少女の選んだドレス
衣装の表現が分かりにくくてすみません。
因みにベアバックとは、背中が大きく開いたデザインのことで、クロスホルターとは布や紐を交差して首から吊るした形をした首回りの形のことです。
告白されて付き合ったのに、いつも振られるのは僕の方だった。
彼女達はいつも泣きながら僕を責めた。
「他に好きな人が居るくせに、どうして私と付き合ったのよ!」
ヒステリックにそう叫ぶ彼女が、彼女達が理解出来ない。
僕なりに大切にした筈なのに。
分からない…
僕には、分からない。
今までの彼女達に抱いた感情は
仲の良い友達に向けるようなもので
決して愛していない訳ではなかった筈なのに
彼女達は僕に愛されなかったと嘆く。
彼女達に向けていた僕の愛は間違っていたのだろうか?
そう思うと同時に抱く疑問。
恋心もよくわかっていないのに
僕に好きな人なんている訳が無い。
何回考えても答えは出なかった。
でも、それでもいいと思える。
だって僕には
僕の幸せには、玲奈さえいればいい。
玲奈さえ幸せなら、それでいい。
あの時の僕は愚かだった。
あぁ、あの時この感情の名前に気付いていれば
あんな後悔を抱くことなんてなかったのだろうか。
玲奈は今現在の状況にため息を吐いた。
玲奈の周りに散らかるのは無数の煌びやかなドレス達。
その中でもルトは生き生きと作業していて、聖女の従者という使用人の中でも上位の立場を利用しながら、複数のメイド達に指示を出している。
ルトとメイド達の連携プレーによって、白亜饗宴で着るためのドレスを選ぶために、玲奈は着せ替え人形と化していた。
「聖女様は美しい黒髪ですからね。ドレスは鮮やかな色の方がいいような気もしますが、うーん迷う…」
「いえ、聖女様の儚い神秘的な雰囲気には薄い色のドレスの方が似合います!」
「ちょっとあなた達!聖女様はどんな色のドレスでも似合うのよ!」
メイド達の言い合いは白熱しており、全然ドレスが決まりそうにない。
玲奈は地味なドレスで極力目立ちたくないとお願いしたが、即却下された。
だが玲奈としても譲れないことがあった。それはあまりお金をかけない事。それ故にオーダーメイドでドレスを作ろうと考えるルトを必死に止めた。それ故、様々な貴族が聖女である玲奈へと贈ったドレスを、ルト達集団は吟味している。かれこれ、三時間ぐらいやっているが、未だ決まらない。
様々な貴族から贈られたドレスはどれも華やかで美しい物だったが、玲奈はどれも腑に落ちず、気に入らなかった。
そんな疲労困憊の玲奈は休憩しようと、座れる場所を探すため部屋を見回した。そして、不意に目に入った白を基調としたドレスに目を奪われた。それはマーメイドラインのシルエットのドレス。バックスタイルはベアバックでネックラインはクロスホルター。背中の露出ラインに沿わせた金の精緻なレースはとても美しく、裾元には漆黒のレースが彩られ、白と黒の対比が鮮やかだ。布地には銀の薔薇の模様が光の反射で見えるようになっていて、とても神秘的で美しい。清廉さと妖艶な色気を感じさせるそのドレスに玲奈は見惚れた。玲奈はそのドレスを手に取ると、ルト達の方を向いて興奮気味に言った。
「私、これがいいわ!」
ルト達はそんな玲奈の様子に驚きつつ、そのドレスを見た。
そのドレスの繊細な美しさにルト達も見惚れた。
「勇者様と聖女様の色が入っている…このドレスとても素敵です!」
「なんて、神秘的で美しいドレス!きっと聖女様に似合いますよ!」
「これを着ればきっと、みんな聖女様に見惚れるわ!」
このドレスはルトのお眼鏡にも叶ったらしい。
ルトは頷くと言った。
「これにしましょう!」
やっと決まったドレスに全員息を吐く。
ふと一人のメイドが疑問を投げ掛けた
「このドレスは一体どこの貴族からの贈り物なんでしょう?」
それは玲奈も気になっていた。
「ルト、このドレスが誰からの贈り物かわかる?」
その問いにルトは首を横に振った。
「申し訳ありません。ドレスは数えきれない程の数を頂いており、送り主までは把握できておりません。」
それを聞いて、玲奈は少しだけ残念に思った。
素敵なドレスを贈ってくれた相手に感謝の念を伝えたかった。
このドレスのおかげで憂鬱だった白亜饗宴が楽しみに感じられた。
それと同時に玲奈は寂しさを感じた。
このドレスを着た姿を貴斗に見せたかった。
そしたら、あなたは私にどんな言葉をくれただろう。
美しいと褒めてくれただろうか。
貴斗、あなたがいない世界はどうしようもなく、寂しい。
どう足掻いても満たされない想いに玲奈はドレスを握りしめると悲しげに目を伏せた。
白亜饗宴まであと少し。
衣装の表現がおかしくても素人なので大目に見てくれると幸いです!
次から白亜饗宴編です。
次回の投稿も読んでくれると嬉しいです!