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15.好感度爆上がりキャンペーンでもあった?

本日最後の授業の終了を告げるチャイムが学舎内に鳴り響いた。


教科担任が早々に授業を切り上げて教室を去ると、各々帰宅する者や雑談を繰り広げる者など様々だ。

私は彼らを尻目に帰り支度を終えて図書館へと向かうため足早に教室を出た。



最近は期末試験が迫っている為に図書館利用者が増加しており、日によっては空きがないこともあるからだ。

特に一年生の教室は二、三年生に比べて図書館と距離がある。その中でもより近いのがAクラスで、次いでBクラス。私のクラスなのだ。


来年度にクラスを落としたくないと考える成績上位者達は静かで教材豊富な図書館に通う人が多い。高学年に知り合いがいれば教えてもらう事も出来るからね。メリットしかないのだ。

だからさっさと行って席を確保しないと…!



主にヒロインであるリリィちゃんや攻略対象者が試験勉強しているところを私が眺めるために!


ちゃんと勉強もするけど。ちょっとくらい息抜きに観察してもいいよね???



今日は誰か図書館で勉強してないかな?と思いを馳せながら通い慣れてきた廊下を歩いていく。


本当は全速力で廊下を走り抜けたいんだけど、さすがにそれをする度胸が私にはない。

今世は一応、伯爵令嬢の淑女なもので。


そうなるとどうしても歩幅の大きい男子生徒に次々と抜かれていくので、結構悔しい。


図書館へと向かう上級生との合流地点となる渡り廊下には、既に多くの人影が見える。

焦りに足が動こうとするのを堪えながら、あくまでもゆっくりと進んでいく。



「ミッレ嬢?おひとりですか?」



渡り廊下に差し掛かった時、不意に私を呼ぶ声が聞こえた。

耳馴染みのあるその声がする方へと身体の向きを変えると、カストル様とポルクス様がこちらへと近づいてきていた。



「カストル様、ポルクス様。はい、図書館に向かっている途中なのです。お二方も図書館で試験勉強ですか?」


「ええ、もうそろそろ期末試験ですから。私共もご一緒しても?」


「もちろんですわ」



今日はポールスト兄弟を眺めて試験勉強の息抜きができる…!と喜びながら、歩みを止めていた足を図書館の方へ進める。



「ねぇ、リリアーナは~?」



普段話しかけてくる事のないポルクス様が私の隣にやってきて顔を覗き込み、問いかけた。

突然の事にビックリして変な悲鳴が口から出そうになったが、どうにか飲み込んだ私を誰か褒めて欲しい。



「…リリアーナ様とは後で合流することになっております。…何か用事がございましたか?」


「いや~?でも、ありがとねぇ」


「ど、どういたしまして…!」



返答することにいっぱいいっぱいになっていたが、これってポルクス様の好感度が高い証拠では???



ゲームであればまだまだ攻略対象と出会ったばかりで好感度なんて有ってないような物のはず。

それが居るのか気にされるのって相当では?




図書館に到着して室内を一望するが、未だに空きがちらほらと残っていた。

後々合流する予定なので、4人掛けのテーブル二つが隣り合って空いている所に腰を下ろす。


鞄から教材を取り出してテーブルに広げて試験勉強に取り組む。

前回の勉強会でカストル様に教えてもらってから理解度が格段に上がったので、マンツーマン指導がなくても大丈夫になった。一回でこれだけ変化を実感できるのだから本当にすごいと思う。


お互いに私語もなくそれぞれの課題に向き合ってしばらく。



「失礼します、みなさま。こちらのお席にお邪魔してもいいですか?」


「リリアーナ様。どうぞ」


「やっほ~」


「構いませんよ」


「ありがとうございます!」



到着したリリィちゃんが席に着いて準備を始める。

クレア様と同じクラスだからてっきり一緒に来ると思っていたんだけど。



「リリアーナ様おひとりなの?」


「はい。クレア様達は用事があると帰られました」


「そうなのね。三人ともなんて珍しい」



私のちょっとした疑問に内緒話をするようにリリィちゃんは口元を私の耳に近づけた。


「…クレア様は本当にお家の方で用事があるらしいんだけど。スーリズ様は騎士団の公開訓練があるって言ってそっちに飛んで行っちゃったの。レイラ様も好きな作家さんの小説の発売日が今日だからって」


周囲に聞き取られないように小声で事情を説明してくれた。

何とも彼女達らしい行動に「なるほど…」とだけ返して試験勉強に戻ったのだった。


黙々と復習に励み、分からない所はリリィちゃんに尋ねる。

私より彼女の方が頭が良いので。才色兼備で努力家なリリィちゃんはやっぱりすごい。



「シャルロッテ様。私ここが分からないのですけれど…」


「どこ?あ、ここね。う~ん…私も今ここで躓いてて…」



つまりこういう時にはあまり力になれない訳で。

特に私とリリィちゃんが苦手なのは選択外国語の科目で、ここ数日は図書館に来てはこの科目の教科書や参考書とにらめっこを繰り返している。


今日も今日とて連日と同様にあれこれとお互いに意見を述べては、否定を繰り返していく。



「俺が教えてあげよっか~?」



声の持ち主へと視線を上げると、意地悪そうな笑みを浮かべてポルクス様がリリィちゃんだけを見つめていた。それに対して彼女はキラキラと瞳を輝かせて正面にいるポルクス様を見つめ返していた。



「え、いいんですか!ありがとうございます!」



嬉しいというオーラを全身から醸し出した彼女が向かいに座るポルクス様へ教科書を差し出し、身を乗り出す。


その時モブの私は、感動で身が打ち震えるのをどうにか抑え付けていた。


まさか二年次に発生するはずのイベントが起こるなんて…!

これは一定数以上の図書館の利用回数と好感度が必要なイベントで、どちらかに偏った攻略をしていると発生しない。


それだけリリィちゃんが図書館で勉強しているってことであるし、好感度上げに余念がないという事の現れでもある。



これは邪魔しては悪いと、身を引いて背景に同化するに努めてその光景を眺めるに徹する。



「人それぞれ理解度が異なると思いますので、シャルロッテ様には私がお教えしましょう」


「え、っと。申し訳ございません、カストル様。こちらなのですが…」



折角の厚意を無碍にするのは忍びなくて、素直に教科書の向きを変えて差し出し、解説に耳を傾ける。


前回の勉強で私の苦手を完全に把握したらしいカストル様は、完璧な解説を披露してくれた。

疑問を挟む余地もなくて、もう素晴らしいとしか言いようがなかった。


本当に同じ人間なんだろうか?だとしてもスペックが私と違いすぎる…!



「ありがとうございます。カストル様の教え方は本当に理解しやすいですわ」


「いえ。また解らないことがありましたらいつでも聞いて下さいね」


「はい。何から何までお気遣いありがとうございます」



カストル様との会話が途切れて、ふと隣に視線を送ると楽しいとひと目でわかるほどの笑顔を湛えていた。



リリィちゃん達が更に距離を縮められて私まで嬉しい!



「何か嬉しい事がありましたか?」


「いえ、何でもありません。うふふ…」


「?そうですか」




喜びが顔に現れていたようでカストル様に変な人を見る目で見られたけど、私の曖昧な返事にそれ以上は踏み込まれることはなかった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!!!


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