8:エルフ、事情聴取を受ける(2)
エルフのお食事シーンを初めて書いたので初投稿です。
事情聴取を受けてから、少し遅い昼飯の時間だ。
というか、外をちらりとみたらきれいな夕焼けだったので、もうこれ昼飯&夕飯だろう。
「枝葉さん、頼まれていた出前来ましたよー」
「はーい、それじゃあ夕飯にしてご飯を食べてから事情聴取を再開しましょうか」
「そうですね、もうお腹ペコペコで死にそうですよ」
「私もお腹が空いていましてね……この辺りだと中華料理と蕎麦屋の出前がありますが、やはり蕎麦屋が一番美味しいですね」
「ほぉ、それじゃあカツ丼とざるそばセットを頼んだのはまさに僥倖というわけですね」
どうやら枝葉さんの推しの蕎麦屋の出前らしい。
自腹とはいえ、それでも有り難い。
枝葉さんが他の警察官から出前で持ってきてくれたカツ丼とざるそばセットが到着した。
カツ丼はお店で出されるようなちゃんとした器……ではなかった。
コンビニやスーパーの即席品の料理が盛りつけて入っているような、プラスチックっぽい素材でできた器であり、これはざるそばに関しても同様であった。
(アレ……思っていたやつと違う……)
刑事ドラマとかで見るやつでは、器もお店で出されるようなヤツであり、ざるそばに関してもしっかりと出前でもお店で使われるような箱にそばつゆが収納されているタイプが多かったはずだ。
ちょっとばかり疑問に思ったので、枝葉さんに尋ねてみた。
「アレ……カツ丼の容器ってプラスチック製っぽいのに切り替わっているんですか?」
「ええ、取り調べの際に犯人が暴れて器を割って武器にするのを防ぐためでもありますし、感染症の流行でテイクアウトが主流になってから、こういった容器でテイクアウトやデリバリー配達も多くなったので、警察では6年前から出前を取る際にはこうした容器に入れてから差し出すようになったんです」
「そうでしたか……いや、80年代の刑事ドラマだと、普通に『カツ丼食べるか?』って言ってしっかりとした器持ってきたんで、そのイメージが根深いですね」
「あはは、確かに今でもそれを勘違いしている人も多いですよ。さ、夕飯ですよ」
テーブルの上に置かれたカツ丼の蓋を開けると、ホカホカで暖かい卵を閉じたカツが目の前にある。
本当に昼飯を食べていなかっただけに、カツ丼の香ばしい匂いが鼻の中に入り込んでくる。
美味しそうだ。
「では、いただきます」
「どうぞ、召し上がってください」
両手をついてから、カツ丼とざるそばをいただく。
俺の今の胃の中は食事を求めてグルグルと唸っている。
まず最初に箸を運んだのは、カツ丼からであった。
一口目に、卵をとじたカツを摘まんで口の中に入れる。
豚カツのカリッとした食感と、卵が絶妙に絡み合う。
これは美味しい。
一口目で、既にご飯も駆け込むように食べてしまう。
それぐらいに美味しいのだ。
「ハフッ、ハフッ!ハフフホフッ!!!」
口の動きと箸の動きが加速する。
箸を動かす度に、胸元の震えが止まらない。
ちょっと揺れる胸に当たってしまうのが難点だが、それでも目の前にあるカツ丼を食べていく。
二口目、三口目と箸を動かしていると、口が連動してトロっとした豚カツを口の中に放り込んでしまう。
カツのタレが染み込んだご飯に、豚カツの衣が包み込む。
それはもう炭水化物と糖質のオンパレード。
それだけに旨いのだ。
お茶や水の補給がいらないほどに、俺の胃袋の中身はカツ丼の中身を平らげるべく、勢いよく箸を動かして胃の中に入れこんでいる。
「この豚カツがまた美味しい……器のすみっこに置かれている紅しょうがもまたアクセントを引き出している……本当に美味しいですね」
「え……ええ、でもあまり掻き込むように食べると身体に悪いですよ?」
「すみません、でも美味しくて……それでいて箸が止まらないんですよ……」
「……やはりそれだけお腹が空いていたんですね」
「昼飯も食べれなかったですし、まぁ……もしかしたらこの身体になった影響で空腹になりやすいのかもしれないですわ……ハフフ!ホフッ!」
……止まりませんわ。
箸がもうカツ丼を飲み込むように口の中に次々と入れられていきますわ!
さっきまで丼いっぱいにあったはずのカツ丼はあっという間に無くなってしまいましたわ!!!
でもまだざるそばがありますわ!!!!!!!!!!!
俺はすかさずに盛りつけられている蕎麦をつゆの入った器に入れて、啜りだす。
やはり蕎麦屋で作られた蕎麦だけに旨い!
そば粉は八割そばだろうか。
五割そばに至ってはそうめんみたいな色をしているのに対して、こちらはちゃんと灰色になっている。
蕎麦の風味もあって、それでいて麺の喉ごしも最高だ。
そばつゆと蕎麦のハーモニーがマッチングしている上に、今まで食べてきた蕎麦屋の中でもトップ3に入る程の美味しさだわ!
エルフの身体になっているのが原因かどうか分からないけど、凄くお腹が空いている。
カツ丼を平らげたのに、腹八分どころか腹三分ぐらいしか溜まっていない感覚だ。
「ずるるるっ!!!本当に美味しい蕎麦だわ……」
「す、すごく蕎麦も食べるのが早いですね……」
「え?そうですか?でも美味しくて美味しくて……」
女性が派手に蕎麦を啜って食べるのはいけないのでしょうか?
いいえ、もう目の前にいる枝葉さんがビックリして口を大きく開けてポカーンとした顔になっているけど、もう気にしていられないぐらいにお腹がまだまだ空いているわ。
もう止まらない。
俺自身が食欲モンスターとなってざるそばが胃の中に入っていく。
そして器に最後に残った蕎麦とそばつゆを一気に口の中に流し込んだ。
食欲が制御不能なレベルにまで口の中に入れないと気がすまない。
思想も若干暴走しているような感じになりながらも、昼飯と夕飯を平らげることが出来た。
あ、でも枝葉さんがさっきに比べてちょっと引き気味になっているのは失敗してしまったかも……。
2023/2/10 追記:食べ方をマイルドにしたほうがいいというアドバイスがあったので一部表現内容を変更しました。