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13/28

13:エルフ、会社に出勤する(4)

 やや前髪が後退して小太りの忌々しいセクハラ上司の名前は二糖(ふとう)ふとしと言う。


 彼は部長職ではあるが、このオフィス内で一番権力をもっている男だ。


 そしてこいつはオフィス内における「がん細胞」と言っても過言ではないぐらいにセクハラをすることで有名だ。


 50歳に差し掛かり、加齢臭に関してはまだ個人差ということもあるので致し方無いと思う。


 だが、彼がセクハラ上司と直球で揶揄されているのは、セクハラの内容が直球的なものが多いからだ。


 早速、二糖は近くで机の上を雑巾で拭いていた女性社員に目を付けて、お尻に平手でパチーンと叩いた。


「おいおいおい~!気合いが足りんぞ~!ちゃんとケツに力を入れて立ってろよ~!」

「ひぃっ!」

「うわー……早速やっているよ……」

「こりゃ一波乱起こりそうだな……」


 二糖はこれが普段通りなのだ。


 彼はセクハラに始まり、セクハラで終わる男でもあるのだ。


 女性社員に対してケツを凝視してから気合を入れるためと称してケツを触れる。


 仕事中にバストサイズを聞いてきたりする。


 今度仕事が終わったら一緒に飲みに行かないかと口説いてくる。


 これはまだ序の口であり、酷い場合には女性社員の名前を口にしながら激高したことがある。


『お前は仕事が出来ない!出来るのは好きな男に向かって股を開く事だけだ!』


 ……という、とんでもない暴言を吐いた。


 これに関しては暴言を吐かれた女性社員が社長室に突撃した程だった。


 社長から説教を受けたのかしばらくはセクハラは一旦落ち着いたが、半年後には戻ってしまった。


 セクハラ行為が横行していた昭和時代ですら人権軽視として訴えられる案件だ。


 これが普通の会社なら退職処分になってもおかしくは無いが、残念ながらそれはできない。


 株式会社グリーン・オブ・デッドは二糖の叔父が社長であり、両親が取締役を務めている。


 所謂同族経営を営んでいる会社であるため、親族間のつながりが極めて深いのだ。


 また一族が複数の会社を所有しているため、それなりに規模も大きい。


 金融や福祉サービスにも事業を手掛けているので、業界では顔が効く。


 その上課長以上の役職者の大半が二糖一族にポストが置かれている。


 ごく稀だが、二糖以外の人間でも有能な人間や、二糖と親しい間柄である人間が部長職に就くこともある。


 けど、そうして出世した奴は両手で数える程度しかいない。


 ただ、二糖をはじめとした一族に気に入ってもらえば、社内で好待遇を受けることが約束されている。


 特に女性社員が二糖との関係が良好だと、その分給料に反映して割高に出してくれたりするのだ。


 故に、他の企業に比べて給料が良いのでセクハラを我慢している女性社員が多いのが現状だ。


 あまりにもセクハラが酷い場合には田城が助け舟を出してくれるのだが、それでも毎年新入社員として入ってきた女性社員の3人に1人は()()()()()()()退()()を余儀なくされている。


 そんな時代遅れでいい加減なセクハラ上司こと、二糖部長はニヤニヤと笑みを浮かべながら、コーヒーを飲んでいた俺と田城の前にやってきたのだ。


「ほぉぉぉ……本当に土江君かね?エルフの格好になっていると聞いたが想像以上だ……」

「はぁ……電話でも説明しましたけど、土江ですよ」

「……しかし、いざ目の当たりにすると土江君とは信じがたいが……」

「部長、金曜日の帰り間際に水曜日の会議で使う資料を家で作ってこいって言っていましたよね?」

「おお、そうだった。頼んだ事を覚えているということはまさに土江君だ……」

「覚えてくれてどうも、あと土曜日も仕事したので追加手当支給してください」

「分かった。あと5分後に朝礼を行うが、その際に私の隣に立ってほしいがいいかな?」

「えっ?」

「いや、改めて紹介する必要があると思ってね、周知への徹底さ」


 最もらしい事を言っているが、こいつが言うと信用ならん。


 現に隣にいる田城も懐疑的な目で二糖を見ている。


 その上、さっきから俺の胸元をかなり凝視しながら喋っていたんだよ。


 よく女性は胸元に向かう視線が分かるというが、嫌と言う程にじっと見つめられている。


 そもそも警察署で取り調べをしていた際にコイツに電話したら「これからセクハラし放題だな!ガハハハッ!」と笑われたのだ。


 どうせ、セクハラ行為をする口実を探しているに違いない。


 ニタニタと微笑みながら二糖は言った。


「それにだ……今後、土江君が女性となったからには会社で()()()()をする人間が必要だ……」

「はぁ……ですが、仕事に関しては普段通り取り組むので問題ないですよ?」

「いいや、今の仕事のチームプロジェクトに関しては変更をする必要があるかもしれん。いずれ課長と相談した上で決めようと思う。それじゃあ、コーヒーブレイクを楽しみたまえよッ!」


 二糖はサポートを執り行うと宣言した上で、俺の肩に手を優しくポンと置いた。


 普段なら男性社員にはバシバシ叩くのに、俺がエルフになった途端にこの豹変ぶりだ。


 俺は悟った。


 今まで静観するだけであった現状から奴に俺は『狙われる』立場になってしまったのだと……。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうにかして破滅させてやりたいなぁ。 セクハラのシーンを動画に撮って溜め込み、一気に動画サイトに流す位しか出来ないかな。
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