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1.

忘れもしません。

私が初めてあの男に出会ったのは、5歳の時。

小学校入学前のある台風の日の事でした。

私は突然両親を事故で亡くしました。

私が保育園で呑気にお昼寝をしている間に二度と会えなくなっていました。

お葬式の時、誰が私を引き取るかで大モメしてる親族を横目にただただ呆然とすることしか出来ませんでした。

今思えば、いや、両親を亡くしたばかりの小さい女の子の前で大モメするなよと思いますが、その時は涙を流すことしか出来ませんでした。

中には私を引き取ろうとしてくれる優しいおばさんもいましたが、独身だから面倒を見れる訳が無い、自分の人生を大切にしろという理由で他の親族から却下され、遂には施設に入れるしかないという話まで出ていました。

5歳にして可愛そうすぎるでしょう。

その時のことです。


「邪魔するよ〜。この子貴方さん方が要らんならワシが貰っていってもええかな?こうみえてワシ、この子の母親の親父だから。まあ、縁きられてるんだけどねえ!!!」


と、とんでもない強面(こわもて)サングラスおじさんがやって来て、とんでもない大声で周囲を圧倒し、周りの反応など歯牙にもかけず、私を大モメ地獄から抜け出させてくれたのです。

あの時の私にはこのとんでもない強面おじさんが少し良い人に見えていました。

()()()()光った革靴と同じように、この強面おじさんの後ろが()()()()と光って見えました。

なんてたって、誰も私を必要としていないあの空間から私を抜け出させてくれたのだから。

でも18歳になった今思います。

あの独身おばさんの所に行ければよかったって。

独身がなんだよ、行かせてくれよって。

葬式から少女を突然引っ張り出す人ってろくでもないよね、100%危ない人だよねって。

周りも頑張って止めてよって。

そうすれば、そうしてくれれば、

見た目は何処ぞ(どこぞ)の美術館に飾られていたっておかしくないであろう美しい、とんでもなくイカれたこの無表情男に出会うことはなかったのでしょうから。

その人は初対面の私に向かってこう言ったのです。


百合(ゆり)ちゃん。俺、貴方に命掛けれます」って。


普通に考えておかしいですよね。通報案件です。

でも私、5歳だったんです。

なんなら両親を亡くす数日前に、ある犬と男の子の一生を描いた絆物語を映画館へ涙ながらに見に行ったばかりでした。溺れたケンタ君を雑種のポチが一生懸命助けていました。ケンタ君はそんなポチを大切に大切に家族の一員として最期まで育てていました。

5歳ながらに思ったんです。

相手が命を懸けて慕ってくれるなら、私も命を懸けて大切に、大事にしないとと。

私だけのワンコを幸せにするんだ〜って。

そう話す私に「きっと百合ちゃんに飼われるワンコは幸せだろうね」と両親はニコニコ微笑んでいました。その両親の姿と耳折れ雑種のポチが、5歳の私の目に浮かび、思わずこう言っていました。


「責任もって、百合ちゃんがお世話するね……!」


これが、全ての始まりです。


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