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6:エルフ、魔法を使う(2)

 やってしまった。


 それも「ド」が付くほどに派手にやらかしてしまった。


 まさか本当に魔法が使えるなんて思いもしなかった。


 あれ、冗談のつもりでやったんだけど……マジで使えるとは……。


「う、うわああああああ!た、助けてくれぇぇぇぇっ!!!!」

「なんだ!一体どうしたんだ!って、うわあああああああ!」

「水だ!水がああああああああああああ!」

「溺れる!溺れるぅぅぅぅぅ!」


 勢いよく俺の右手から噴き出している水。


 まるで消防車から噴き出してくるぐらいの勢いで、大量の水が強盗犯達目掛けて押しよせていく。


 ドドドドドドドドドッ!!!!!ドババババババババババッ!!!!!


 水が飛び出る凄まじい音でスーパーで流れていたBGMや、レジの警報音がかき消される程だ。


 轟音と呼ぶに相応しい程にうるさい。


 消防法によって建物内での設置が義務付けられている屋内消火栓のホースのように噴き上げていく。


 河童の川流れならぬ、強盗の川流れと言わんばかりに水に押し出されていく強盗犯たち。


 慌てた様子でレジの裏側に駆けこんできたが、こいつらにも水をお見舞いしてやった。


 強盗犯たちは水に押し出されないように、色んなものに必死にしがみついている。


 叩き壊したセルフレジにしがみつく奴。


 買い物かごや、レジ袋を入れるスペースにしがみついている奴。


 さっき普通のレジで店員さんを脅しながら金を奪っていた強盗犯の一人に至っては……。


「うわーん!怖いよー!いやだあああああ!ママアァァァァァァァ!!!!」


 ……と絶叫しながら店員さんに抱き着いている。


 おいお前、完全に幼児退行みたいな事しているんじゃない。


 少なくともレジを破壊していたハンマーを持っていた連中は身動きが取れない状態になっている。


 これはチャンスだろう。


 俺はすかさず腰が抜けて起き上がれない犯人に指を指した。


「さぁ早く!その人たちを取り押さえてください!」

「あっ、はい!」


 レジの前で立ち尽くしていたり、遠目で見ていた人たちがずぶ濡れの犯人たちを捕まえようと駆け寄ってくる。


 完全に気を失っていたり、足が立たない犯人は直ぐに取り押さえられた。


「に、逃げろぉぉぉぉっ!」

「ひぃぃぃぃぃっ!イカれているわアイツ!」

「あっ、コラ!逃げるな!」


 ハンマーを置いて逃げようとする犯人が二人程いた。


 スーパーの自動ドアの手前まで、駆け足で向かっていく。


 だが……俺は犯人を逃がさなかった。


 勢いよく右手から噴射する水に敵わない。


 ドドドドッ!ドバババババババババッ!!!!!!


 噴射する水が逃げようとする犯人たちに直撃する。


「ぐぇぇぇっ!」

「ひぃぃぃぃぃっ!」


 直ぐに自動ドアが開く前に犯人に水が押し寄せて、叩きつけられる。


 20秒程水を浴びせたら、二人ともぐったりとした様子で倒れ込んだ。


「おい!一体なんの騒ぎだ!」

「お、おい……札が、札が水でずぶ濡れだぞ!」

「貴様!よくもやってくれたなぁ!ただのギャルじゃねぇな!」


 金庫にいた強盗犯たちが慌ててレジの方に駆け寄ってきた。


 金庫から強奪してきたと思われるレジ袋いっぱいに詰め込んだ札束を抱えており、手には長包丁を持っている。


 強盗を台無しにされて相当怒っているようだ。


 長包丁を振りかざしてこちらにやってきたのだ。


 もうこうなってしまったら半分ヤケクソでもいいのだ。


 反撃されて長包丁で刺されて死ぬのを回避するためにも、自衛のために水を出さなければならないのだから。


 先ほどよりも威力を上げる事って出来るのかな?


「皆さん!伏せてください!」


 俺は、放水よりも更に威力のありそうな単語をイメージし、叫んでみることにした。


水砲撃ウォーターキャノン!!!」


 ズババババーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!


「「「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」


 ……いかん、これはやり過ぎた。


 水砲撃と叫んだ反動で右手が思いっきり跳ね上がり、長包丁を持っていた犯人たちにまとまって水の塊が直撃する。


 すると犯人たちの身体が宙に浮いただけではなく、後ろの陳列棚を何個も押し倒す程の勢いで発射されてしまったのだ。


 ……ま、まあ結果として犯人たちを全員捕まえることが出来たし、いいよね?と思ったが、世の中はそう甘くはない。


「……では、あなたが犯人たちを鎮圧するために水を使ったと?」

「え、ええ……その通りです……」

「部長、どうします?色々と錯綜したような情報も聞こえてきますので、署の方でじっくりと話を聞くべきかと……」

「そうだな……すみませんが署までご同行願えますか?」

「ア、ハイ」


 警察が到着した後、俺は事情聴取を含めて警察署に連行される羽目になったのだ。


 結果として犯人複数人を逮捕することに貢献したのに、これは内心でもショックであった。

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