表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/28

4:エルフ、スーパーに立ち寄る

 胸のサイズに見合うブラジャーを買う事が出来て、一先ず安心した矢先。


 俺の脳裏に電流が走る。


「しまった。昨日仕事帰りに買いだめするのを忘れたんだっけ……」


 自室の冷蔵庫が空っぽなのを思い出し、思わず呟いた。


 そうだった、家に食べ物がない。


 酔っていて忘れてしまったが、本来だったら食材などを買うべき日だった。


「参ったなー……お菓子も無いはずだし、家の冷蔵庫すっからかんだわ……」


 台所を探せば缶詰の一個ぐらいはあるはずだが、それでも辛うじて腹の足しになる程度であり、夕飯はおろか昼飯としては完全に物足りない。


 せっかく外に出ていることだし、一週間分のご飯を買い込む必要がある。


 さっきファッションセンターに行ったときに店員さんから、胸以外……エルフになったことを指摘されなかったことを踏まえても、多分大丈夫だろう。


「まぁ、今の俺は傍から見れば若いギャルに見えなくもないな……」


 ファッションセンターの外の鏡を見てみる。


 自分の姿が映し出されているが、髪が丁度耳を隠している上に、帽子もしっかりとかぶっている。


 服装が男物(元が男だから服がこれしかない)だから、原宿にいそうなギャルっぽい感じになっているので、そこまで見た目の違和感を感じない。


 ただ、胸がデカいこともあってか、顔や耳よりも胸に注目が集まってしまうのは致し方無いことだと思っている。


 さっきもすれ違ったおっさんが俺の胸をチラチラ見ていたが、やはりこれだけ大きいと男はつい見てしまうのだろう。


 俺だって大きくて立派な胸を揺らしている女性がいたら気にして視線を向けてしまうかもしれない。


 本能的に視線を向けてしまうのは避けられないことだ。


 それを除けば、普通に買い物が出来るだけでも良かった。


 異世界に転移したり、規律が厳しい諸外国ならば懲罰の対象になり得るかもしれないからね。


 日本でよかったわ~と思うわけ。


「うん、さっきのお店でブラジャーも買えたんだから、このままでも大丈夫だぞ俺……きっと大丈夫」


 ブラジャーで2万円の資金が吹き飛んでしまったものの、これは必要経費というやつだ。


 さらに一週間分の食事の材料を買い込むのも、生きていく上で必要な行為でもある。


 通販だと割高料金を取られる上に、到着まで時間が掛かる。


(……となれば、食材を買うのはコンビニよりもスーパーで買った方がいいかな)


 その点、スーパーマーケットはコンビニよりも安い上に、品揃えも豊富だ。


 タイムセールではないにせよ、消費期限が近い食べ物が安く売っている事もあるので、丁度今ぐらいの時間帯が空いている頃合いだ。


 そう自分自身に言い聞かせて、先ほどブラジャーを買った大手ファッションセンターの丁度向かい側にある24時間営業のスーパーに足を運んだ。


「さてと……割引商品はあるかなぁ~?」


 早速スーパーの入り口で買い物かごを手にとって真っ先に向かったのは、食べ物や飲み物の消費期限が近くなったり、売れ行きが不調の商品が安く売られているワゴンの場所だ。


 ワゴンに沢山の商品が並べられているが、いずれも「30%引き」や「半額」等の値引きシールが貼られており、普段なら150円するお菓子も、3割引きシールが貼ってあるなら105円ぐらいで購入できる。


 所謂ワゴンセール品というやつだ。


 しがないサラリーマンの為……いや、金が苦しい時に皆が重宝する場所でもある。


 スーパーに入って丁度真ん中の通路にワゴンが複数置かれており、それぞれのワゴンには『割引商品陳列中!』の可愛らしいポップが飾られており、かなり目立つ。


 そんなワゴンを覗き込み、どんな商品があるのか確認する。


「どれどれ……あー、大半がお菓子ばっかりだなぁ……しかもポテトチップスばっかり……」


 ワゴンの中にはポテトチップスの袋が山積みに置かれていた。


 大手ポテトチップスメーカーの出した新商品が山のように積み上がっており、試しにスマートフォンで検索してみると、これがあまりにも味の評価は芳しくない。


 通販サイトやネット掲示板、SNSのレビュアーを見てみる。


『まるで真夏の炎天下で丸二日放置した魚のような臭い』

『食べた瞬間は甘味が来たかと思ったら、噛んで急に強烈な酸味で舌がおかしくなった』

『コーヒーに炭酸を混ぜて飲ませるぐらいの愚行な食感を体験した』

『生まれて初めてお菓子を残しました』


 ……という、メーカーが自主回収するレベルの酷い味のようだ。


 それも相俟って売れ行きが悪かったのだろう。


『コイビン製菓「梅とチーズと時々サラミ風味ポテトチップス」全品半額!』の文字がでかでかと掲げられている。


「こんなに値引きしてもワゴンに沢山残っているのって……やっぱ売れ行きが悪かったんだろうなぁ……」


 ある意味、このポテトチップスは犠牲になったのだ。


 せめてうすしお味だったら、ここまで酷いことにはならなかったのかもしれない。


 次のワゴンに向かうと、こちらもワゴンの大部分をさっきのポテトチップスが占領していたが、わずかに残った隙間には消費期限の近いパンが置かれていた。


「ツナサンドが2割引でアンパンが半額か……」


 ツナサンドは消費期限があと2日程だが、アンパンは明日までと書かれている。


 なら、アンパンを明日の朝食べて、ツナサンドを明後日の朝に食べればいけるだろう。


「よし、この二つのパンを買うとしようか……」


 買い物かごにパンを入れたその時、突如としてレジの方から甲高い警報音が鳴り響いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ