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彷徨う雷雲   作者: 佐伯 蒼太郎
4/26

厄介な少年


               (四)


 この川沿いは、川から堤防までが広くとってあり、その間が芝生になっている。

 夜になると川沿いは涼しい風が通り、犬の散歩や恋人同士が行き来していた。

 皆、この初夏の夜の焚き火を、怪訝そうに横目で見て行った。

 闇の向こうから、また一組の男女が近づいて来る。女は銀髪、男は......あの不良

グループの男だった。

 最初に気づいたのは加藤だ。

 土屋に目配せで告げ、ミチに寝床に行くように言う。

 二人はどんどん近づいてくる。銀髪も男も痣だらけの酷い顔をしていた。

 二人は焚き火のそばまで来て加藤達に気づくと、飛び上がらんばかりに驚いた。

 しかし、喧嘩を吹っかけるわけでも、逃げるわけでもなく、ただ突っ立っている。


「どうしたい、えらく美男美女になったもんじゃねえか」


 加藤が声を掛けたが、二人はただ黙っている。


「おい、人様の家に火を着けて、黙ってりゃすむと思ってんのか」


「すっ、すみませんでした」


 土屋はびっくりした。こいつらが素直に謝るわけがない。罠だ、何かある。

 男はいきなり土下座すると、深々と頭を下げる。

 それを見た女も同じように土下座した。


「勘弁してください。許してください」


 男は語り出した。

 グループは、もともと不良少年がゲームセンターなどの溜まり場に集まってき

て、自然発生的に出来た。

 ユスリやタカリ、同じようなグループとの対立はあったが、それほど一般人に

危害を加えたりはしなかった。 しかし、そんな彼等に目を着けたのがヤクザだっ

た。 

 彼等のグループは、この街を二分するヤクザの子飼にされたという訳だ。

 ヤクザ同士で直接対立すれば、すぐに警察が嗅ぎ付ける。ただでさえ警察の締

め付けがキツくなり、ヤクザの世界も資金難に陥っていた。

 飲み屋や風俗店から毎月吸い上げる僅かなミカジメ料も馬鹿には出来なかった

ので、その縄張りを見張らせたりした。

 稼ぎのいいのは覚醒剤だが、よほど切羽詰まらなければ、扱うのはヤクザとい

えどもリスクが大きい。

 その「よほど切羽詰まった状況」が近づいていた。少年達に売らせるのは足が

つきやすいが、裏の道はある。

 それを加藤の所に火を着け、捕まった二人が刑事にゲロしたのではないかと、

身体に聞いたという訳だった。

 口止めのための折檻でもあったのだろう。


「俺たち、このままじゃ殺されちまいます。こいつもソープで一生働かなくちゃ

ならなくなるんです」


「そいつぁ都合のいいことを言うな、お前、あんとき俺を殺そうとしたよな。学

生のタマを潰そうとしたしな。それが自分に回って来たら尻尾を巻くのか」


「すみません。本当にすみません。バックにスジモンがいるからと、気が大きく

なっていたんです......でも、あんたにやられて......最初はぶっ殺してやろうと思

ったけど、あんた強すぎるよ。どうしていいのか分からなくなって、これからど

うしたら......」


「まあ、簀巻きにされてこの川にドボンってなところだな」


  加藤はニヤリとして言う。

 銀髪はしおらしくシクシクと泣き始めた。


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