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4thファイル:零能探偵事務所

【前回のあらすじ】

夜の学校で猟奇霊の『鳥籠』に囚われてしまった文乃と輝。

文乃は霊を『視る』事によって霊の隙ができるタイミングを作り、祓うことの出来る輝の射撃によって猟奇霊は無事除霊された。

その後文乃には多くの夜の世界の秘密が残されたのであった…

「…………」


今日もまた、補習から帰ってきてベッドに寝転がる。

あの夜に斬られた傷はそこそこに深かったが、幸い手術するレベルでもないらしく、安静にすることを条件に、手当をされて開放された。


…まぁそれはそれとして、夜間に外出した件に関して母親にドチャクソ叱られたが。


「…だーめだ、どうしてもあの夜のことが忘れられない……」


夏休み当日のあの日、俺は色々なことに巻き込まれてしまった。

その中でも、神園 輝という名の『霊能探偵』というのがずーっと気になっている。

『僕たち』とも言っていたし、ああいうのが他にもいるって事だろうし…


それに、俺の眼にあるって言う『魔臓(まぞう)』というのも詳しく教えて貰っていない。

…なんというか全部中途半端に教えられた気分だ、あんまりいい気にはなれない。


「…そういえば…」

あの日貰ったあの名刺…見たら事務所の電話番号と、裏にご丁寧にこっそり手書きで住所まで書いてある。


「………………」

これは…来い、と言われてるような気がする。

そうじゃなければ、わざわざ手書きで住所なんてかかないだろう。

夏休みの宿題もある程度進んでるし…行ってみるとしよう。


「母さん、少し出かけてくるよ。」

「……むぅ。」

「そんな睨まないでってば。」


あの日以降、母さんは俺の事を非常に心配するようになった。

まぁ息子が夜に大怪我したんだからしょうがないことといえばそれまでなんだけど…


「ちゃんと夜までに帰ってくる?」

「うん、約束する。」

「なら、行ってらっしゃい。

気をつけてね?」

「わかった!」


そうして俺は意気揚々と外に出る。

名刺に書いてある住所に向かうが…結構近くないか?

徒歩15分位の場所にある場所だ。

「ここが…というか、なんかボロくないか…?」


住所に書いてある場所……の、横の裏路地にひっそりとした扉があった。

その扉の横には、『神園霊能探偵事務所』と書いてある札かかけられていた。


「…」


あんな綺麗そうな人だったのに、こんなボロボロの所に住んでるのか?

兎にも角にも、あの夜のことを聞かないと色々気が済まない。

「すみませーん。」


扉をノックする。

返事は無い。

「書いといて不在…?」


呼び鈴のようなものも無さそうだ。

「ん?扉…鍵かかってないのか。

まぁ、中にいるかもだし行くか。」


扉を開け、中に入っていく。

部屋の中は思ったよりも色々しっかりとしていて、漫画で見た『探偵事務所』まんまのように感じる。

入口さえしっかりしていれば人も来そうなもんなのに……


「あの人はっ…と…?」

「すぴー……」

「えっ?」


寝ている。

ソファで横になって寝ている。

しかも結構雑な感じで。

この人一応女性なのでは…?


「あのー…探偵さん?」

「んがっ…?

んぅ…?」

「…(声本当に女性なんだよな…なんで男の格好してるんだろうこの人…)」

「くぅ、ふぁぁぁ…おはよう…誰…?」


寝ぼけているのか、すっごいぽわぽわした声で受け答えしてくる。


「もう昼過ぎなんが…」

「ん……あぁなんだあの時の少年かぁ…よく来たねぇ…」

「ぽわぽわしすぎ…呼ぶようなことしといてなんの準備もしてないのかよ…

というか寝るなら戸締りしろ!」

「母親みたいなこと言うじゃん…ふぁぁぁ…」

探偵さんが起き上がり伸びをする。


「ん、よく来たね少年…今お茶出すから座って待っててくれ。」

「あ、はい。」

言われた通りにさっきまで探偵さんが寝ていた椅子に座る。

少しして探偵さんがお茶を持ってやってくる。

「どうぞ、少年。」

「うす。」

「あ、あと僕のことは『探偵さん』って言うんじゃなくて気軽に下の名前でいいよ。」

「下の名前……輝さん…でいいのか?」

「うんうん。

それで、なんの要件かな?少年。」

「俺の名前は松原 文乃だ。」

「そうだね、君の名前はあれから調べてそれで知ったよ。

それで、何かな少年。」

「名前伝えたのに…

それはそれとしてあの夜のことだ。」

「……あの夜のことは忘れるようにって伝えた筈だけど?」

「忘れられるわけが無いだろ。」

「ま、そうだよねぇ…1度変わってしまった視点というのは、戻すのに時間がかかるものだ。」

「説明してくれよ、ちゃんと。」

「話すことは構わないが…その先に進むなら、帰って来れなくなるよ?」

「え?」


バタン。

さっきまで空いてた扉が閉まる。

鍵がかかった気もする。

扉側には誰もいなかったはず…


「その先は、知ってはいけない…俗に言う『深淵(しんえん)』というやつさ。

その先を知りたいのなら、君はこの夜の世界に嫌でも足を踏み入れることになる。」

「…また、あの夜みたいなことに巻き込まれるってことか?」

「それだけならいいよ、あんなのはまだ序の口の方だ。

…それでもいいなら話すよ、色々条件付きではあるけども。

嫌ならすぐにでもそこの扉から帰った方がいい、呼んだ風にした所申し訳ないんだけどね。」


輝さんは俺の事を脅すように、圧をかけて俺の事を威圧してくる。

「…それでも、俺は知りたい。

何故こんなにも霊障が増えたのか…そして、父さんは…

『何に』消されたのかってことを。」

「何か霊に対して恨みを持っているのかな?そうには見えなかったけど。」

「…2年ほど前だったっけな、俺の父親は警官だったんだ。

ただ、ある日の夜警の仕事からあの人は二度と帰ってこなかった。

ちょうど…霊障が増え始めていた頃だった。」

「…………」

「…父さんの遺体は、まだ見つかってない。」

「まるで神隠し、だね。」

「あぁ、俺は絶対霊のせいだと思ってる…生きていたら絶対に探し出さなきゃだし、もし死んでしまっていても…ちゃんと弔ってやりたい。

だから、俺は母さんの為にも、絶対に父さんを見つけ出さなきゃならないんだ…!」

「ふむ、いい目をしてる…よろしい。」


そう言うと、輝さんは1枚の紙を出す。

それには、『契約書』と書かれた代物だった。


「ここに君の名前を書くといい。

それで、君はこの事務所の一員となる。

……ただし、書いたからには…果てしない夜の世界に足を踏み入れることになる。

覚悟を決めろよ、少年。」

「…」


目の前に置かれた1枚の紙。

きっとこれに名前を書いてしまったら、俺の人生は普通とはかけはなれた…壮絶な物になってしまうのだろう。

母さんも、絶対俺の事を止めるかもしれない。

それでも。

それでも俺は…父さんが失踪した真相を知りたいんだ。


そうして、俺は契約書に名前を書く。

輝さんはそれを回収すると嬉しそうな顔で…


deal(ディール)!…よろしく頼むよ、少年。」

まるで全てが狙い通りになったと言わんばかりに、微笑んでいた。


「……ああ。」

この人が何を考えているのか、今の俺には分からない。

だからこそ…この眼を利用されようと…逆に俺があんたの事を…利用してやる。

「さて…改めてようこそ!『零能探偵事務所』…もとい、神園霊能探偵事務所へ!」

次回

5thファイル:『夜の世界』

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