新鋭といえども弱点には勝てません
ここに戦車がある。
リベット止めの古めかしい車体を持ち、短い砲を掲げた小さな砲塔。
名前を九七式中戦車チハ。
配備当初は世界基準に後れを取っている戦車ではなかった。
でも、弱点はすでにあらわとなっていた。
「くそったれッ!」
「また、大砲と機動と装甲ですか……」
「なぁ、主任。上の奴らは何考えているんだ?」
「さぁ、副主任の考えもわからなくはないが」
「大体、新鋭戦車に改良を加えろというのがおかしい話だ」
「貴様が言葉遣いをなおさないのと一緒だな」
それは関係ないだろ。と副主任は腹を立てる。
戦車の研究をして数十年。最初の原型とも呼べる戦車からずいぶんと進んだものだ。
この副主任ともその頃からの腐れ縁。
今では言葉遣いとか、指摘してもいちいちなおさないくらいの仲にはなっている。
さて、話を戻そうか。
この最新鋭戦車。
五七ミリ戦車砲を備えているが一八.四口径と砲身長が短い。貫徹能力が低い砲にあたる。
歩兵相手では強力な存在だが、戦車相手だと同世代でも手こずる相手が必ず出てくる。
解決策としては砲身長を伸ばして威力をあげるとか、砲弾自体を改良するくらいしかないか。
砲についてはまだいい。
機動も発動機は空冷ディーゼル。これはいい。
馬力は一五〇馬力。最高速度三八キロ悪い数字でもない。
重量が一五トンあるが速いと思う。
装甲に関しては最大厚が五〇ミリ、平均した厚は二〇ミリとなっている。
この五〇ミリも防盾だけ、おまけに鉄の質が悪い。
ドイツの三八ミリ戦車砲が試射場にある。ソ連の四五ミリ砲も鹵獲品であるがどちらの砲も一〇〇メートルの距離で貫通した。砲弾と装甲版(二〇ミリ)の角度が三〇度となる場合でも貫通した。
装甲厚をあげれば重量が増して、動きが鈍る。
改悪のレッテルが貼られる。
「もう完成された戦車は改悪になるばかりだ!」
「ん。確か、砲塔中径は大きめにとられていたはずだ」
「確かに大口径の砲を載せれるようにしてあるが、攻撃だけ増しても意味がない。防御、速度が落ちても意味がないのだ!」
副主任の言う通り。
戦車は攻防走がバランスよく整っていないと扱いづらいものとなってしまう。
「とりあえず、新型砲にするしかない。おまけで今ある開発中のもの」
「四七ミリか?」
「そうだな」
「豆鉄砲になるだけだ」
「貫通力は増す」
「対歩兵ができなくなる。威力不足だ」
「そうだな」
「今は五七ミリ以上が標準になりつつある」
「そうだな」
こうして、あーだこーだと押し問答が長く続いた。
結局は四七ミリ砲を採用することになる。
改良はここだけで、装甲、発動機は変更なく生産され続けた。
前線からは簡単に貫通される装甲に不満だという意見が次々にここに集まったが、軍上層部が受け入れ、改良拒否をしてしまったのだ。
まったく。
話を聞かないのは、上もか。