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その4「やる気の有無」

〜前回までのあらすじ〜

ついにディアーへの嫌がらせを開始した千昭たち。

しかし作戦は失敗に終わり、事件まで起こしてしまいました。

千昭は必死になって自転車をこいでいた。


できるだけ早くディアーから離れなければならない。


千昭は力也の計画に乗ってしまっていた自分が情けなかった。


小さな田舎町であれだけ派手な騒ぎを起こしてしまったのだ。もう取り返しがつかない。


冷静に考える余裕の無い千昭は、ただただ自宅に向かって足を動かしていた。


この自転車の持ち主である力也は、後ろの席に座ったまま大声で笑い続けている。


こいつにはおれたちのやってしまった事の重大さが分かっちゃいない。千昭はそう思った。


ディアーの姿が見えなくなってしばらく経つと、ようやく力也の笑いがおさまった。


そこで千昭は自転車を止め、力也のほうを見た。


いきなり千昭がブレーキをかけたため、力也は滑り落ちるようにして自転車から降りた。


「なぁ力也、これからどうするつもりだ?」と千昭は言った。


力也は千昭から渡された自分の自転車を押しながら歩き始めた。


そのすぐ真横には千昭が歩いている。


「これから?作戦を立て直してディアーを潰す。それだけだ」力也は挑むように言った。


「さっきの騒ぎ、もう忘れたのかよ」


「忘れるわけないだろ。あんな面白いモノ!警備員がカートに乗って陳列棚に突っ込んだ。最高に笑える話じゃないか!」


「ここは小さな町だ。明日にはきっと噂になってる。それでも力也にとっては笑い事か?」


「何でそんなにビビってるんだよ?大丈夫だ。心配ない。あの時と比べたらこんなのマシなほうさ。」と力也は言った。


あの時・・・


千昭にはいくつも思い出せることがあった。


今なんかよりも、もっと危険な状況に追い込まれたことがある。


それも一度や二度じゃない。


そう思うと、千昭は少しだけ冷静さを取り戻すことが出来た。


上級生とケンカした時、教室の黒板に穴を開けた時、学校のマスターキーを無くした時。


中学に入ってからだけで(しかも千昭が思い出せる限りで)これだけの事件を千昭たちは起こしていた。


ただしケンカと言っても、相手から仕掛けてきたモノばかりで、千昭たちが自ら殴りかかった事は無い。


黒板に穴を開けた時、ガラスを割った時、鍵を失くした時もただ不運が重なっただけだった。


そのため、校内での千昭と力也はかなりの問題児というレッテルを貼られていた。


確かに千昭たちは、お世辞にも真面目な生徒とは言えない。


遅刻、授業中の居眠りは当たり前で、宿題も出したことが無い。


しかし、教師や周囲の生徒が思っているほど千昭たちは悪い人間ではなかった。


自転車を盗んだ事は無いし、タバコは吸わない。それに、他人をいじめたことも無い。


「千昭、おれたちに足りないモノって何だと思う?」力也が唐突に話しかけてきたので、千昭の思考はそこで途絶えた。


「知恵と権力」と千昭は答えた。


「そんな難しい話はやめよう。おれが足りないと思うのは人手だ」


「そうだな。人数が少なすぎる。たった2人じゃ絶対に無理だ。だからもうあきらめよう」


「何を言ってるんだ。おれは絶対にあきらめないぜ」と力也は言った。


千昭は黙り込んだ。どうにかしてあきらめさせなければ・・・


これ以上待っても、千昭からの返事が返ってこないことに気づいた力也は言った。「明日学校で、手伝ってくれるやつを探す」


千昭は顔を上げ、力也の顔をまじまじと見つめた。


力也と仲のいいやつなど千昭くらいだ。


ディアーを潰すという大それた計画に付き合ってくれる人間などいるはずがない。


いや・・・いた。


「それって・・・」千昭は小声で言った。


「あぁ、そうだ。あの3人を誘う」力也は満面の笑みを浮かべてそう言った。





分かれ道につき、そこで力也と別れた。「じゃあな」「バイバイ」


千昭は一人で、とぼとぼと自宅に向かう。


力也の言った「あの3人」とは、真希、優一、薫のことだろう、と千昭は思った。


小学生の時、いつも一緒に遊んでいた5人。


みんな同じクラスでとても仲の良かった5人。


今では、同じ学校にいるのに話すことさえなくなってしまった5人。


あんなに仲が良かったのに、なぜ中学に入った途端話さなくなったのか。千昭は考えた。


それは間違いなく、クラス替えのせいだろう。


千昭と力也は同じクラスになったが、他のみんなはバラバラになった。


そのため、時間が経つにつれ顔を会わせる機会が減っていってしまったのだ。


明日力也は、1年と半年もまともに会話さえしていない3人に、いきなりこう言うのだろう。


『ディアーを潰すから手伝ってくれ』


そこで千昭は気づいた。


もしその誘いを3人が断ったなら、力也はきっと計画をあきらめる。


つまりあの3人なら、暴走している力也を止める事ができる。


これ以上先に進ませると力也は少年院に入ってしまう。千昭は、今ではそう考えていた。


千昭はこぶしをギュッと握り締め、強く決心した。


明日が勝負だ。力也をあきらめさせる最後のチャンス。絶対に力也を止めてみせる。


読んでくれてありがとうございました。

まだまだ続きます!

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