白亜饗宴、愚者の愛
白亜饗宴編ラストです。
楽しんで読んで頂けると嬉しいです。
どうして、人は間違いばかり犯すのだろう。
私はただ幸せになりたかった。
それだけなのに
突然それは奪われた。
あの人は私を庇って死んだ。
通り魔に狙われた私を貴斗は庇った。
そして、彼は刺されて死んだ。
ねぇ、神様
どうして私の大切な人たちは皆死んでいくの?
どうやったら、私は幸せになれるの?
どのくらいの間、こうしていたのだろう。
「そんな所にいたのですか?」
不意にリユンの声が響いた。
だが、玲奈はリユンを背に座り込んだまま、動かなかった。
「戻りませんか…玲奈、王妃様も心配なさっていますよ。」
そう言いだんだん近づいてくるリユンの足音を聞いた玲奈は背を向けたまま叫んだ。
「来ないで!」
涙とメイクでぐちゃぐちゃになってしまった顔なんて誰にも見られたくはなかった。
その叫びにリユンは止まった。
「どうしたのですか?誰かに何かされたのですか?」
リユンの心配する声が聞こえてくるが、もうどうでもよかった。
いっそのこと狂ってしまいたかった。
どうして私ばかり、こんな辛い思いをしなければならないのか。
わかっているこれは八つ当たりだ。
私の醜悪さがみせる自己満足
どうしようない激情。
「私となんて出逢わなければよかったね、リユン。」
突然、己を自嘲する様に言う玲奈にリユンは驚き戸惑った。
「何故そんなことを?」
リユンにとって、玲奈は全てだった。
玲奈と出逢ってリユンは生きる意味を見出した。
それを突然否定されて、リユンは悲しみを抱きながら疑問を投げ掛けた。
玲奈はクスクスと可笑しそうに笑うと明るい声で言った。
「だって私と関わった人は、みんな不幸になるから!」
残酷なことを言いながらも可笑しそうに玲奈は笑い続ける。
「どうしてそんなことを…」
そう問うリユンの言葉を遮って玲奈は続ける。
だって、そうでしょう?
「私の両親も愛した人もみんな死んだ!なのにどうして、私は生きているの!愛した人に想いさえ告げられず何のために生きているの!」
そう玲奈は叫ぶと泣きながら言った。
「もう…辛い…苦しい…どうして、どうして…?」
どうして、私はこんな風になってしまったのだろう。
もう赦して
そう思った瞬間背後から抱きしめられた。
「泣かないでください。玲奈…」
切なげにそう言うリユンに玲奈は力の限り抵抗した。
「離して、離して!…離せ!」
でもリユンは離してくれない。
そんなリユンに玲奈は苛立つと残酷な言葉を放つ。
「貴方だって私と出逢ったせいで苦しんでいるじゃないの!私が貴方を愛してないから!私があの時、貴方の命を救ったせいで貴方の運命が狂ったのよ!貴方なんてあの時に死んでしまえばよかった!」
そう毒を吐く玲奈をリユンはより一層強く抱きしめた。
「…貴方が望むなら、私の心臓を貴方に捧げます。でも玲奈、どうか自分を否定しないで、私と出逢ったことを間違いだなんて言わないで…」
玲奈には分からなかった
もう全てが分からなくて、どうでもよかった。
貴斗への思いも、もう分からない。
聖女として生きる意味も、もう分からない。
幸せになる意味も、もう分からない。
抵抗するのをやめた玲奈は涙を流し続けながら語る。
「私は、貴斗の死体を愛したの…可笑しな話でしょう?
死んだ人を愛するだなんて異常なことなのに、それなのに愛されたいだなんて愚かで馬鹿な女でしょう?」
死人にどう愛されるというのだ。
自ら茨の道を進んだ私はなんて愚かなんだろう。
異常で愚かで救いようのない馬鹿
それが綾野玲奈という女だ。
リユンは玲奈の懺悔のような言葉を聞くと玲奈の耳元で囁いた。
「じゃあ私も馬鹿な男ですね。死体を愛していた人に振り向いて貰おうと必死で愛を囁いた、何度振られても、生を否定されても、全てを拒絶されても、愛して愛して愛し続ける私も貴方と同じで異常で愚かな男でしょう?」
その言葉に玲奈は思わず笑った。
玲奈は涙とメイクでぐちゃぐちゃになった顔をリユンの方に向けた。
リユンは玲奈の頬に手を添えると甘く囁く。
「本当に綺麗だ」
そんな筈ない。
涙とメイクのせいで酷い顔になっているはずなのに、それでも私を綺麗だと言うなんて
私みたいな馬鹿な女を愛するだなんて
なんて愚かな男。
でもそんな男が愛しいだなんて
私はもっと愚か者だ。
玲奈は花開くように笑った。
その笑顔はとても幼い笑顔だった。
「じゃあ私とリユンは異常で愚か者同士だね!」
その台詞にリユンは微笑んで頷いた。
「でも、異常者同士愛し合うのもいいとは思いませんか?」
そう言ったリユンに玲奈は微笑んだ。
「そうかもしれないね。」
貴斗あなたのことはずっと愛しているよ。
今でも愛してる。
でも、もう幸せになっていい?
貴方の事は永遠に忘れることなど出来ないけれど、
あなた以上の人なんてきっとこれからも現れないけれど
リユンと玲奈の唇が重なる。
今だけは愛し愛される喜びを感じていたいの。
ロマンチックに書くことを頑張ったつもりですが
表現が拙くてすみません!
次からは月華祝宴編です!
桜の秘密も徐々に明らかになっていきますので
次の投稿も読んでくれると嬉しいです!