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7:エルフ、事情聴取を受ける(1)

 スーパーで水魔法を使って強盗犯全員を退治した結果。


 俺は見事に重要参考人として取り調べを受けていることになった。


 ちなみに今、女性の刑事さんが取り調べを担当するそうだ。


 取調室の重々しいドアが開いて、部屋の真ん中にある机と椅子、そして取り調べの内容を書き記す書記係の人が入り、俺は窓側のほうに座った。


「こんにちは、刑事課、刑事第一係の枝葉です」

「あ、どうも……」

「これから色々とお話を伺いますが、よろしいですね?」

「はい、お願いします」


 枝葉さんはスーツ姿でビシッと決まっている。


 やはり派手に魔法を使ってしまったのがまずかったらしい。


 というよりも、魔法が使えることに驚いたと同時に中学生みたいにはしゃいで魔法を行使した結果……。


 陳列棚に置かれていた生活用品と、ペットフードコーナーは全損し、おまけに水砲撃ウォーターキャノンが直撃した強盗犯3人が胸部の骨折といった具合に、割と大怪我をしたという。


 元々セルフレジをハンマーで破壊したり、店員さんに長包丁突き付けて現金奪っていた連中なので、大怪我をしたと言われても「そんなん向こうが犯罪をしなければ良かったじゃないですか」と言えばそれでおしまいなのだ。


 それに、俺はちゃんと犯人だけを狙った。


 他のお客さんとかの被害はゼロ。


 強いて言えば、水がちょっと降りかかっただけだ。


 クリーニング代ぐらいは請求されたら支払いぐらいはしよう。


「スーパーを襲った犯人たちを一人で無力化したのはスゴイことだけど……でも、本当に貴方は男性なのですか?」

「……うーん、一応昨日までは男だったのは確かです。何の変哲もないタダノ男……そうです。今、こんな身体になっちゃっていますけどね」

「犯人を無力化したこともスゴイけど、その話に関しても詳しく聞きたいのでよろしいですか?」

「ええ、構いませんよ」


 枝葉さんを悩ませたのは俺のこの身体だ。


 豊満な胸とか、むちむちなボディで枝葉さんを悩殺させようとはしていない。


 ただ、身体が完全に女性になってしまった事。


 それに加えてエルフになっている現状では、自分が元は男性で人間ですといっても、免許証の顔からして全く異なる様相なので、信じてもらうのにかなり時間が掛かってしまった。


 免許証を見せても性別は合わないと言われる上に、エルフ特有の日本人ですらないヨーロッパ系と長い耳の特徴により、不法入国した外国人疑惑まで出てきてしまう。


 ただ、身分証明書の番号や住んでいる住所、今月半ばに銀行の窓口で年金を支払った日にちと時間、働いている先の会社で担当している仕事内容と、社員番号などを話すと次第に信じてもらえるようになった。


 極めつけは、この警察署で勤務している警察官を覚えていたことが功を奏した。


 会社で行っている年一回の交通安全指導で来てくれた前田さんという交通課の人を会社で案内し、対応したのが俺だったのだ。


 それにお世話になっていた交通課の前田さんの話を枝葉さんにすると、枝葉さんの表情も和らいでいき、信憑性が持てるとして真摯に話を聞いてくれるようになった。


「身体検査もやってもらいましたけど『女性』でしたからね……お持ちになっている免許証に記載されている住所や、確かに貴方が仰っていた名前も性別も年齢も一致していますし……どうやら本当のようですね」

「交通課の前田さんが丁度この間、働いている会社で交通安全指導をしてくれたんですよね。丁度前田さんが覚えていてくれてよかったですよ」

「ええ、前田からも聞きましたが確かに貴方から対応したと言っていましたね。しっかりと話の内容なども合致していますので、間違いないですね……」

「でもおまけにエルフみたいな風貌ですし……どうしたことか……」

「念のため、会社の上司の方とやり取りを聞きたいのでお電話してもらってもいいですか?」

「ア、ハイ……」


 またその際に、会社のセクハラ上司とも連絡を取り合った。

 俺が一連の事情を説明すると酒に酔っているのか、大声で笑いながらこう言ってきた。


『ダハハハハッ!!!お前が女になっているなんて……これからセクハラしても男だから出来るな!ガハハハッ!!!』


 ……と、かなり最低で酷い言葉を投げかけられた。


 割と傷つく上に頭に来たので、今度会社に出社したらセクハラ上司を魔法の力で制裁することに決定した。


 セクハラ上司との電話後、取調室の気まずくなった空気を入れ替える為に、枝葉さんが話を切り出した。


「まぁ……その……お腹空いています?」

「めっちゃ空いています。かれこれ3時間以上取り調べられていると本当に時間の流れが分からなくなるので……カツ丼って食べれます?」

「ああ、夕飯としてなら出せますけど、自白調書みたいな事になったらいけないから、お金は自腹ですけど、それでもいいですか?」

「ええ、お願いします。それからざるそばもセットでください」

「大丈夫ですか?かなりの量になりますけど……」

「いいんです、さっきの上司のクソみてぇな台詞聞いたら腹立たしくなってきたので、食で発散しようと思います」


 とにかく俺はまだ昼飯も食べていない。

 身体検査なども受けて、身体を調べられたということもあってかなり疲れてしまった。

 なので、カツ丼やざるそばをセットで購入し、取調室で食べることになった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >『ダハハハハッ!!!お前が女になっているなんて……これからセクハラしても男だから出来るな!ガハハハッ!!!』  一応。  厚労省のセクハラ指針とやらによれば、同性でもセクハラ認定されます…
[一言] 魔法や呪いは実行不可能とされているので、それを使っても不可能犯という扱いになり刑事罰は問われません。 刑に問うならばどうやってあの放水をしたかを科学的に説明し、それを彼女が行った証明をしなけ…
[一言] 警察が横で聞いてるのに堂々と今度セクハラするわ宣言する上司やべぇな…… 魔法でシメられるだけで済むのか……?!
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