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月にはうさぎがいると云う

ショートショートです。


「今日ウチ親いないんだからさぁ、お願い、海斗!」


「いいけど…… 食べたらすぐ帰ってよ?」


「作ってくれるの⁉︎ ありがと! 一生敬う!」


「食事くらい自分で作れる様になってよ……」


「海斗は分かるでしょ⁉︎ 私の壊滅的なまでの料理の下手さを!」


「分かるけど…… 練習くらいはしててよ。じゃないと僕もう作らないよ?」


「え⁉︎ うぅ…… 分かった。明日からするから」


「明日から……ねぇ」


「本当だよ!」


「う〜ん…… はぁ、信じておくことにするよ」


「なにそれ⁉︎ 絶対信じてないじゃん!」


「はは、バレた?」


「もう、早く作ってよ!」


「はいはい」




「茜、できたよ」


「ありがと〜〜 海斗の作ったご飯って美味しいんだよね〜〜」


「そう? ありがと」


「ふふ、海斗でも照れることなんてあるんだね」


「うるさい!」


「照れ隠ししてやんの」


「はぁ、いいから食べてよ」


「そだね。冷めちゃうと美味しくなくなるもんね」


「……(茜って、いつもはうるさいのにご飯食べるときだけ静かになるんだよなぁ)」


「……(海斗が作ってくれたご飯だもん。しっかり味わわなくちゃ)」




「ごちそうさまでした」


「お粗末様でした」


「ありがと、海斗」


「うん。ちゃんと練習してね、料理」


「頑張る。……あの、それとさ……」


「? 何?」


「今日、泊まったらダメ?」


「……は?」


「だって…… 家に1人しかいないんだもん。寂しいから」


「あのさ、茜も僕ももう高校生だよ? それをもう少し自覚したらどうなの?」


「海斗はそういう人じゃないからね」


「ああ、もう、良いよ。今日だけね」


「! ふふ、ありがと!」


「はぁ…… それなら僕は先にお風呂入ってくるよ」


「いってらっしゃい」




「おかえり」


「……ただいま」


「私もお風呂入ってくるね」


「うん、タオルはお風呂のドアに掛かってるやつ使って」


「は〜〜い」




「ただいま」


「おかえり」


「ねー、海斗、ちょっと話があるんだけど、縁側行かない?」


「急にどうしたの? 十五夜みたいなこと」


「ちょっとやりたいことがあってね」


「分かった。(何だろ?)」




「で、どうしたの?」


「隣座って?」


「うん……」


「……」


「ど、どうしたの? 肩に頭乗せてきて」


「へへへ、ずっとこうしたかったからー」


「何か、いつもとキャラ違うよ」


「知ってるー」


「……(本当にどうしたんだろ。熱でも出たのかな?)」


「海斗、私って変わった?」


「と、いうと?」


「小学生の頃から、性格とか変わったのかなーって」


「そうだなぁ、丸くなったかな。昔は僕以外とはあんまり話さなかったよ」


「そーなんだ。海斗は昔から変わんないね」


「そう? 茜がそう言うならそうなのかな」


「……」


「……」


「ねー海斗」


「何?」


「今日は月が綺麗だね」


「……そうだね。でも、月はずっと前から綺麗だよ」


「え…… それ、どういう意味?」


「茜から言い始めたのに、聞くんだね」


「だって分かんないんだもん」


「ずっと前から好きだよって意味」


「……海斗」


「何?」


「ベッド行こう」


「ちょっと下品なところは昔から変わってないね」


「初めては、海斗が良いな……」


「ガン無視しないで。あとそれ以上はやめて」


「何で?」


「……流石の僕でも我慢できなくなる」


「ふふ、それが狙い」


「悪い奴だね」


「自覚はあるよ」


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