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その3「事件勃発」

〜前回までのあらすじ〜

千昭と力也は、ついにショッピングセンターへの嫌がらせを開始させようとしています。

千昭は自分の持ち場であるお菓子コーナーにつくと、ポテトチップスの袋を1つ手に取った。


そばには小さな子供が2人いたが、千昭は気にすることなく袋に穴を開けてしまわないように中身を壊し始めた。


千昭の考えた作戦は、ひたすらスナック菓子の中身を潰していくという、ただそれだけだった。


千昭によって細工されたお菓子を買っていった不幸な客は、おやつの時間になって袋を開けたとき初めて中身が粉々に砕かれていたことを知る。


そうなると当然、商品を買った店であるディアーに責任がいく。


これによって客の信頼も崩れ落ちる。千昭はそう考えた。


とても簡単な作業だったが、この作戦には少なくとも2つの問題点があった。


まず1つは時間がかかりすぎてしまう、ということ。


全てのお菓子の中身を潰すとなると、そうとうな時間がかかってしまう。


はるか前方まで続いている陳列棚を見て、千昭は目まいがした。


周りの客に怪しまれ始めるのは時間の問題だろう。


2つめは、何も悪くない客たちまで被害を受けてしまう、ということ。


いくらディアーを潰すためとは言え、これは千昭の良心を悩ませていた。


自分の考えたこの作戦は本当に正しいのか?いや、正しいはずがない。


他人のバカな計画に巻き込まれて嬉しがる人間など、どこにもいないからだ。


二つ目の袋の中身を潰し始めていた千昭は、ふと手を止めた。


この作戦は間違っている。おれのやっていることはレベルの低いイタズラだ。


千昭にはそう思えてならなかった。


しかし、大の仲良しである力也がディアーのせいで散々な目にあったのも事実である。


ここで計画をストップさせ、黙って引き下がるわけにはいかない。


何よりも、それでは力也が納得しないだろう。


千昭は考え込んでしまった。


手にお菓子を持ってうつむいたまま完全に停止している千昭を、小さな子供が不思議そうに見つめていた。


「ねぇおにいちゃん。買わないんだったらそのポテチぼくにくれない?」6歳くらいの少年が、千昭に言った。


千昭が手に持っているポテトチップスは陳列棚の上のほうに置いてある商品のため、少年は自分で取ることが出来なかった。


千昭は持っていたポテトチップスを渡そうとしたが思いとどまり、棚から同じものを取った。


「はい、これだろ?」千昭はそう言いながら少年にポテトチップスを渡した。


千昭はどうしても、自分が中身を砕いてしまった袋を少年に渡すことが出来なかった。


「ありがとうおにいちゃん!」少年はそう言うと、元気よく走り出した。


千昭は少年の小さな後姿が見えなくなると同時に、力也のいるドリンクコーナーに向かって歩き出した。


千昭は、他人に迷惑のかからない別の作戦を必死になって考えていた。





力也のところに向かっていた千昭は、前のほうで何か騒ぎが起こっていることに気がついた。


ゆったりとしたBGMが流れている店内に、ドタバタと耳障りな足音が響いている。


千昭はよく目を凝らして前を見ると、力也と大男がこちらに向かって走ってきているのが見てとれた。


どうやら力也は、警備員に追いかけられているようだ。


何とかして力也を助けなければ。千昭はそう思った。


千昭はとっさに、そばでカートを押していた中年女性に話しかけた。


「すいません!カートを貸していただけないでしょうか?」


女性は戸惑った表情で千昭を見ている。


グズグズしている暇はない。今にも力也は警備員に追いつかれそうだった。


仕方なく千昭は、カートに乗せてあった買い物カゴを女性に押し付けた。


「ちょっと何するのよ?」女性は文句を言ったが、千昭は構うことなく空になったカートを2人が走ってくる方向に押しながら走り始めた。


力也と警備員が、ものすごい勢いで千昭のほうに近づいてくる。


千昭も二人に向かって、速度を落とすことなく走り続ける。


「よけろ!」力也との距離が約5メートルになったその時、千昭はそう叫んだ。


前から突っ込んでくる力也が右に飛びのいたのを確認し、押していたカートの手を離した千昭も右に避ける。


警備員も千昭の押していたカートを避けようとしたが、間に合わなかった。


ガシャンと金属的な音を立てると、警備員は体ごとカートに乗り上げてしまい、そのまま勢いは止まること無く近くの陳列棚に突っ込んだ。


分厚いガラスが粉々に砕け散るような音とともに陳列棚は倒れ、商品が次々に床に落ちていった。


周囲の客たちの間からは小さな悲鳴が漏れていた。


その様子を見ていた力也は、警備員の方を指差しながら大声で笑い出した。


力也が近づき「早く逃げよう」と言っても、力也の笑いは止まらなかった。


結局力也は、千昭に引きずられるようにしてディアーを出た。


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