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理不尽な魔女  作者: すけーゆぅ
序章——チュートリアル——
3/10

序章その3

 魔導士とは、自身の内に宿る魔力を用いることで『魔法』を使える者の総称である。

 その魔導士の中でも、使える『魔法』の種類や強さ、希少さなどによって下級、中級、上級などというようにランク分けされる(ランクの名前は国によって異なることもあるが、ランク分けの基準はだいたい同じであるとされる)。

 その中でも、エレーゼは他の魔導士とは一線を画す。

 エレーゼ・スミス。彼女の名を知らない者はいないとされる、超級の魔導士。

 小国プラカラプ国が従属している大国ルーンドにおいて、最高峰の魔導士だけに贈られる称号『賢者』をもつ四人の内の一人。

 炎、水、土、氷など、いくつかの属性によって区分される『魔法』から外れ、『自然』と『調和』という特別な属性の『魔法』を使用できる特別な魔導士。

 『自然』と『調和』を司るエレーゼの『魔法』はどの『魔法』よりも美しいと評されている。

 そのエレーゼ・スミスが今、俺に膝枕をしている。

 ・・・・状況を整理しよう。前回までのあらすじってやつだ。

 俺はフィルルの『魔法』をくらい、気絶した。そして、目が覚めるとソファの上で、手首足首が鎖で縛られている状態でエレーゼに膝枕されている・・・・こんな感じか。

 さて、ここから俺はどうすれば良いのだろうか。

『魔法』で魔力と身体の力がないことに加え、手足が縛られていることから俺を逃がすつもりはないらしいことは確かだろう。だが、気絶している間のことを含め、煮るなり焼くなり好きにできる機会がいくらでもあったにもかかわらず俺がこうして無事でいられていることから、どうしてかは分からないが、俺に殺意や敵意を持っているというわけでもないと考えていいだろう。

 であれば、今考えるべきことはこの状況をどう打開すればいいのかだが・・・・正直思いつかない。

 これから俺がどうなるのかが分からないので、身体を固くしてしまう。

 しかし、エレーゼは俺の頭を優しく撫でながら、微笑むばかりであった。


「どうかしましたか?どこか痛めましたか?」


「いや、少し身体に力が入らないだけだ。それより、影武者についての話を聞くから、一旦自由にしてくれないか?この状態はちょっとな・・・・」


「ダメです。また逃げられても困りますので。今回は絶対に逃しません」


 口調こそ強くないが、俺を逃さないという意思はかなり強いようだ。


「・・・・分かった。では、せめて膝枕をやめてくれないか?正直、恥ずかしいんだが」


「ダメです」


 即答だった。


「何故だ?」


「私がそうしたいからです。それに、先程フィルルの『ドレイン』をまともに受けて、身体が思うように動かないのでしょう?少しくらい休息をとっても誰も責めませんよ。よって、もう少しだけ膝枕します」


 だから何故に?

 なんでこの状態を望む?膝枕を条件とした『魔法』なんて馬鹿げたものは無いはずなんだが・・・・。

 そんな風に考えていると、俺らのすぐ側に控えていたフィルルが口を開く。


「エレーゼ姉様」


「なにかしら、フィルル?」


「・・・・姉様?」


 エレーゼお姉様?

 エルフにハーフエルフの妹?

 ・・・・何やら複雑な事情がありそうだが、今は置いておくとしよう。


「エリーゼ姉様。膝枕はそろそろやめて下さい」


「なんで?やっと彼を捕まえたのだから、このくらいいいでしょう?もう少し彼を休ませてからでも・・・・」


「ダメなものはダメです。真面目な話をするのですから、膝枕で話をするのはおかしいです。・・・・それに、残された時間は多くありません」


「それは・・・・そうね。この続きはまた後でとしましょう、ラウル」


 エレーゼはソファから立ち上がり、少し残念そうにしながら俺を解放してくれた。

 膝枕から解放されても手足は鎖に縛られたままなのでソファから立ち上がれないでいると、エレーゼが指を鳴らす。すると、ジャラリという音と共に鎖が崩れ、手足が自由になる。どうやら俺を縛っていた鎖はエレーゼの『魔法』の一つであるようだ。

 まるで俺も膝枕して欲しかったみたいな感じに言われているのが気になるが、解放された身なので口には出さない。

 手足が自由になった俺は寝転がっている状態から立ち上がろうとするが、まだ身体に力が入らなかったので仕方なくソファに座ることにした。

 辺りを確認してみると、どうやら先程俺が気絶させられた部屋のようだ。周りには本を収納した棚がいくつもあるが、それ以外には少し大きめの机や椅子、化粧台、ベッドなど特別目立つようなものはない。どれも普通の物より大きかったり、高級そうな物であったりしたが、それくらいだ。おそらくエレーゼの部屋なのだろう。

 エレーゼたちは俺の正面に位置するところまで歩くと、真剣な表情で此方を見つめる。

 そして、頭を下げた。


「お願いします。この国、プラカラプを救ってください」


「あなたの『魔法』で王子となって、この国を守ってください」


 どうやらこれから訳あり案件の「訳」を聞かせてもらえるらしい。


「・・・・話してくれ。この国の危機と、俺が影武者となる意味について」


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