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その2「行動開始」

〜前回までのあらすじ〜


ありえない仕打ちを食らったディアーに、力也は復讐することを考えます。

力也の親友である千明は、仕方なくそれに付き合うことになっていくのですが・・・

「決まってるだろ?ディアーをぶっ潰してやる」


それを聞いた千昭は、思わず腹を抱えて笑い出した。


13歳と14歳のガキがショッピングセンターを潰すだって?


無理に決まってる。千昭はそう思った。


力也はまたもやコタツを殴りつけ、ゲラゲラ笑っていた千昭を黙らせた。


「バカみたいな話だがおれは本気だぜ」と力也は言った。


千昭の頭の中は、起動中の洗濯機のように世話しなく動いていた。


潰すって言ったって・・・その方法は?


もし潰せたとしても、いったい何の得があるっていうんだ?


この田舎町で唯一のショッピングセンターなんだぞ?


前髪の茶色がかったくせっ毛を指でいじりながら、千昭は考え込んでいた。


そんな千昭の様子を見た力也は「ここに居ても仕方ない。行くぞ!」と言いながら勢い良く立ち上がった。


「お、おい。今からディアーに行く気かよ・・・?」千昭はそう尋ねた。


「そうに決まってるだろ!ほら、早く立てよ」力也はそう言って、部屋のドアを開けた。


するとドスンという鈍い音がして、それに続いてかん高い声が聞こえてきた。「いったぁ〜い!」


力也は廊下に出て、そのあとに千昭もついていく。


するとそこには、千昭の姉である恵が居た。


「なんだ恵か。まさかお前、立ち聞きしてたのか?」と力也は言った。


力也はよく千昭の家に遊びに来るので、恵とも仲が良かった。


二人の口の利き方を見れば一目瞭然である。


「ディアーを潰すなんていうバカな事始めたんでしょ?」恵はクスクス笑いながらそう答えた。


「まったく・・・17歳にもなって立ち聞きか。みっともないぞ」千昭は飽きれたように言った。


「階段を上ってたら偶然聞こえてきたの!わたし、立ち聞きなんてしないから」


「はいはい。おれたちこれから用事あるから。じゃあな」


「用事?ディアーを潰しに行くんだっけ?」


「そうだよ。何がおかしいんだ?」


「別に。まあ、せいぜい頑張りなさいね」


恵はそう言うと、自分の部屋に入っていってしまった。


妙にニヤついていた恵の態度が気に入らなかったのだろうか。


千昭は思わず恵の部屋に向かってこう叫んでいた。


「今に見てろ!おれたちがディアーを潰してやる!」


そう言い残すと、千昭はドタバタと階段を下りて玄関から外に出て行った。


先ほどから黙って恵と千昭の会話を聞いていた力也も、慌てて千昭の後を追った。


背後からは、恵独特の耳障りな笑い声が聞こえてきた。







千昭が外に飛び出したすぐ後に、力也も玄関から出てきた。


「お前もやる気になったみたいだし、行くか!」と力也は言った。


「さっきのはついカッとなって・・・」


「つべこべ言ってないで、ほら、後ろ乗れよ」千昭の言葉は力也に遮られてしまった。


こうして千昭と力也はディアーに向かい始めた。


千昭の自転車はパンクしていたため、力也の自転車に二人乗りをしている。


15、6件の家が立ち並ぶ小さな住宅街を抜けると、そこからの道は交通量が増えてくる。


千昭たちの住んでいる町は、人口3万5千人ほどのごく小さな田舎町だった。


と言っても、畑や田んぼ、茶畑ばかりが広がっているようなド田舎ではない。


高層ビルこそ無かったものの、この町にはディアーという中型のショッピングセンターがあった。


千昭たちの通っている公立中学校の敷地面積よりもディアーの建物内部の面積の方が広く、3階建てでなかなかの大きさだった。


町一番のショッピングセンターは、町唯一のショッピングセンターでもあった。


そのため客の入りはすこぶる順調で、店内はいつも活気付いていた。


ディアーを潰す、というのは無謀極まりない事だったのである。


力也よりも冷静な千昭は、とっくにこの事に気がついていた。







そして二人はディアーに着いた。


自転車を止め、入り口の前に立つ。


そこで力也は立ち止まった。


いったい何を始めるつもりなのだろうか?千昭は不思議そうに力也を見つめた。


力也はスーっと息を吸い込むと、声の限りに叫んだ。


「ディアーなんかぶっ潰してやる!!」


駐車場に向かっていた客たちから、まるで千昭たちが宇宙人であるかのようなそんな目で見られていたが、力也は気にしなかった。


二人が同時に一歩踏み出すと、自動ドアが開き生暖かい風が勢い良く流れてきた。


「まずは作戦会議だ。ついてこい!」


力也はそう言い、先頭を切って歩き出した。


あまり乗り気で無かった千昭も、おずおずと力也についていく。


体格のいい力也の後姿は、いつもよりも数倍大きく見えた。







ほどなく二人は、ファーストフード店に腰を下ろし、それぞれジュースを飲んでいた。


1階の中心は食料品で、奥の方には飲食店があった。


日曜日は特に客が多いファーストフード店だったが、時間帯が3時ということもあり、席に座ることが出来た。


一口カルピスをすすって千昭は尋ねた。


「それで・・・どうする?」


「ここに来てる客たちの信頼を無くすんだ。そうすりればディアーは潰れる」と力也は言った。


「そうだね。信頼を無くす・・・具体的には何をする?」


「それを考えるのは千昭の仕事だ」


千昭は考えた。


ディアーを潰すのは無理だ。それはほぼ間違いない。


しかし今は、何かしら行動を起こさなければ力也が納得しない。


あまり人目につかない方法でディアーを攻撃し、なおかつ力也の気が静まるような作戦・・・


「ううん・・・とりあえず今日は、食品コーナーから攻めよう」


「2階と3階は後回しか。いいぜ」


「よし、思いついた。おれはスナック菓子を担当する。力也は炭酸ジュースを頼む」


「ははん。そういうことか!!任せとけ!」


こうして二人は、それぞれの持ち場に向かって走り出した。


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