1.プロローグ
迎えた15の春。
「ゲームのまんまだ…!」
目の前には夢にまで見た光景があった。
城かと間違えそうになるくらい立派過ぎる校舎、その校舎に続く美しいメインストリート、綺麗に整えられ、四阿まで完備された校庭、荘厳な校門。全てスチルでしか見ることの出来なかったものばかり。
それが今、目の前に広がり、今日から通うのだと信じられるだろうか。
私は転生者だ。
前世では日本で普通の社会人をしていた。どうして亡くなったのかは覚えていない。
そして今世はシャルロッテ・ミッレ伯爵家の長女として生を受けた。少し癖のあるミルクティーブラウンの髪にルビー色の垂れ目、優しい両親に小さくて可愛い弟がいて何も心配することなくただ楽しく日々を過ごしていた。
しかし、五歳の王家主催のお茶会で『推し』であるポルクス・ポールスト侯爵令息を見つけるまでは。
ここは前世でプレイした「未来を君と共に」という乙女ゲームの世界で、飢饉に見舞われた状態からゲームが始まり、学園生活の中で攻略対象達と恋をしながら自身のステータスを上げて干ばつに対応していくっていう流れになっている。
そしてゲームと同様にストーリー開始より一年前に舞台であるメアスミレ王国は大規模な干ばつに見舞われ、多くの貴族が領地経営に苦しむ。
それは『推し』であるポルクス様の領地、ポールスト侯爵領も例外ではない。
かの領地は広大な耕作地を持ち、常にこの国の食糧需給に貢献していた。
そんな場所からの生産が無くなっては、国民が飢えるうえに税金が大幅に減少して国家運営に支障があるため、王家から援助する余裕のある資産家貴族の娘との政略結婚を双子の兄共々言い渡されるのだ。
この令嬢達の性根が腐っていて推し達に苦労を強いる未来に、私は納得できなかった。
そのため私は必死に努力した。
この世界の常識を身に着け、悪役令嬢達に対抗できるように。
魔法のある世界で貴族ならば扱えるのは当たり前であるから、前世に科学知識も応用して優秀な魔法師と呼べるくらいにまでなった。
決して楽しすぎてやり込み過ぎただけではない。
全ては推しのため!
そして最後は推し活の為の軍資金確保
これが一番重要。でも一番大変だった。前世の知識を活用して土壌改良にスイーツ専門店のオープン、電化製品の魔法道具化等々…
それらで稼いだ資金でミッレ伯爵領だけでなく、推しの領地を含めた王国有数の耕作地全てに資金援助と食料物資等の支援を行うことで干ばつの影響を最小限に抑えることにも成功した。
そのおかげで推しが性悪悪役令嬢達と婚約させられる事態を回避することが出来たのだ。
その時は喜びで発狂したよね。お陰で家族に病気を心配されちゃったけど。
そして受験勉強の甲斐あって、私も物語の舞台であるメアスミレ王国屈指の最難関セントラル学園への入学を果たしたのだった。
ふっと我に返ってゆっくりと校門を潜り、メインストリートを進む。
花弁が舞うこの風景がゲームの始まりを告げている。
入学試験の結果によってクラスはA~Eの5クラスに分けられる。
ヒロインちゃんは最初はCクラスから始まり、学年が上がるごとにステータスの上昇値でクラス替えが行われる。ステータスも好感度上げに関係してくるので結構大事。
因みに私はBクラスでーす。Aクラスの壁は高かったわ。
そして、最終的に好感度が低いと恋人になれないし、ステータスが低いと恋人になれても結婚できないから乙女ゲームにしては難易度が高いうえに、攻略対象それぞれに個性が大爆発した性悪悪役令嬢が婚約者として登場し、これでもかと邪魔をしてくる。
ヒロインちゃんが頑張ってくれないと攻略対象者全員もれなくバッドエンドを迎えるんだけど、相当メンタルが強くないとあの嫌がらせの数々には耐えられないかも。それとなくサポートが出来ればいいけれど…。
まあ、これらは一旦横に置いておくとして。
きっとこの学園のどこかに『推し』が、ヒロインが、攻略対象者達がいるだろう。その人達を見ることが出来る毎日が純粋に今からとても楽しみ!
入学式に出席するために先輩や教師に指示に従って講堂へ向かって席に座り、式の始まりを待つ。
保護者席に視線を向けると感極まり、既に涙目になっているお父様と呆れているお母様、12歳になって反抗期に入った可愛い弟、ノアがいる。成長してもとってもキュートなノア君、マジ天使!
しばらくして開会した入学式は学園長の長い挨拶から始まった。
これはどこの世界でも共通なの?しかも似たような事を仰々しく話しているだけにしか聞こえないし、早く終わらないかな…。
やっと学園長の挨拶が終わり、次の生徒会長挨拶でその人物の名前が呼ばれた瞬間に「「「キャー!!」」」という女生徒の黄色い歓声が上がった。
その声に片手を上げながら応えて、壇上に上がったのは攻略対象者のアレクセイ・フォル・メアスミレ第三王子殿下だった。
サラサラとしたプラチナブロンドの髪に、吸い込まれそうなほど深いエメラルドの瞳。
そりゃあ、イケメンの登場にテンション爆上がりするよね!何なら私も歓声上げちゃったわ!それに王道王子様って感じで、ゲームのまんま!
「今日という良き日に、我がセントラル学園へ皆様が入学された事、生徒代表として心より歓迎致します。我々生徒並びに教職員一同、皆様と共に学園生活を送れることを楽しみにしておりました」
生徒会長挨拶が始まると辺りはシーンッと静まり返って生徒会長の美声だけが響き渡り、話し終わった瞬間、講堂には溢れんばかりの拍手が巻き起こった。
勿論、私も精一杯拍手をした。だって声も内容もほんっとうに素晴らしかったんだもの!
こうして私の学園生活はスタートしたのだった。
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