲームで出会ったら思い切り殺して下さいませ?」

「分かった、できる限り楽に死なせてあげるよ」


 正直な事を言うと玲奈はこのゲームのモチベーションはガタ落ちしていた。このゲームに来た目的が『自分より強い奴に会いに行く』だったのだが、君は無双ゲーをしてくれと言われれば当然気分は下がるだろう。異世界へのゲートというのも結局何なのか分かっていないのだから更に追い打ちが。


「ゲームの詳細は? 解説者の人居るよね? というか、他の参加者は何処に?」

「もう会場に揃ってる、アナタ以外は。待ってたのよ」

「ああ、そういう事。ごめんね」

「アナタは謝る必要はありません、ここに居る人間で死に急いでいる人はいないので」

「行きましょう、会場へ。沢山の人が貴方を待っています」

「ん、分かった、行こう」


 猫又は玲奈の右腕を掴み会場へと案内した。いや、今回は連行と言った方が正しいかもしれない。遂にデスゲームギャンブルが開始する、玲奈はプレイヤーでもあるし、殺す事も主とする。両方しなくてはいけないのが、玲奈にとっては新たな刺激となった。


 玲奈は刺激を受ければ受ける程に強くなる。まあ、今まであれだけ多くのゲームを行ってこればドMにもなる。それに玲奈は昔から虐待を受けていた、散々な人生だったのだ。だが、そんな散々な人生が玲奈を今の形にしたとも言える。


 玲奈は、今となっては父親に『ありがとう』と言いたい気持ちでいっぱいらしい。過去の虐待の途中、10歳の頃まではただ『痛いッ! パパ、ヤメテェェェェェx!!』と言っていたのが10歳の誕生日を迎えた頃『ハッピーバースデートゥーユー、私ッ』リビングで、父親に蹴られ殴られながら誕生日を迎えたあの日......、玲奈は笑っていた。もっと! もっと! と求める様になっていた。


(よくよく考えてみると、両親が逃げたのはアレが原因だったのかもしれない。ま、今となっては心底ありがとうと伝えたい、本当はこの手で殺したかったけど。痛みが快感に変わったあの日を私は今も忘れない)


 二人は会場に入場した。そこには四人の人間が居た、男二人、女二人。両方とも20歳位で小柄と大柄の人間だった。男1は緑髪、2は青髪、女1はピンク髪、2は黒髪。


「初めまして」


 玲奈は簡単な挨拶をした。



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