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ヒミツ 番外編  作者: 爪楊枝
真実ハイスクール
2/15

01


4月に入り、始業式の日。


少し肌寒くも日差しの暖かさが感じられる通学路を姉と二人歩きながら学校へと向かう。学園祭での一件の後、また自宅での引きこもり生活に戻った思緒姉ちゃんであったが、この春からまさかの復学…というか僕と同じ学年である。そんなのありか?と思いながらもまあこの人ならありえなくもないと思えてしまうから不思議だった。


「ハル君、水たまりがあるから気をつけて。」

「う、うん…」


しかし、若干以前よりも過保護度が上がっている気がする…


「思緒姉ちゃん?僕ももう高三だし水たまりぐらい言われなくても…」

「玉波さんが卒業するまで我慢したんだから、これからの1年間は私がハル君の全てを管理させてもらうわ。」

「そ、そうですか…。」


玉波先輩や剣崎先輩が卒業するまで待っていたとは言うものの、家の中ではほぼ一緒だったじゃないかとも思ったが口にするのはやめておこう。ちなみに、思緒姉ちゃんの元同級生たる玉波先輩は東京にある美術大学へと進学した。剣崎先輩は…あれ?あの人はどこいったんだ?


それから学校に着いた僕と思緒姉ちゃんは下駄箱の近くに張り出されていたクラス分けの表を見る。


「……なに、これは…」

「いや…なにと言われましても…」


隣で見ている思緒姉ちゃんが露骨に眉を顰める。どうやらクラス分けの内容が納得のいくものではなかったようだ。


そしてそれは僕も似たようなものだ。納得がいかない、というよりは困惑に近い。思ったよりクラス分けが偏っている気がするのだ。僕と思緒姉ちゃん、あきと莉音、そして伊藤さんが一つのクラスに固まっている。


「ま、まぁとりあえず教室に行ってみようよ。」

「そうね、ここで大事なのは私とハル君の席が前後同士だということだものね。」

「いや、そこは別に…」


というか実姉に後頭部を見られながら勉強をするというのは若干の気恥ずかしさがあるので、なるべく早めに席替えをしてほしいものである。それに今年は僕も勉強を頑張らなければならないのだから。






教室に着くと、すでにいた生徒たちの視線が集まる。しかしそれは僕ではなく後ろに立つ姉に向いたものだ。僕と思緒姉ちゃんは自分の出席番号の席に移動して座る。


「おはよう、ハルマ。」

「伊藤さんおはよう。」


思緒姉ちゃんの後ろの席から話しかけてきたのは伊藤さんだ。


「また同じクラスだな。」

「おう。」


ニシシと笑う伊藤さんは嬉しそうで、それを見た僕もニシシと笑い返す。


「それと立花りっかちゃんもな。」


伊藤さんの隣の席にはあきが頬杖をついて座っていた。なんだろう、ご機嫌というわけではなさそうに見える。


「あ、あきもおはよう。」

「うん…。」


僕との挨拶もほどほどに、あきはむすっとした表情で思緒姉ちゃんのことを見ている。それに対しての思緒姉ちゃんの反応はほとんどない。


…これは多分クラス分けの結果が気に入らなかったんだろうな…


そういう点では思緒姉ちゃんとあきは似た者同士かもしれない。まあ、こんなことを本人達に言えば怒られてしまうだろうけれど


「あ、あの…」

「ん?」


控えめな声量で声をかけてきたのは莉音だった。席の距離が離れているのでわざわざこちらまで来てくれたようだ。


「おはようございます、陽満君。」

「おはよう、莉音。」


莉音との挨拶を済ませたところでチャイムが鳴り、教室のドアが開く。入ってきたのは…これもまあ予想通りではあった。というより、クラス分けの票に書かれていたので知っていたのだけれど去年の担任、新田郁子先生である。


「皆さん、おはようございます!」



無駄に元気な担任の声を聞きながら、僕の三年生としての生活はスタートした。

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