18:エルフ VS セクハラ上司(4)
ボイスレコーダー……。
こればかりは言い逃れをすることは無理だ。
ここに証拠があるからね。
これはもう勝ち確定ではあるが、二糖部長が一族経営をしている会社のメンバーである事を考えれば、このままほとぼりが冷めるまで謹慎した後に、復活してしまう恐れがある。
こいつは絶対に復活させてはならない。
封印の剣みたく、しっかりと管理に置いた上で世間一般から遠ざける必要があるのだ。
例によって、二糖部長は「これは陰謀だ!土江が私を嵌めようとしているのだ!絶対に許さない!」と言って、殴りかかってきたので、傍にいた他の社員が慌てて取り押さえた。
何というか……あれだけのことをしても、我儘一杯に育てられたのが影響して、悪いことをしたという自覚がないみたいだ。
ここまで大多数の人間にボイスレコーダーの証拠を聞かれても、反論しようとする辺り……。
やはり今までそうやって物事を解決してきた人なんだと実感する。
「暴れるのはやめてくださいよ。二糖セクシャルハラスメント部長、ただでさえ貴方の信用はガタ落ちしているのに、これ以上落ちるものはないでしょうに……」
「貴様ァッ!土江!!!土江!!!私ではなくこの男を、この男を取り押さえろ!」
「男……?いえ、今は女性のエルフですよ。第一、あなた欲情してズボンのチャックとベルトを外していたじゃないですか」
「アレは出鱈目だ!嘘だろう!私を陥れようとするための罠だ!」
「そう仰っていても、あなたが私に対して行った行為が消えるわけではありませんよ?」
セクハラ行為、性的暴行未遂、暴力未遂……これだけでも一般の会社ならクビにできる。
しかし、一族経営となればお情けで解雇されずに残留することもあるのだ。
ホント、ウチの会社は自洗作用がないのだ。
ここで空気も社風も入れ替えておく必要があるね。
傍にいる田城に話しかける。
「……田城、やはりこの二糖エルフハラスメント部長に説教しても埒が明かないな」
「ああ……というか、マジでコイツはさ……ドエロに発情したんだな……」
「俺に発情か……いやー……嫌だねホント。部長にそんな目で見られていたと思うとゾッとするよ」
「まぁ、もう部長にいられるか分からないけどな」
「「HAHAHAAHAHA!!!」」
もう笑うしかない。
こんな部長のために仕事をしていたと思うと、笑いが止まらない。
人間のクズという言葉がピッタリな奴に従えていたんだ。
相手もそうだが、自分自身の不甲斐なさに笑った。
二人でひとしきり笑った後、俺は田城に頼み事をした。
「田城、社長と取締役を大至急呼んできてくれ」
「ああ……社長と取締役でいいんだな?」
「うん、会社に関わる重大案件が発生したからって言えばすぐに来るさ」
そこで、二糖部長の叔父であり社長と取締役である両親を呼んで、話を付けることにしたのだ。
田城は社内用の携帯電話を取り出して、大至急このフロアに社長と取締役が来るように呼び出しをしている。
ただ、俺と社長と取締役で話を付けるのは些か不安だ。
このフロアにいる社員一同が証人として見守る必要がある。
なので、皆には一言断りを入れた上で、社長、取締役がしっかりと約束を守る様子を各自録画してもらう。
そこから公正公平な条件で行ったものであることを立証する事をお願いしたのだ。
「皆、これから社長と取締役に話を付けるから、その様子をスマホのカメラで撮影してもらいたい」
「でも、そんなことしていいのか?」
「今更だけど、二糖部長の行為はれっきとした性犯罪行為だよ。世間一般の会社なら懲戒解雇されるような内容だ……部長の職務に就かせた社長と取締役にも責任はあるさ」
そうだ。
これもここまで甘くしていた俺たちにも責任はある。
セクハラ行為としても、事なかれ主義を貫いていた自分たちもいけないんだ。
だから、ここでイタズラではなくしっかりと変えておく必要があるんだ。
「だけどさ……あの二糖部長に激アマな両親だぜ?今更如何にかなるわけないんじゃ……」
「いや、その激アマな事を利用しておくんだ。私にいい考えがあるからね……」
「し、司令官式の台詞はフラグじゃないか……?」
「安心しろ、大体8割方成功しているさ」
何も考えナシにやっているわけではない。
こんなゴミカス汚物と化している二糖でもその存在に関しては価値があるのだ。
少なくとも一族であるからには、見捨ては出来ないんだ。
コイツは取締役の両親の一人息子という事も幸いだ。
もし、兄弟姉妹がいて、そっちが部長職をしていたらこのやり方ではダメだった。
別のアプローチをする必要があったけど、取締役からしてみれば大切な我が子でもあるんだ。
「土江、社長と取締役がお見えになられたぞ」
「おお、田城こっちに通してくれ。それから男性社員は二糖部長を取り押さえていてほしい」
「分かった」
さて、この際膿は出し切っておこう。
膿を残して再発しないようにね……。
俺は叫んでいる二糖に対して低い声で「だまれ」と言ってから、社長と取締役と対面することになった。
フロアにいる全社員が見守る形で……。




