表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貌だけ愛して  作者: 朱宮周
4/13

少女の憂鬱

話が進み始めていきます!

玲奈の恋の行方を見守ってくれると嬉しいです!

初めてその子と出会ったとき、その子は泣いていた。

両親に会いたいと泣きじゃくるその子に戸惑いながら、僕は必死にその子を宥めた。

「大丈夫、今日から君の両親の代わりに僕が君の傍にいるから。」

子供のあやし方なんて知らない僕はとにかく必死だった。

けれど、まだ幼いこの子はお父さんに会いたい、お母さんがいいと言って泣き止んでくれない。

僕はそんなこの子を抱っこすると痛くないように気をつけながら、優しく頭を撫でた。

「お父さんとお母さんはお空の上で、いつも君を見守ってくれているから、大丈夫だよ。」

そういうと、その子は少しだけ泣き止んだ。

「ほんと?いつもれーなのこと、みていてくれるの?」

辿々しく涙声で話すこの子にただ僕は安心して欲しかった。

「ほんとだよ…だからこれから先は、僕と一緒に生きよう?」

そう言うとその子は涙で潤んだ目で僕を見つめた。

「お兄さんはれーなと、ずっといっしょにいてくれる?はなれていかない?いなくならない?」

不安そうにするその子に、僕は微笑んだ。

「大丈夫、僕がこれから君とずっと一緒にいるから。

君を幸せにするから。」

するとその子は花開くように笑うと、僕の体に小さな体で必死に抱きついてきた。

その時、抱いた感情を僕は絶対に忘れないだろう。

ただ愛しい。

人生で初めて宝物ができた瞬間だった。

両親の代わりにこの子をしっかり育てようと決意した。

愛しいこの子の幸せを見届けたい、僕はただ強くそう思った。








あの部屋はリユンの部屋だったらしい。

翌朝、リユンの部屋から出て来たことで従者にはリユンとの関係を誤解され、それを解くのにかなりの労力を強いられた。全て悟ったかのような表情をする従者に内心かなり苛立ちながらもなんとか誤解を解いた。だが、何故かリユンの部屋に泊まったことがもうかなりの人に広まっていて、私とリユンの関係が噂されていた。それ故、多くの人々に「お幸せに」「お似合いです」と言われた。

勇者と聖女が結ばれる、そんな御伽噺のような恋愛をみんなは所望しているらしい。玲奈は辟易しながら、全ての誤解を解くことを諦めた。

そんな、きりのないことやってられない。

勝手に言ってろ。

今日の玲奈は朝からかなり苛立っていたが微塵も表情には出さず、今日もいつも通りの良い聖女様を演じた。

そして治療を終えた後、従者であるルトはいつも通り玲奈を褒め讃えた後、玲奈に問い掛けた。

「…あの、聖女様は、勇者様と共に一ヶ月後にある白亜饗宴に参加されますよね?」

聞いたことのない饗宴に何故私が参加するのか。

玲奈はルトに問い返した。

「白亜饗宴って何?」

その玲奈の問いにルトは目を丸くした。

ただでさえ幼い顔立ちのため、その表情はルトの童顔をさらに際立たせた。

ルトはまだ15歳だが、仕事はきっちりこなす有能な従者である。しかし、まだ年相応に幼い所がある。

玲奈はこの従者のことをそれなりに気に入っていた。

聖女と毎回褒め讃えること以外は

ルトは顔つきをキリッと引き締めると饒舌に語り出した。

「勇者は唯一魔王を斃せる存在で、聖女は唯一勇者を癒すことが出来る存在だと言うことは知っていますよね。」

玲奈は頷くと先を促した。

「この国では、三百年に一度現れる魔王を、勇者が無事斃したことに感謝して宴を催すんです。この国の王族が主催するのが白亜饗宴。また、身分関係なく民衆が楽しむのが月華祝宴です。白亜饗宴は各国の王族や貴族を呼んで催されるもので参加できるのは、王侯貴族、聖女や勇者のみです。その宴とは対照的に誰でも参加出来るのが月華祝宴です。白亜饗宴の後日、二日間かけて月華祝宴は催されます。」

ルトの説明を聞いて玲奈は自分の気分が最下層まで落ちるのを感じた。

王侯貴族しか参加しない宴に聖女である玲奈は参加しなくてはいけないだろう。

堅苦しそうな饗宴に面倒くささを感じ玲奈は思わずため息を吐いた。

「この宴は三百年に一度の一大行事なんです。だからすごい盛り上がりなんですよ。他国からも大勢の観光客が訪れますし、とても華やかで盛大なものなんですよ!

僕も楽しみなんです!」

興奮気味にそう語るルトを玲奈は冷めた目で見つめた。

玲奈にはどちらの宴も何の魅力も感じなかった。

ルトは玲奈を見ると、とっても良い笑顔で言った。

「聖女様は白亜饗宴に参加なさるんですから、衣装についてこういうものが良いなんて意見があったらおっしゃってください!この世界で一番綺麗なのは聖女様だと王侯貴族に知らしめてやりましょう!」

ルトに力強くそう言われるが玲奈の気分は最下層をぶち破った。

衣装選びなんてめんどくさいことしたくない。

そんな時間があるのなら、あの桜の木のもとにもう一度訪れたかった。

ルトは拳を握りしめてやる気満々らしい。

それを横目に玲奈は体をぐったりと椅子に預けて、この先の未来に思いを馳せ、憂鬱な気分となった。



やっと従者の名前が出せました。

ちょっとお茶目な従者ですよね!

次の投稿も呼んでくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ